「週刊女性」2015年7月14日号(主婦と生活社)
1ヶ月ほど前、「女性自身」(光文社)が「あなたの子供が“アメリカの戦争”に命を捨てる!」というタイトルの記事を掲載したことをお伝えしたが、今度はライバル誌「週刊女性」(主婦と生活社)が同様の安保法制批判を展開した。
7月14日号で「「戦争法案」とニッポンの行方――あなたの子どもがアメリカのために殺し、殺される国になる!」という10ページもの大特集を組んだのだ。
しかも、記事は何人もの専門家、紛争地で活動するNPO関係者や政治家から取材、インタビューした、かなり踏み込んだ内容だった。
「日本が攻撃されてもいないのに、政府判断で、世界じゅうで自衛隊の武力行使を可能にする法案は憲法違反」(名古屋大学院 飯島滋茂准教授)
「自衛隊を限りなく軍隊に近づける。それが安倍首相の狙いです」「はっきり言えば、米軍のお手伝いが可能になるというわけです」(東京新聞論説兼編集委員 半田滋)
さらに注目なのが、“安保法制の先”にある徴兵制について、かなり具体的な論拠をあげ、警告を発していたことだ。なかでも、憲法問題に詳しい伊藤真弁護士は、自民党が発表した憲法改正案は「国民主権でない」「国民に国防義務を課す、軍隊を創立する」ものとした上で、徴兵制のために政府がやるであろう姑息な方法まで予測していた。
「リーダーシップを育むトレーニングとか、訓練ができるサマーキャンプとか、そんなネーミングで人を集める実質的徴兵制のような形をとるでしょうね」
自分の子どもたちが自然に触れ合い、友達との絆を深め成長できると思い喜んで参加させたサマーキャンプが、実は軍人養成と訓練の場だった――。まさに恐怖のシナリオだが、これはけっして絵空事ではない。実際、自民党議員のなかには、大学生や中高生の「ボランティアの義務化」「自衛隊研修」などを口にする者も少なくないのだ。
「週刊女性」はそれ以外にも、安倍政権のさまざまな問題点をあぶり出している。自衛隊内で頻発する自殺やいじめの問題。さらに、自民党内で安保法制に反対する村上誠一郎衆議院議員をインタビューして、「安保法制によって戦地に行くのは、私や安倍さんの世代ではありません。20歳前後の若い人たちに、地球の裏側にまで行ってもらうのです」という発言を引き出している。
それにしても「女性自身」といい、今回の「週刊女性」といい、これまでこういった政治報道とはほとんど縁がなかった女性週刊誌が、安保法案に果敢に反対する姿勢を撮り始めたのは非常に頼もしい。
逆に言うと、女性の間で、恋人や子ども、孫を戦地に送り出したくない、という危機感がかなり高まっているということだろう。
いずれにしても、そのスタンスは、安倍政権の圧力に簡単に屈してしまう“男目線”の新聞やテレビよりよっぽどしっかりしている。大手マスコミも少しは爪の垢を煎じて飲んだほうがいい。
(伊勢崎馨)