サンデー毎日ビューアー:6月17日号 - 毎日新聞
『私にも夢がある!』一兵卒の呟き https://ameblo.jp/rascal0168/entry-12381543014.html
▼野党が「新潟知事選」に勝てば政権は崩れる
森友事件不起訴によって、権力私物化・乱用の一大スキャンダルを幕引きさせてはならない。今こそ首相のクビを取るべきだと喝破する小沢一郎自由党共同代表が、野党の戦闘方針を激白、新潟県知事選に勝ち、政権崩壊に導く秘策を明らかにした。倉重篤郎が迫る──。
森友事件が不起訴となった。今の法務官僚の忖度(そんたく)体質から見て十分予想されたことであり、何の驚きもない。検察審査会による強制起訴で始まる第二ラウンドを待つことにしたい。ただ、政権側はこれを機に森友加計(かけ)問題全体の幕引きを図らんとするであろう。野党内にも呼応する動きがある。
だからこそ、野党諸氏に言いたい。ここからが野党としての正念場である。審議拒否への批判や、いつまでモリ・カケやっているんだとの声も出てくるだろう。
だが、ここは覚悟を固め、モリ・カケ疑惑追及の旗はさらに高く掲げるべき時だ。なぜか。
この問題が、実は日本国憲法そのものの骨格を揺るがす、ありうべからざる権力の暴走・乱用事態であるからだ。整理してみる。
まずは権力の私物化である。いずれの事件も行政権の行使において友人を優遇した。明らかに首相だけが持つ行政各部への指揮監督権(憲法72条)の乱用だ。
次に、この権力の私物化の痕跡をカムフラージュするために行政権が不当行使された。国会に対し森友では財務省が組織的に公文書を改ざん・提出し、加計では経産官僚が答弁で作為的な嘘(うそ)をつき通した。これは国会に対し連帯して責任を負うべき(同66条)行政がその役割を放棄したことになる。国権の最高機関(同41条)への冒涜(ぼうとく)でもあった。
昨年来の臨時国会召集要求権(同53条)の黙殺、衆院解散権(憲法69条)の過度な乱用も記憶に新しい。
この違憲事態を放置しては、将来の与党どころか、現野党としても見放される。
もう一つ付け加えよう。これは虚言癖のある安倍晋三首相をそのまま国家の代表として担ぎ続けるべきか否か、の岐路でもある。
虚言の第一は、妻の昭恵氏も含めて自分たちの「関与」が判明したら首相も国会議員も辞める、という答弁である。昭恵氏が名誉校長を務め講演もしたことのある学校組織に対して、国有地払い下げが結果的に8億円値引きされた時点で、広義の「関与」は確定している。さらには、昭恵氏付秘書からの財務省への照会、学校側による妻の名を使った財務省への圧力が改ざん文書の公開から明らかとなり、妻の介在が取引に利用された、という狭義の「関与」まで推認に至った。
にもかかわらず、安倍氏の言い様は、だからこそ「関与」がなかったことが判明した、と開き直ることなのだ。要は、その程度の介在しか明らかにならなかった、ということは、金品をもらって指示した、というズブズブの「関与」がなかったことの証明になった、とおっしゃる。
馬鹿を言いなさんな、となぜ野党は反発しないのか。誰もそんな大それた「関与」があったとは追及していない。「関与」という言葉を自らに都合よく限定的に解釈し、その範囲内で自己正当化を図ろうという、一国を背負う政治家としてはありうべからざる姑息(こそく)な言い逃れである。
そう言われると、彼には類似の言辞が多い。民主党議員が質問すると、執拗(しつよう)に民主党政権時代の失策を立て板に水で並べ立てる。アベノミクスの問題点を問われると、国民受けのする経済指標だけを繰り返し強調し、その負の側面については一顧だにしない。
モリ・カケ答弁も然(しか)り。改ざん文書発覚後には「行政のトップとしての責任を痛感」「膿(うみ)を出し切る」と大見えを切ったが、それからはや2カ月余経過したのに、いっこうに「責任」も「膿の出し切り」も履行されないことをどう見るべきか。
我々はこの癖をもっと恐れるべきだ。全体を見ようとしない。国民に聞き心地のいいことしか言わない。何度も繰り返しているうちにそれを真実と自ら思い込む。国家指導者のあり方として、危険極まりないサイクルに突入しつつあるような気がしてならない。なぜその政権に、国民は30%も支持を与えるのであろうか。根源的な問いを小沢一郎氏にぶつけさせてもらった。さすがに歴戦のつわものだ。野党の弱みを審議拒否批判にビビる体質にあると喝破、6月10日の新潟知事選の結果が安倍進退を含め、政局の帰趨(きすう)を決する重要な岐路になると予測した。
「解散」は大歓迎だ。絶対に勝つ
それにしてもなんでこれだけ証拠が揃(そろ)っているのに、(安倍首相の)クビが取れないのでしょう?
「ホントだ。僕もちょっといらいらしている。(私物化も嘘も)歴然としているだけにね」
やはり野党の戦闘力か?
「立憲民主はかなりやる気になってきたが、新党(国民民主)の姿勢がはっきりしない。政党支持率1%だから失うものはないはずだが、どうしようとしているのかよくわからない」
原発政策で連合からプレッシャーがあるのか?
「原発についてはあるんだろう。要するにはっきり言えない。主張があいまいになってしまう」
もっと腰を据えて審議拒否したらどうか。それだけの問題かつ局面だ。
「審議拒否と言われることにびくびくしている。だが審議拒否じゃない。相手が嘘ばかり言って真実を話さないから議論のしようがありませんと言うことだ」
「審議拒否は国民受けとして、確かにマイナスがあるだろうが、プラスのほうがはるかに大だ。日本の民主主義の質が根底から問われるような大問題に対して、今は野党がいるかいないかわからない、という事態だ。こういう時は大々的に発信しないとダメだ。報道されれば、悪く書かれても、国民は何でそんなことをやっているのか、ということになり、その時にきちんと説明すればわかってもらえる。2007年から09年(の政権交代)までがそうだった。審議拒否も含め、徹底して自公政権と闘った。それが大きく報道され、この政権ではいかんとなった」
野党議員が衆院解散を怖がっている?
「解散は大歓迎だと僕は言っている。もし解散になれば、嫌がられてもしゃしゃり出て、289の小選挙区候補を1人に絞ることに全力を尽くす。強い人に一本化、他は降りてもらう。いろいろ嫌がられるかもしれないが、それでも僕はやる。そうすれば絶対に勝つ。何よりも投票率が上がる」
解散論は単なるブラフ?
「脅しだ。やれっこない。自民党内が大反対する」
野党が審議拒否を徹底すれば、解散しかなくなる。
「それはある。だが解散よりも退陣だろう。今の体たらくでは。閣僚が(解散詔書への)ハンコを押さなくなってしまう。だからこそ、解散するならしてみろ、と啖呵(たんか)を切るべきなのに……」
何でそんなに自信喪失?
「野党全部、特に立憲、国民の足並みが揃わないと。立憲はそういう思いになってきたと思うが、国民のほうも政権を倒し、政権を奪取し、自分たちでやろうという執念が必要だと思う」
共産党はどうか?
「独自ネタもあるし、理屈も立つ。だが、審議拒否戦術を嫌がる。僕はそれでは政権党になれない、批判野党で終わる、と言っている。闘う時は身を挺(てい)してでも闘う姿勢が必要だ」
野党も野党だが、自民党内はどうなっているのか。
「自民党は、明らかな犯罪行為であっても仲間をかばう。党内に亀裂が入り権力を取りこぼすことを警戒する。良くも悪くも権力に対する強い執着がある」
執着があり過ぎ、これだけの問題に批判が起きない。
「ひどい。野党もそうだが、与党もふがいない」
自浄作用が働かない?
「何が怖いのか。年次が低く選挙で危ない人は政権に刃向かうわけにはいかないだろうが、無所属でも勝てるという人はどんどん発言すればいい。10人や20人そういう人はいるはずだ」
05年の小泉純一郎政権の郵政解散で刺客を立てられたことがトラウマ化した。
「石破(茂)君なんて、選挙が断然強いわけだから、もっとバンバン言えばいい。野田聖子君もそうだ。こういう時に閣僚なんかになっては正論がはけない」
党内の長老陣も静かだ。
「議員を辞めた長老ばかり発言している」
山崎拓、古賀誠両氏……。
「小泉(純一郎・元首相)氏だってそうだ。辞めた人ばかりだ」
「安倍3選」は無理だと思っている
どうも、与野党がすくみ合っている。それを動かすのが新潟知事選の結果だ。
「そうだ。菊田真紀子(衆院議員=無所属・新潟4区)君、森ゆうこ(参院議員=新潟選挙区・自由党)君、西村智奈美(新潟1区・立憲民主党)君という女性3人が軸になってやっている」
「一般論としては野党候補が勝てる選挙だ。16年7月の参院選挙(56万429票vs.55万8150票)、同年10月の知事選(52万8455票vs.46万5044票)でいずれも野党系が勝っているが、今回の選挙もあの時の選対陣営と応援態勢がそのまま残っている。柏崎市選出で市議、県議を経験しているキャリアも、原発争点で戦いやすい。前知事がセクハラ疑惑でやめただけに、女性候補という選択肢も良かった」
自公側候補は争点化を避けようと、原発に触れないようにしている。
「こちらはガンガン言えばいい。原発、原発と」
国政マターではあるにせよ、選挙民はモリ・カケも判断材料にするのでは?
「争点化すべくやっている。ただ原発は身近だし、命の問題だ。モリ・カケは他人事(ひとごと)。安倍攻撃にはなるが知事選イコールではない」
「選挙1週間前の世論調査で互角の数字なら勝つ。首長1人を選ぶ選挙だと、どうしても勝ち馬に乗る意識が強くなる。行けるとなると尻上がりに強くなる」
野党側が勝てば?
「野党が元気になり、与党がしぼむ。両方合わさって政局に影響が出る。与党内で安倍批判が強くなる」
メディアもモリ・カケ批判票と書かざるを得ない。
「ほら見ろ、国民はこういう審判だと言える」
逆だと?
「野党がシュンとなる。国会運営で抵抗しにくくなり、存在感が薄れる。国会閉会後は自民党総裁選一色になるだろう」
「ただそれでもまだモリ・カケは尾を引くだろう。役所から新資料が出てくる可能性が高い。だって役人が悪者にされている。皆、命令通りしぶしぶ(改ざんや嘘答弁を)しただけなのに」
となると、いずれにせよ安倍3選は無理か?
「と僕は思っている。これで3選するようでは自民党もどうかしている。一般の党員投票もある。12年の総裁選でも石破君が圧勝した(1回目の党員投票では計300票のうち石破165票vs.安倍87票)が、モリ・カケ批判でもっと差がつくかもしれない。国会議員投票でガラッと引っ繰り返すわけにはいかなくなる」
その前に安倍氏が3選出馬辞退という選択肢も?
「事態が深刻になればそうするだろう。あまり汚れないように」
となると、岸田文雄氏への禅譲も出てくる?
「権力の禅譲はありえない。古賀誠君がバックにいるというが、古賀君に会ったら言ってやりたいくらいの気分だ。権力は闘って勝ち取らないとダメだと」
小沢氏「最後の闘い」が始まる!
禅譲はあなたの半世紀に及ぶ政治キャリアでもなかった? 1987年の中曽根康弘元首相による竹下登氏への後継指名は?
「竹下を支えていた僕らが断固決戦とやったから、しようがなく竹下にしただけの話だ。闘わなければダメよ」
91年には小沢面接事件というのがあった。宮沢喜一、渡辺美智雄、三塚博3氏を面接、宮沢氏を指名した。
「あれも数の論理だ。絶対的に数の多い経世会を敵にできない。そういった闘いが指名の基底にあった」
数が少ないうえに闘わないのではどうにもならない。
「そうだ」
ポイントは竹下派?
「竹下派と二階派がどうするか」
石破と岸田が2、3位連合を組めば?
「安倍側は清和会と麻生派しかいなくなる。安倍氏が勝てなくなる」
野党の今後の展望は?
「国民の中で、安倍政治への不満のマグマがたまっている。野党勢力がまた一つにまとまることができれば、09年の再来だ。あれから10年。民主党は失敗したといわれるが、安倍政権でもっとひどくなってきている」
どう一体化?
「来年は参院選がある。今年中に立憲を中心にまとまる努力をするしかない。各党が、あるいは各党からの有志が相集い、一つの大きな固まりを作る。新党であろうと、存続政党が立憲であろうとかまわない。立憲も、過去の経緯や感情的なものを捨てもっと懐深くウイングを広げ、来たい人は皆抱えろ、と僕は言いたい」
× × ×
今年は小沢氏の師である田中角栄の生誕1世紀、そして来年は小沢氏自身の議員歴半世紀、そして、小沢氏が主導した政治改革法成立4半世紀を迎える。いわば節目の年である。氏の最後の闘いがどう実を結ぶのか。最後は角さんの言葉を引用してもらった。「要は決断と実行だ。とにかく怖がっていたらダメだ」。野党よ、解散を恐れるなかれ、そして、新潟での政治決戦に全力を挙げよ、である。
サンデー毎日6月17日号