高江・「器物損壊」事件の審理を傍聴---博治さんの堂々とした陳述に、傍聴席からは涙と大きな拍手
11月20日(月)は、山城博治さんの高江・器物破損事件の公判を傍聴した。今まで高江N1裏事件、辺野古ブロック積事件の公判が続いてきたが、この器物破損事件は今日の1日だけの審理という。
今日も裁判所横の公園で傍聴券の抽選が行われた。「あるいは?」と思ってSさんの姿を探すがやはり来ていない。Sさんは、深刻な病状にもかかわらず、海上行動の船長を務めるかたわら、辺野古での不当弾圧の救援対策、そして3名の裁判闘争などを担当してくれていたが、先日、病状が悪化して再入院してしまった。心配でならない。一日も早く復帰してくれることを願うばかりだ。
(公判前の集会)
公判では、検察側、弁護側の証拠説明の後、山城博治さんへの被告人質問が行われた。博治さんは、弁護士さんの質問に答えて、事件当日(昨年10月17日)の状況だけではなく、事件の背景について詳細に説明した。
「昨年10月初め、菅官房長官がヘリで現場を視察し、当初の予定を変更してヘリパッド工事の年内完成を指示した。それ以降、砕石を運ぶダンプトラックが激増し、弾圧も強化されてまるで戒厳令下のような状況になった。そして、基地の中では違法な工事が強行された。ヘリパッド工事を止めるためには、もう山に入って抗議する他なかった。連日、多くの人たちが山に入っていった。山に入ることによって、初めて防衛局の違法工事、違法伐採の実態なども分かった。
防衛局が有刺鉄線を張った場所は、県道から上がったところで、それまでは自由に入れたところだ(筆者注:県道から続く法面部分は県道敷であり、米軍への提供施設ではない)。山に入るために苦労して獣道を整備していったが、防衛局が私たちが整備した道に勝手に有刺鉄線を張り巡らせてしまった。それも普通の有刺鉄線ではない、米軍用の危険きわまりないカミソリが付いたものだ。そのために、私はやむをえず、有刺鉄線の本体部分ではなく、有刺鉄線を引っ張っている針金を切ったにすぎない」
そして、博治さんは次のように述べた。
「今回の逮捕は不当極まりない。私たち県民は、森を護ろうとして抗議したにすぎない。私たちが被告とされているが、被告人は政府の側だ。犯罪者は政府だ!
あの一帯は、沖縄でも特に豊かな自然が残されているところであり、その森が見るも無惨に破壊されていくことに我慢がならなかった。裁判官の皆さん、裁判長に特に訴えたい。沖縄は東京のものではない、沖縄の地は沖縄の人たちのものです。何故、沖縄だけがこのような目に会うのですか? 沖縄には憲法は保障されないのですか? 私たち沖縄の人間は、怒りと悲しみで、この不条理に抵抗してきたのです」
博治さんの懸命の訴えに、傍聴の人たちの多くは涙を抑えきれない。そして話が終った後、傍聴席から大きな拍手がわき上がった。裁判長が慌てて制止するが、傍聴席からは、「裁判長、この事件は単なる器物損壊事件ではないことが分かっただろう。事件の背景にきちんと踏みこんでください」なとの発言が続いた。
辺野古、高江の不当弾圧事件の公判は今日で審理が終った。12月4日に論告求刑、そして12月20日の被告最終弁論の後、来年3月14日に判決が下される。今までの訴訟指揮から考えると、判決の内容は決して予断を許さないが、この3名の裁判は、「沖縄平和運動裁判」として後世に語り継がれていくだろう。山城さん、稲葉さん、そして添田さん、本当にご苦労様でした。