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「原発事故で人生と生活が奪われた」と避難者が訴えた裁判で、東電に賠償命令。 しかし・・・  2018.2.7 毎日新聞

2018-02-07 23:42:20 | 福島、原発
 
「原発事故で人生と生活が奪われた」と避難者が訴えた裁判で、東京電力に賠償命令です。

 福島県南相馬市の住民ら約320人は、福島第一原発事故によって避難生活を余儀なくされたとして、東電に総額約110億円の損害賠償を求めて訴えを起こしていました。7日の判決で、東京地裁は「生活基盤に関する利益の侵害は明らかである」と指摘し、東電の賠償責任を一部認め、約11億円の支払いを命じました
判決後、原告の1人は会見で「今までの生活に戻れないなかで、この判決は納得できない」と怒りをにじませました。
 

 
 

東電に11億円の賠償命令 東京地裁

 
 

 東京電力福島第1原発事故に伴い、長期の避難生活を強いられたとして、福島県南相馬市小高区(おだかく)の元住民ら321人が東電を相手に「ふるさと喪失慰謝料」など総額約110億円の賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は7日、請求の一部を認め、東電に総額約11億円の支払いを命じた。水野有子裁判長は「避難者は憲法が保障する居住・移転の自由を侵害された」と述べた。

 原告側は2014年12月に提訴。1人当たり1000万円のふるさと喪失慰謝料の支払いと、月10万円の「避難生活の慰謝料」を月28万円に増額するよう求めた。これに対し、判決は「慰謝料としての区別が困難」などとして二つの慰謝料を分けず、「包括生活基盤に関する利益の侵害」に対する慰謝料として1人当たり330万円の支払いを命じた。

 また原告側は「避難生活の慰謝料」を賠償する期間について、東電が決めた「18年3月まで」を、避難指示解除から3年後となる「19年7月まで」に延長するよう求めたが、判決は「二つの慰謝料を分けない以上、原告の主張は採用できない」と退けた。

 一方で判決は、原発事故に伴う避難生活について「過去に類を見ない極めて甚大な被害」と指摘。故郷を失ったとする原告側の主張に対し、包括生活基盤に関する利益の中には、「小高に生きる」利益も含まれるとの見解を示した。

 東電広報室は「判決内容を精査し、対応を検討する」とのコメントを発表した。【近松仁太郎】

南相馬元住民「判決に疑問」

 総額約11億円の賠償を命じた東京地裁判決を受け、原告らは7日夕、東京・霞が関の司法記者クラブで会見し「小高の実態を把握した上で、血の通った判断をしてくれたのか疑問だ」と納得のいかない表情をみせた。

 判決は、東電に対し1人当たり330万円を支払うよう命じ、同種訴訟の中では高額な賠償を認めた。しかし、訴訟の過程で原告側が裁判官に求めた現地視察は実現せず、認定額は請求額の約10分の1にとどまった。

 原告団長の江井績(えねい・いさお)さん(76)は会見で「(現在の小高区は)半数以上が65歳以上の超高齢地域。若者は避難先から戻らず、地元に帰ってきた住民は(事故前の約2割に当たる)2400人にとどまる」と語った。その上で「歴史、伝統、文化を奪われ、後継ぎとなる若者もいない。働き先となる企業もない。小高が二度と元に戻らない被害をもっと(社会に)知ってほしい」と訴えた。

 また原告側代理人の弘中惇一郎弁護士は「一部勝訴だが、言い換えれば、大部分敗訴。判決は『生活基盤の崩壊』などと言及したが、慰謝料は極めて控えめに評価した。今後検討するが、控訴する可能性が高い」と述べた。【近松仁太郎】

 

 【ことば】ふるさと喪失慰謝料

 原発事故に伴う長期の避難生活で、故郷の人間関係や豊かな自然、風習などを永遠に失ったとして避難者らが求める賠償金。東京電力は2013年12月に国が示した方針に基づき、原発がある福島県大熊町や双葉町など帰還困難区域からの避難者には「故郷喪失に対する慰謝料」として1人700万円支払うとしたが、今回の原告は対象外。同種の避難者訴訟では、千葉地裁が17年に独立した慰謝料として初めて認定した。

 

 

 

 


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