「北方領土が返ってくるの?」と国民に期待を持たせておいて結局はヌカ喜びでした。
「交渉加速」「領土発展に手応え」などこぞって報道したメディアも同罪です。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/195963より転載
まるで“北方領土返るぞ詐欺” NHKもタレ流した大本営発表
2016年12月17日
半世紀前のビートルズ来日フィーバーを超える破格の扱いだった。はるか上空に専用機の姿が確認できてから空港に着陸、プーチン大統領がタラップを降り、特別車両に乗って会談場所の温泉旅館に向かうまで。
15日午後4時42分ごろから約30分にわたって生中継を敢行したのが、NHKだ。大統領専用機の動きだけを延々とらえた“シュール”な映像は公共の電波のムダ遣いでしかないが、皆サマのNHK以下、国内メディアは一事が万事この調子。安倍サマの“北方領土返るぞ詐欺”に加担してきたのである。
安倍首相がプーチン大統領から肩すかしを食らった――そんな印象に終わった今回の温泉旅館会談。一時は「歴史が動く一日」とまで呼ばれ、「ひょっとして北方領土が返ってくるの?」と国民に期待を持たせたが、結局はヌカ喜びに終わった。
安倍首相周辺も「領土交渉で成果を挙げ、その勢いで解散だ」と首相の専権事項をチラつかせ、政権の求心力アップに利用したのだから、あくどい連中だ。ハッキリ言って詐欺まがいの話である。
国民をたぶらかした意味では、メディアも同罪だ。
9月2日にウラジオストクで開催された今年2回目の日ロ首脳会談の直後、安倍首相が「新しいアプローチに基づく(領土)交渉に道筋が見えてきた。その手応えを強く感じ取ることができた会談だった」と力強い言葉で“成果”を強調すると、主要メディアはお祭り騒ぎ。翌日の大手紙はこぞって「交渉加速」「領土発展に手応え」という大見出しを1面トップに掲げたものだ。
その後も「手応え」報道一色だから、安倍首相がさも歴史的成果を勝ち取りそうなムードが国民の間で醸成されるのはムリもない。そんな首相礼賛、ヨイショ報道の中でも、日刊ゲンダイが選ぶ「ワースト1」は9月14日放送のNHK「クローズアップ現代+」だ。
■昭和天皇「即位の礼」の刀を返し…
この日の放送には「今一番、安倍首相に近い女性」といわれるNHK政治部の岩田明子記者が登場。彼女は9月の会談の最後の記念品交換で、プーチンが安倍首相にロシア所蔵で1928年の昭和天皇の即位の礼で用いた名刀1振りを贈ったエピソードを紹介した後、こう語ったのだ。
「プーチン大統領は『いろいろな経緯をたどって自分の手元にあったが、こうしたものは祖国に帰るべきだ』と述べたというんですね」
「そこに居合わせた日本政府の関係者も『まるで日本への島の引き渡しを示唆しているように見えた』と話していました」
天下のNHKにここまで言い切られたら、「本当に返ってきそうだ」と思い込んだ視聴者も多かったはずだ。
「政治家の発言には必ず思惑があるのに、NHKを筆頭に最近のメディアは『安倍首相の言っていることは100%正しい』という前提で報じていませんか。だから政権サイドに利用され、おかしな結果となる。
冷静に考えれば『日本はG7で経済制裁を加えておきながら、北方領土だけは返せというのか』というプーチン側の言い分の方が筋は通っているのに、返還ムードを扇動し、冷静さに欠ける日本メディアはその言い分をほとんど伝えません。まるで敵国の報道を封印し、自国の主張だけを伝えるのなら、戦時中の大本営発表と同じです」(元NHK政治記者で評論家の川崎泰資氏)
15日もNHKは日ロ会談のニュースのたびに、「70年余り進展のみられなかった領土交渉は前進するのか」と散々あおっていた。
いい加減、反省すべきだ。