「私の顔を忘れていただきたい」 官僚トップから民間人に、前川前事務次官が明かすいま
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安倍総理の友人・加計孝太郎氏の獣医学部新設を巡る総理の関与疑惑。昨年、野党から連日激しい追及が続き、安倍総理はその弁明に追われた。きっかけは前文部科学省事務次官・前川喜平氏による発言だ。
「あったもの(文書)をなかったことにはできない。公正公平であるべき行政のあり方が歪められた」
一躍時の人となった前川氏は、いま何を思うのか。今まで数千人のインタビューを行った吉田豪氏を相手に、3日放送のAbemaTV『ニュースの渦中にいた人物たちが語る真実と本音』でその本音を語った。
■退官後は「夜間学校」で高齢者を対象に教師
自身を「自由人」と表現する前川氏。昨年1月に文部科学省事務次官を退任し、現在は自主夜間学校と呼ばれる学校で高齢者に勉強を教えている。
「夜間学校を文部科学省がほったらかしにしてきたという責任を感じている。本来非常に大事なものなのに、文部科学省はきちんと教育行政の対象として捉えてこなかった」
自主夜間学校の生徒は今まで学びたくても学ぶことができなかった人たちだ。読み書きができない人も多く、最近では引きこもりだった人の参加も増えてきている。前川氏は昨年3月から福島県福島市と神奈川県厚木市で勉強を教えており、「教育の場と言ってもここは学習の場。一人ひとりの生徒さんが自分で勉強したいことを勉強する場。そこが1番いい。(公務員時代と比べて)こっちの方がずっと楽しい」という。
そんな前川氏について、生徒たちからは「ああいうところ(文部科学省)にいる人は話の分からない、(いい)学校を出た頭でっかちの人だと思っていたけれど、全くそうじゃなかったので本当にびっくりする」「非常に気さく」といった声があがる。
福島では新聞を使った勉強も行うが、読みたい記事を選んでもらった中に前川氏の名前が出てくることがあるという。「私を前文部科学省事務次官だと知っている人はいまや多い」と話した。
授業はボランティアで行い、他にも講演などを行うというがほとんどお金にはならないそうだ。「交通費はもらうけれど、講演料はこっちからくれとは言わない。ゼロということもあった。私を呼んでくれる組織には草の根で地道に活動している人たちが多いので、1回に10万円~20万円という講演料を払えるような人はいない。だからたまに『こんなにもらっちゃっていいのかな』ということもある。くれるものはもらいますよ。私は今、基本的には無職ですから(笑)」
■前川氏「安倍総理は逃げ続ける意外に道はない」
そんな中、野党が追及を続ける加計学園問題。前川氏は「文書は存在していた」と発言し、政府と対立した立場だが、今はどうみているのか。
「提供できる情報は全て提供してしまった。私も今は一国民として後から出てくる情報をそうだったのか、なるほどと見ている。この前の特別国会でも、自由党の森ゆうこさんや共産党の田村智子さんなど女性の国会議員が活躍している。あの人たちが新しく突いているポイントを聞いていると、私の見えないところが段々見えてくる」
また、追及を受ける安倍総理については「安倍総理は加計学園問題については逃げるしかないからお気の毒だと思う。だけど通常国会が始まって、2~3月に連日予算委員会が開かれると、森ゆうこさんとか田村智子さんみたいな人がきっとガンガンいく。森ゆうこさんの質問ははっきり言って面白い。森ゆうこさんは民主党政権時代に文部科学副大臣だった。私もお支えする立場で色々と接触があったが、ある意味すごく猛烈な人で、だから役所としては手こずるところがあったけど、前進する時の破壊力があって味方にしたら頼もしい人。敵にしたらものすごく手強い」と言及した。
前川氏が文部省(当時)に入ったのは1979年。入省時から個人と組織の考えがかみ合わないことを予期していたという。
「自分が組織の中でできることはできるんじゃないか、できないことはできないだろうと。自分でできることはしてきたつもり。集団主義的、国家主義的、ファシズム的な力というのは常にある。それに対して個人の自由を守る側に押し返すような、そういうせめぎ合いは文部科学省の中に常にあった」
さらに、教育に矛盾があると指摘。「来年(2018年)から検定教科書を使った道徳教育が始まるが、今回検定で通った教科書の中には相当ひどいものがある。文部科学省は『特定の道徳的価値を教え込むような授業をしてはいけない』『子供たちが自分たちで考え議論する道徳が必要』と言っている。道徳においても、無条件に価値あるものとして覚えるものではないんだと。そう考えれば、『本当に国を愛する心は必要か』というところから議論すればいい。『国とは個人が存在する前にあるものなのか。そうではなくて一人ひとりの人間が集まって作っていくのが国なんじゃないか』とか。だから政治家たちが言っている『こういう道徳を教え込むんだ』という話と、文部科学省の現場に伝わるレベルの話ではかなり食い違っている。これは一種の面従腹背」と訴えた。
■前川氏「私の顔を忘れていただきたい」
前川氏が会見を行ったのは昨年5月。当時のことを次のように振り返る。
「読売の(出会い系バー通い)記事が出てから3日くらいでの会見だった。記事が出た時に法的に自分の身を守る必要があると思って、代理人弁護士を依頼した。その弁護士が記者会見の時に随行してくれて、彼が用心のためと買ってきた防刃シャツを着た。弁護士会館で記者会見をやったが、空調のスイッチを入れてなくて部屋の中がものすごく蒸し暑くて。防刃シャツを着ているから尚更暑くて汗がダラダラ出てきた。そんななか出会い系バーについて聞かれた(笑)」
また、加計学園と森友学園の問題には似ていると指摘。「規制改革という名のもとで、特権的に特定の学校法人にだけ便宜を図って、ハードルを下げて設置認可を認めるというのはよく似ている。そういうことが、この政権内で相当行われているということの一端だと思う。他にもあると思う」と考えを述べた。
最後に、前川氏に「世間に伝えたいこと」を聞くと「もうあんまり派手にメディアに出るつもりはないので、私の顔は忘れていただきたい。あとは安倍政権のおかしいところはおかしいとちゃんと言う他のメディアや言論人、あるいは政治家の方々に追及していってもらえればと思っている。私の顔は忘れてほしいというのがぜひ伝えたいこと(笑)。道で見かけても声をかけないで、勝手に行きたいところに行かせてほしい」と語った。
(AbemaTV/『ニュースの渦中にいた人物たちが語る真実と本音』より)