宇宙の仁の心は、父の体内から数億個の精子が送られた時から、動き始めている。
数億の精子は、たった一つの母親の卵子めがけて、突進する。
まさに死に物狂いの戦いをして、たった一つ精子が母の卵子に入る。
もし貴方がトップではなく、二番手で突入しようとしたいたら、貴方はこの世に存在しない。
宇宙の仁の心は、その時から数億個の精子の中から貴方一つを見つけ、貴方をこの世に送り、貴方を慈しみ、貴方を愛し、貴方を育てようと決心したのだ。
貴方がこの世に出現したのは、偶然ではない。
宇宙の仁の心によって、選ばれた必然だった。
だから人は「三月仁に違わず」で、いつも思い通りの心を持っていたい。
誰もが宇宙の仁の心で、生まれてきた。
ならば、自分の事ばかり考えないで、たまには人の事を思いやり、弱い立場の人をもっと慈しんだらどうなのか。
孔子の弟子では顔回(がんかい)という人が三月、つまりいつもいつも仁の心で生き通したという。
まあ、そこまでとは言わず、一日に一回でも、一月に一回でもいいから…。
明治時代の話だが、日本橋を一台の人力車が走っていた。
が、出会い頭にボンとぶつかった。
二台の車夫は車から飛び出し、さっと頭に巻いてあった手ぬぐいをとって「ああ、私が悪かった。ごめんなさいまし」。
「いや、とんでもねえ、俺が止めねえからいけなかった。ごめんなせえ」と二人で頭を下げた。
宇宙に選ばれた貴い人間同士の「人を思いやる」美しい姿だ。