孔子は言う。「君子は質のみ」と。
「質」とは本質である。
人は世間とか生命とか、あらゆるモノの上辺だけを、軽く知って生きて行くよりも、もっと深い本質を理解して生きた方が、より人生を楽しめる…と言う事だ。
何よりも、まずは自分が今ここにこうして、生きている事の深い本質を味わいたい。
草や木に花が咲く。「まあ、美しい」と感嘆する。
それだけでは、足りないのだ。
この草や木に美しい花を咲かせるのに、その根っこは明るい太陽をのがれ、真っ黒でじめじめした大地に埋もれて、土から間断なく栄養を取ってくれている。
この本質的な事実が、草木の成長と見事な開花のエネルギー源である事を、しみじみと観想する事が大切なのだ。
上辺だけでなく、あらゆる生命の本質を知れば、人生はもっと美しく、もっと尊く、もっと有り難くなる。
その時、人はあらゆる苦悩から、脱出出来る。
いま流行のマニュアルに合わせて生活すると、便利で能率的かも知れないが、深い本質が見えにくくなる。
名門の和菓子屋さんで「このお菓子は、和三盆を使っていますか」と聞いた。
とっさの質問を受けた女店員は「ハイ、それはマニュアルには書いてありませんから…」と答えてきた。
「和三盆ていうのは、上等のお砂糖なんだけど…このお菓子の甘味がとても上品だから、聞いたんですよ」と付け足すと、その女店員さんは店長さんに言った。
「店長、お菓子の材料についてのマニュアルは、無いですよね」。
店長は「あ?、無いよ」とあっさり顔。
マニュアルばかりで生きていると、誠意が失くなり、機転が利かなくなって、本質の分からない、表面だけの世間になる。