『書架の探偵』ジーン・ウルフ

スパイス・グローヴ公共図書館に住むＥ・Ａ・スミスは、推理作家Ｅ・Ａ・スミスの複生体である。
彼は、生前のスミスの脳をスキャンし、作家の記憶や感情を備え、図書館に収蔵された‘‘蔵者’’なのだ。

そのスミスのもとに、コレット・コールドブルックと名乗る令嬢が現れた。
コレットは父・兄と立て続けに亡くしていたが、その兄に渡されたスミスの著作『火星の殺人』が、その死に関わっていると考え、スミスを借りたというのだ。

初っ端からコレットが誘拐されることで、スミスが自分自身を他館に返却に行くというところは、何ともユニークであり、哀しさも感じる場面でありました。
でも、そこで終わることなく、あらゆる手段で人間と認められる人々の手助けを得、奇想天外な冒険もし、コレットを救おうと努力するところが格好いいです。
結末に少し寂しさと空虚さも感じますが、それでもスミスは最大限の冒険と推理で、事件を解決に導きました。

さらに、これには続編の予定もあるとのこと、とても楽しみです。
強くお薦めできるＳＦミステリです。

『アンマーとぼくら』有川浩

３２歳のリョウは、義母の住む沖縄に里帰りして彼女のお休みの３日間、付き合う事になっていた。

リョウの父はあまりにも子どもで、リョウの実母を愛していたにもかかわらず、その死の宣告から間際まで、全く立ち会うことをしなかった。

そのためリョウは、父の早すぎる再婚にわだかまりを持ち、なかなか義母に打ち解けなかった。

義母・晴子さんとの再会の日の記憶の欠落から、きっとこれは何かあるなとは思っていましたが、沖縄の神様からのプレゼントだとは思いつきませんでした。

最終的な後悔はともかく、リョウ自身の後悔の１つを未来のリョウが打ち消すことになりましたし、何よりも、晴子さんからのプレゼントがリョウにとって励みになってくれたのが、一番良かったと思っています。

とても優しい、奇跡のファンタジーでした。

奪われた手紙 民間検閲局2017

ギンギラ太陽`ｓ×劇団ショーマンシップによるお芝居「奪われた手紙 民間検閲局」を見てきました。

ギンギラ太陽’ｓを観たいと思っていたので、今回の枝光本町商店街アイアンシアターでの北九州市の公演は、渡りに船（？）でした。

戦後、ＧＨＱが日本人の手紙を検閲していたとは、初めて知りました。
基本的には、結構シリアスな話なのですが、ギンギラらしく被り物もあり、笑いもありで、楽しみつつ戦争に対する再認識ができました。
戦争を美化するようになったら、同じ道を歩むかもしれないということを肝に銘じて、今後も生きていきたいと思います。

舞台のセットの写真も撮ったので、載せますね。

『半妖の子 妖怪の子預かります４』廣嶋玲子

今回の弥助も、色んな妖怪の子を預かるが、中でも化けいたちの宗鉄の娘・みおは、最近、母親を亡くしたばかりなのと、その母親が亡くなる直前に父親が妖怪だという事を知らされたばかりなのとで、心を閉ざしていた。

しかし弥助や、やってくる他の妖怪の子たちと触れ合い、反目する事はあっても打ち解け始めようとしていた。あの事が無ければ・・・。

最終的に良い結果になったとはいえ、みおが、あそこまで弥助に言えるようになるとは思いませんでした。
おかげで、宗鉄と千弥がああなってしまいましたが。
新たなる事件とともに、今後の展開が気になります。

『時間線をのぼろう』ロバート・シルヴァーバーグ

コネによってマッタシーン判事つき三等書記官として八日間勤めたものの、忍耐力の限界から、荷物をまとめてアンダー・ニューオリンズにやって来た２４歳の青年・ジャド・エリオット。
２０５９年の春だった。

ジャドに時間局の時間観光ガイドの仕事を世話して、二間のアパートの一間に住まわせてくれたのは、黒人の同業者サム。

様々な先輩に出会い、善悪ひっくるめて多くの事を学んだジャドだったが、ビザンティウムにのぼる旅で、自分の遠いご先祖にあたるプルケリアに恋をしてしまった。

本気の恋をしてしまったのが大・大・大・・・・・大おばあ様というのも悲劇ですし、タイムツアー客の引き起こしたとんでもないパラドックスを収拾して回らなければならなくなったのも、災難でしたね。

シルヴァーバーグさんご自身も、年表を作らないと混乱してしまいそうなほどややこしく、私もつじつまが合っているのかの見当もつきません。

結末はともかく、面白いタイムトラベルストーリーなのは間違いありません。