この記事の元ネタ:「位相への30講:志賀浩二」のコラムより
4次元以上の多次元空間では日常感覚では理解できないことがいくつも明らかになっている。今日はそのひとつを紹介しよう。久しぶりの「理科復活プロジェクト」で、これは高校生や一般読者向けの記事である。(このカテゴリーの趣旨はこちらの記事で述べておいた。)
直径が1の青い円を4つ、下の図のように並べる。すると周りを囲む正方形の各辺の長さは2となる。このとき4つの円の真ん中の隙間に置いた赤い円の「半径」はどれくらいになるだろうか?
正方形の対角線の長さは 2√2 で青い円2つぶんの直径は2である。前者から後者を引いたものは赤い円の「直径」2つぶんになっていることに気がつくのにそう時間はかからないはずだ。よって赤い円の「半径」は次のとおり。
赤い円の半径=(2√2-2)/2/2=(√2-1)/2=0.207
同じことを3次元空間で考えてみたらどうなるだろう。図としてはこのようになる。
赤い球を囲む青い球の数は、2倍の8個となる。青い球の直径は1だから周囲の立方体の1辺の長さは2だ。そうすると立方体の頂点から反対側の頂点まで、これを「対角線」と呼ぶことにすれば、この長さはピタゴラスの定理を2回使えば2√3であることがわかる。すなわち赤い球の「半径」は次の式で計算できることがわかるのだ。
赤い球の半径=(√3-1)/2=0.366
2次元のときより赤い球は少し大きくなっている。
さらに4次元空間ではどうなるだろうか?図を思い浮かべることはできないが、4次元の世界では球は「超球」と呼んでいる。けれどもここでは単に「球」と呼ぶことにしよう。4次元の超立方体も「4次元立方体」と呼ぶことにする。
次元の数が1つ増えるごとに、周囲の青い球の個数は2倍になる。なぜなら次元の数1つ増えると青い球が2つ並ぶだけの長さの辺が1本増え、ひとつ低い次元のときに立方体に詰まっていた青い球の個数が既にあるひとつひとつの次元で2倍に増えるからだ。(わかるかな?2次元から3次元の場合を考えてみるとよい。)
4次元の青い球の直径は相変わらず1なので、4次元立方体の各辺の長さは2となり、対角線の長さはピタゴラスの定理を3回使って2√4=4となる。すなわち4次元の場合の赤い球の「半径」は次の計算で求めることができる。赤い球はさらに大きくなった。
4次元の赤い球の半径=(√4-1)/2=0.5
このように考えていくと、n次元空間の立方体の対角線の長さは2√nとなるから、赤い球の半径が次の式で計算できることだろう。
n次元の赤い球の半径=(√n-1)/2
おお、すごい!一般式は正しそうだ!
2次元のときでもちゃんとこの公式は使えるだろうか?2次元の球とは、つまり円のことだ。n=2を公式に代入して計算すると以下のようになる。ま、これは当たり前か。
2次元の赤い球の半径=(√2-1)/2=0.207
それでは、1次元のときも大丈夫だろうか?1次元の青い球とは、すなわち長さが1の青い線分であり、図にするとこんな感じで、球も立方体もつぶれてしまう。(立方体は長さ2の線分になる。図では真ん中の長い線が立方体で、上下にずらして描いた2本の線が2つの青球をあらわしているつもり。)
それでも公式を使えば赤い球(線分)の半径は次のようにゼロと求まる。赤い球の入る余地など全くないのだ。
1次元の赤い球の半径=(√1-1)/2=0
このように「公式」は一般的にn次元空間でも成り立ちそうなので、さしあたり15次元空間まで計算してみると、このようになった。(画像はクリックで拡大する。)
うーむ、素晴らしい。。。。それにしても青い球はずいぶんたくさんになるんだな。。。
あれ?何か変だぞ!!!
そう、10次元の行を見てほしい。真ん中の赤い球の「半径」は1.08になっている!つまり赤い球の「直径」は2.16となり、外側の10次元立方体からはみ出してしまうのだ。なぜなら立方体の辺の長さは何次元であろうと2なのだから。
10次元の青い球はすべて10次元立方体の中にあるはずなのに、その真ん中の隙間に収まっているはずの(10次元の)赤い球は10次元立方体の外にはみだしている!!10次元以上では赤い球の半径が1より大きいのでいつも立方体からはみ出しているのだ。
日常感覚では理解できないことが、高い次元の空間ではおきているのだ。今回のはその一例である。
関連リンク:
キス数:
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3fff2b46269846dff3db22e01744d085
n次元球の体積:
http://eman-physics.net/statistic/sphere_vol.html
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私のような凡人にはわかりましぇん。。。苦笑。
やっぱり頭の構造が違うんだろうなぁ。。。
そんなとねさんが私のような地味~なブログにコメントくださって、ありがとうございます。
これからも諭してやってくださいませ~。
私もちまちまと読まさせていただきますので~。
計算方法をもう少し詳しく図解して説明すればよかったですかね。
wachiさんのブログ、これからもちょくちょくお邪魔させていただきますね。
しばらく好天が続くようで何よりです。のどかな日曜日をお過ごしください。
1次元時は赤い球体が入る「隙間がない」じゃなくて「隙間が0cm」で、隙間と赤い球体自体は「存在している」んじゃない??
長さが0cmなだけで。
0次元で青い球体が1つ、つまり「青い球体同士の距離」って概念がなくなるから、そこで初めて赤い球体が消滅…つまり「null」になるのかなっと。
この際、(√n-1)/2の解がマイナスになるけど、適用できる前提なのか、どう解釈すべきか考えてみようかな。
長さ0cmのものがあることを「存在している」と見なすのであれば、1次元のときも赤い球体は存在していることになりますね。
0次元のときはいったいどう考えたらいいのか僕も興味がでてきました。
ユニークな発想のコメントをいただきありがとうございました。
ところで「篁」さんのお名前は「たかむら」とお読みするのでしょうか?ネット検索してみたところそのようなお名前の方がヒットしました。何歳になっても読めない人名はあるものですね。
私はn次元空間において一点で放射状に交わる直線がお互いに等しい角度で交わるときその直線が最大何本あってその場合交わる角度の大きさはいくらになるか計算してみました。
3次元空間について適用するとその数学モデルはメタンの分子模型やダイヤモンドの構造とと同じであることがわかりました。4次元空間の場合そのモデルは何に相当するかまだ解りません
∞次元空間でこれらの直線の交わる角度はちょうど90度になります
はじめまして。初コメントありがとうございます。
鈴木さんがご提示になった問題は、3次元のときにそのように実際の分子や結晶の構造と符合してくるわけですね。無限次元空間で90度というのも興味深いです。
この問題はだいぶ前に書いた「キス数」の問題と共通していると思いました。(3次元のときは違うかな??)
キス数
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3fff2b46269846dff3db22e01744d085
これからもよろしくお願いします。
気力で暑い夏を乗り切りましょう!
キス数という言葉は初めて聞きました。これから研究してみたいと思います。
等角直線の無限次元の空間と量子力学に出てくるヒルベルト空間と何か関係があるのかなと思っています。等角直線を等角ベクトルとして考えてみたいと思います。
なお私の等角直線の計算は3つの方法で計算できることがわかりました。一つの方法は内積です。この方法は計算がとても複雑になります。三次元まではなんとか計算できました。それ以上はスパコンでないと無理です。
お久しぶりです。前回コメントいただいた頃はまだ暑い盛りでしたが、やっと秋らしくなってきましたね。
鈴木さんが研究されている多次元(n次元)の等角直線というのは、多次元空間の正多面体(多胞体)に関係があるのかもしれないなと思いました。多面体の面の中心を垂直につらぬく直線たちは多面体の中心で同じ角度で交わるわけですし。
4次元の正多面体について説明しているページを見つけました。
4次元の正多面体
http://www.geocities.jp/sgwr0/poly4dim/poly4d.html
http://www.interq.or.jp/blue/kawashu/include/i06.html
高次元の正多面体
http://hp.vector.co.jp/authors/VA030421/fdd03.htm
http://eprints3.math.sci.hokudai.ac.jp/364/4/jin0804.pdf
等しい半径の円、球、4次元以上では超球を
2次元空間(平面)のときは3
3次元空間(立体)のときは4
4次元以上では4+1、4+2、・・・・
の個数のものをそれぞれお互いに接するように配置すればそれぞれの空間のキス数と等角直線直線の最大本数は等しくなります。
コメントありがとうございます。
キス数は以下のように急激に増大しますが、当確直線の最大本数も同様に増大しますか?
次元:キス数の下限と上限
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1 : 2
2 : 6
3 : 12
4 : 24
5 : 40 - 46
6 : 72 - 82