池袋駅を背にグリーン大通りを歩いている。
時刻は夕刻の4時近く。
わたしとH谷川さんはある企業の東京支店に向かってやや早足になっていた。
我々は特にその企業に用事があるわけではなかった。
我々を呼んだのは、彼らだったのだ。
どんな魂胆があるのか、いまいち判然としない。
「飲みながら話しをしようじゃないか」、と言ったのは、その会社のN村さんの方だった。
東池袋の交差点を越えたところで、H谷川さんが叫んだ。
「あそこtoto売ってるよ」と。
その指差す方に目を向けると、きったない雑貨屋なのか、酒屋なのか、よく分からない小売店が見える。まさか、あんなお店でtotoなんて…と思って、目を凝らすと確かにtotoを販売する看板が飾られていた。急いで近寄ってみると、こりゃまた、きったない字で「totoBIG キャリーオーバー6億円」などと書いてある。どうやらホントに売っているようなのだ。
totoBIGはここ最近1等が出ないために、その当選金がプールされ、とてつもない金額に膨らみ、高額当選が出るとマスコミで喧伝されたおかげでコンビニ販売はパンクしてしまったのだ。
早速、お店に入ると時代がかった、昔の駄菓子屋を思わせるような雰囲気の中、おばちゃんが店番をしていた。
「toto買えるんですか?」
とH谷川さんが聞くと、「え~、買えますよ」という。
今度はそのおばちゃんの方が怪しく見えた。果たして、totoを発券する方法を知っているのか、と。わたしとH谷川さんが300円を払ってtotoBIGを一口ずつ頼むと、おばちゃんは見事な手さばきで発券してみせた。
あちこち探して買ったものではないけれど、なかなか買えない状況のものが手に入るとなんとなく嬉しい。6億円の権利を財布にしまって我々は目的の会社に向かったのであった。
目的の会社はJワンプランニング(以下Jワン)といった。
元気で威勢のいい社長がいるベンチャー企業である。
その会社に、業界の老舗商社のビッグネームが移籍したのである。ひとりが先述したN村さん。この人はAティア橋本で要職を務めた方、そしてもうひとりが元A全自動車のT所さんだ。この老獪な仕事人が何故成長著しい若い会社に移籍したのか、強いて言えば我々がJワンを訪問する気になったのは、彼らの口からその真相を聞きだしたかったというのが本音だった。
そして、クーラーのない殺風景な応接室で2時間、我々は談笑したのであった。
6時を過ぎたところで、N村さんが、不意に「飲みに行こう」と言い出した。
どうやら近所に行き着けがあるらしい。
着いていくと、東池袋交差点すぐ、地下に店を構える「炉端焼き 魚然」という店だった。
「ぎょぜん?、それともぎょねん?いやいや、うおねんか?それとも、うおしかり?」
店名の読み方が分からない。
正解は「うおぜん」らしい。
中に入ると、やや広々とした感じのこぎれいな店内が現れた。左手にカウンター席。その奥はどうやらお座敷のようだった。
お店の雰囲気は最近やけに多くなってきた隠れ家系のプレミアム居酒屋風。そこまで凝った演出はしていないが、充分その匂いがぷんぷんする。
我々は、小上がり掘りごたつ風の個室に通され、生ビールを4つ注文した。
ビールは注文からテーブルに供されるまでしばし時間があった。正確に時間を計ったわけではないので、正確には記すことができないが、5分はかかった気がした。5分はちょっとかかりすぎだ。お客は我々の他にはまだ誰もいない様子だったのに、この時間は頂けない。
ただでさえ、喉がカラカラなのだから、生ビールくらいはせめて速攻で出すべきだ。
ともあれ、我々は生ビールのジョッキに手をかけ、乾杯をして麦汁に口をつけた。おぅ、サッポロの黒ラベル。樽生はやはりうまい!
かねてより当ブログで指摘してき(駄ジャレじゃないよ)たが、わたしが行く居酒屋では断然サッポロビールのシェアが最も高い。これはたまたまそうなっているだけか?それともサッポロのシェアが高くなっているのか。
つまみは「刺身5点盛り」。メニュー表を眺めていると、どうもこの店は魚が自慢の居酒屋のようだ。
刺身の5点はマグロに大トロ、ハマチ、イカ、もう1点はカンパチだったか?食してみたところ、モノは悪くないようだ。
生ビールを飲み干すと、N村さんが焼酎を飲もうといいはじめた。壁には芋焼酎の某銘柄のポスターが貼られており、N村さんは、「これを1升ください」と女性の店員に頼んだ。
つまみはイカの一夜干し。このつまみが焼酎によく合い、くいくい進む。わたしはロックで、T所さんお湯割りで。話しは大いに弾み一升瓶は瞬く間に半分になった。
そうすると、やがて店内のBGMに聞き慣れた曲が流れてきた。石川セリさんが歌う『ムーンライトサーファー』だ。さっきまで気にならなかったが、店内は懐メロばかり流れている。T所さんは60歳、N村さんは52歳。どうやら、この店は年配客がターゲットらしい。
『夜の海が見たかった』と唄う石川セリさんはN村さんと同い年。同曲を作詞作曲したパンタさんも、もう55歳だ。
そう言えば、最後にわたしが夜の海を見に行ったのは、いつのことだったか。愛車ジムニーを駆って稲毛海岸によく行ったのはもう12年も前のことだっけ。海を見に行く際には決まってボ・ガンボスの『トンネル抜けて』をかけたもんだ。この曲のオリジナルはモップスだったか、或いは、ザ・ダイナマイツだったか。とにかく、痛快な曲だった。
N村さんならば、ハコスカかケンメリのスカイラインで若かりし頃は夜の海を見に行ったのかもしれない。
結局、宴は盛り上がって11時半まで我々はぐだぐだ飲んでいた。店を出た時、もし、我々がもう少し若かったなら、誰かがきっと『夜の海を見に行こうぜ』って言ったんじゃないかな。
時刻は夕刻の4時近く。
わたしとH谷川さんはある企業の東京支店に向かってやや早足になっていた。
我々は特にその企業に用事があるわけではなかった。
我々を呼んだのは、彼らだったのだ。
どんな魂胆があるのか、いまいち判然としない。
「飲みながら話しをしようじゃないか」、と言ったのは、その会社のN村さんの方だった。
東池袋の交差点を越えたところで、H谷川さんが叫んだ。
「あそこtoto売ってるよ」と。
その指差す方に目を向けると、きったない雑貨屋なのか、酒屋なのか、よく分からない小売店が見える。まさか、あんなお店でtotoなんて…と思って、目を凝らすと確かにtotoを販売する看板が飾られていた。急いで近寄ってみると、こりゃまた、きったない字で「totoBIG キャリーオーバー6億円」などと書いてある。どうやらホントに売っているようなのだ。
totoBIGはここ最近1等が出ないために、その当選金がプールされ、とてつもない金額に膨らみ、高額当選が出るとマスコミで喧伝されたおかげでコンビニ販売はパンクしてしまったのだ。
早速、お店に入ると時代がかった、昔の駄菓子屋を思わせるような雰囲気の中、おばちゃんが店番をしていた。
「toto買えるんですか?」
とH谷川さんが聞くと、「え~、買えますよ」という。
今度はそのおばちゃんの方が怪しく見えた。果たして、totoを発券する方法を知っているのか、と。わたしとH谷川さんが300円を払ってtotoBIGを一口ずつ頼むと、おばちゃんは見事な手さばきで発券してみせた。
あちこち探して買ったものではないけれど、なかなか買えない状況のものが手に入るとなんとなく嬉しい。6億円の権利を財布にしまって我々は目的の会社に向かったのであった。
目的の会社はJワンプランニング(以下Jワン)といった。
元気で威勢のいい社長がいるベンチャー企業である。
その会社に、業界の老舗商社のビッグネームが移籍したのである。ひとりが先述したN村さん。この人はAティア橋本で要職を務めた方、そしてもうひとりが元A全自動車のT所さんだ。この老獪な仕事人が何故成長著しい若い会社に移籍したのか、強いて言えば我々がJワンを訪問する気になったのは、彼らの口からその真相を聞きだしたかったというのが本音だった。
そして、クーラーのない殺風景な応接室で2時間、我々は談笑したのであった。
6時を過ぎたところで、N村さんが、不意に「飲みに行こう」と言い出した。
どうやら近所に行き着けがあるらしい。
着いていくと、東池袋交差点すぐ、地下に店を構える「炉端焼き 魚然」という店だった。
「ぎょぜん?、それともぎょねん?いやいや、うおねんか?それとも、うおしかり?」
店名の読み方が分からない。
正解は「うおぜん」らしい。
中に入ると、やや広々とした感じのこぎれいな店内が現れた。左手にカウンター席。その奥はどうやらお座敷のようだった。
お店の雰囲気は最近やけに多くなってきた隠れ家系のプレミアム居酒屋風。そこまで凝った演出はしていないが、充分その匂いがぷんぷんする。
我々は、小上がり掘りごたつ風の個室に通され、生ビールを4つ注文した。
ビールは注文からテーブルに供されるまでしばし時間があった。正確に時間を計ったわけではないので、正確には記すことができないが、5分はかかった気がした。5分はちょっとかかりすぎだ。お客は我々の他にはまだ誰もいない様子だったのに、この時間は頂けない。
ただでさえ、喉がカラカラなのだから、生ビールくらいはせめて速攻で出すべきだ。
ともあれ、我々は生ビールのジョッキに手をかけ、乾杯をして麦汁に口をつけた。おぅ、サッポロの黒ラベル。樽生はやはりうまい!
かねてより当ブログで指摘してき(駄ジャレじゃないよ)たが、わたしが行く居酒屋では断然サッポロビールのシェアが最も高い。これはたまたまそうなっているだけか?それともサッポロのシェアが高くなっているのか。
つまみは「刺身5点盛り」。メニュー表を眺めていると、どうもこの店は魚が自慢の居酒屋のようだ。
刺身の5点はマグロに大トロ、ハマチ、イカ、もう1点はカンパチだったか?食してみたところ、モノは悪くないようだ。
生ビールを飲み干すと、N村さんが焼酎を飲もうといいはじめた。壁には芋焼酎の某銘柄のポスターが貼られており、N村さんは、「これを1升ください」と女性の店員に頼んだ。
つまみはイカの一夜干し。このつまみが焼酎によく合い、くいくい進む。わたしはロックで、T所さんお湯割りで。話しは大いに弾み一升瓶は瞬く間に半分になった。
そうすると、やがて店内のBGMに聞き慣れた曲が流れてきた。石川セリさんが歌う『ムーンライトサーファー』だ。さっきまで気にならなかったが、店内は懐メロばかり流れている。T所さんは60歳、N村さんは52歳。どうやら、この店は年配客がターゲットらしい。
『夜の海が見たかった』と唄う石川セリさんはN村さんと同い年。同曲を作詞作曲したパンタさんも、もう55歳だ。
そう言えば、最後にわたしが夜の海を見に行ったのは、いつのことだったか。愛車ジムニーを駆って稲毛海岸によく行ったのはもう12年も前のことだっけ。海を見に行く際には決まってボ・ガンボスの『トンネル抜けて』をかけたもんだ。この曲のオリジナルはモップスだったか、或いは、ザ・ダイナマイツだったか。とにかく、痛快な曲だった。
N村さんならば、ハコスカかケンメリのスカイラインで若かりし頃は夜の海を見に行ったのかもしれない。
結局、宴は盛り上がって11時半まで我々はぐだぐだ飲んでいた。店を出た時、もし、我々がもう少し若かったなら、誰かがきっと『夜の海を見に行こうぜ』って言ったんじゃないかな。
それでも「とりビー(とりあえずビール)」は即効でてきてほしいですね~。
とりビーで5分というと、感覚的には15分くらい感じそうです。
実はこの問題は居酒屋放浪カーとしては重要な問題なので、今度からは、ビールが出てくる時間を計ろうと思っています。
ちなみにウチの会社の社長はビールがソッコーで出てこないと機嫌が悪くなります。
神田駅前の「東方見聞禄」に行ったとき、あまりのビールの遅さに「もう、ここに来るのはやめような」と不機嫌な顔で言っていました。
確かにとりビーで5分は15分くらいに感じました。
それって居酒屋としては失格ですよね。