道後温泉で一風呂浴びて外に出ると、麦酒という漢字が目に飛び込んできた。
ちょっと待ってくれ。何なんだよ、このマーケティング。たとえ、ビール好きでなくとも、風呂上がりなら誰だって一杯飲りたくなるじゃねぇか。
反射的に、いや吸い込まれるようにというか、体が勝手に、自分の意識とは裏腹に足が向いてしまう。
強風の中を歩くパントマイムのように。
「あん、ダメ、ちょっと、そこは」と卑猥な言葉を心の中で叫ぶが、悪だくみを持った越後屋は「まんざらでもねぇんだろ?」とニヤリとする。
そんな誘惑に、ガクリと力を奪われ、とうとうボクは手籠めにされた。
店に吸い込まれたのである。
店には、ボクみたいな輩がいっぱいいた。いや、浴衣を着たお姉さんもいた。温泉街にビール屋さん。これは当たりだ。
「道後 麦酒館」。これで「どうごビールかん」と読むらしい。
店に入ると小上がりに通された。
いいよなぁ。風呂上がりにまったりするのは。
この店、「道後ビール」のアンテナショップらしく、メニューには樽生の「道後ビール」がラインナップする。
「ケルシュ」、「アルト」、「スタウト」、「バイツェン」。
「ピルスナー」はないらしい。
これらのビールに通称があるらしいから、面白い。
先述の順番から「坊ちゃん」「マドンナ」「漱石」「ノボさん」。
ビールと名称の関係は不明。「スタウト」が「漱石」っていうのが、納得がいかないが、ボクはその「漱石」を頼んだ。ジョッキは840円。
肴には「宇和島のじゃこ天」(370円)をチョイス。
道後の温泉街にある麦酒館と聞けば、純和風的なお店を想像するだろう。
だが、その想像は見事に裏切られる。
完全な洋風でもないが、和洋折衷にしては、妙にアンバランスだ。
小上がりのあるバー風といったあんばいだろうか。
「じゃこ天」はおいしかった。
宇和島は「じゃこ天」の名産地らしい。色はきつね色をもう少し濃くした感じで、熊本のそれとは全く違う。
カリカリと歯ごたえが心地よく、コクのある「スタウト」にもよく合った。
2杯目は「ノボさん」をグラス(470円)で頼んだ。
何故に正岡子規なのだろうか。全く分からない。
白みがかったやや濁りのあるバイスビールを口に含むと、あの独特の爽やかな香りが漂う。素晴らしい。
あてに「酢の物」(370円)をいただく。
だが、このあてのチョイスが失敗した。どちらも、爽やか系なのである。
「しまった」と思ったときは後の祭り。あ~、こってりとしたものを選べばよかった。
それにつけても、風呂上がりにまんまとしてやられた熊猫。
恐らく、ほとんどの人が、ふらふらと吸い寄せられるんだろうな。
道後温泉を出たほとんどの人がね。
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