誰がいい始めたのかプリン。
皿に落とすとプルルンとなるからか、プディングよりも、語感として実はしっくりくるなと思ってはいた。
男は昔から、このプルルンなるものに命をかけてきた。ツンと触ったら流動する不安定な物体に、心を踊らされてきた。プリンもそのうちのひとつだと思う。
プッチンプリンからビールや魚卵を摂取して体に溜まるものまで、様々なプリンに接してきたが、一番手頃でおいしいと思うのが「パステル」だ。
昔、かみさんの実家から帰る道中の羽田空港で、「パステル」の呼び込みの店員さんに変わったおばさんがいた。自作なのか、それとも「パステル」が作って店員さんに教育したのか、ア・カペラで歌を唄い、「なめらかプリン」を販売していた。
「おいし〜プリンっ、なめらかっプリンっ」。
歌とも掛け声ともつかない曲の合間に営業言葉が入るのだが、とてつもなくインパクトがあった。幼かった子どもらは、この歌を覚え、羽田の帰りに必ず「パステル」の「なめらかプリン」を買って帰るようになった。更に不思議なことに、我々が羽田にいる時に、そのおばちゃんも必ずいた。けれど時を経て、いつしか、そのおばちゃんは見なくなり、「パステル」とも縁遠くなった。あのおばちゃん、元気かなと時々思う。
「なめらかプリン」の醍醐味は、やはりそのなめらかさだ。「協同乳業」(メイトー)が発売する「なめらかプリン」もポピュラーだが、「パステル」と比べてはならない。なめらかさの違いは一目瞭然だ。
それは、湯島の「うさぎ屋」のどら焼きを食べた時の衝撃と同じだった。今まで食べていたどら焼きは何だったのかと。「パステル」の「なめらかプリン」を初めて食べた時も同じ衝撃が走った。今まで食べていたプリンは何だったのかと。共通するのは、恐らく原料の玉子の攪拌じゃないかと踏んでいる。この攪拌が気泡をなくし、粒子の細かい生地を作っているのではないか。
そして「なめらかプリン」のカラメルはサラサラ系で、これもなめらかなプリンにマッチしている。ドロ系のカラメルはプリンにからめるのが特徴だが、「パステル」はなめらかさを阻害しないサラ系。サラブレッドといってもいい。この調和が奇跡のプリンを産んだ。
実は最近まで知らなかったのだが、「パステル」は自社のイタ飯屋さんで出していたプリンが人気を博し、それをテイクアウトにしたのが始まりだという。つまり叩き上げなのだ。そんじょそこらのプリンとは違うのである。
今回、久しぶりに「なめらかプリン」をいただいたが、もう別格のベッカム級(意味不明)。
そのなめらかさと喉越しは文句なしに一番である。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます