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居酒屋さすらい 0686 - 心と五臓六腑にしみ入る「米百俵」 - 「大衆割烹 十字路」(長岡市東坂之上町)

2013-10-15 00:41:25 | 居酒屋さすらい ◆地方版
土曜日の夜に発って、長岡に着いたのはもう夜もだいぶ遅くなってからだった。
翌日は6年ぶりの講演。
早朝早いうちから、前泊で長岡に着いたのだった。

ホテルにチェックインして街に出た。
薄暗い駅前を歩き、どこかゆっくりできそうな店を探した。
明日のシナリオを書かねばならない。

かなり広範囲に街を歩いたが、唯一ゆっくりできそうな店はここしかなかった。
「割烹 十字路」。
カウンターの背後に小上がりのある古風な店だった。

カウンターに座ってビールを頼む。
ビールはダブルネームでキリンとアサヒ。
当然、迷うことなくキリンを選んだ。

お店のお姉さん方が美しい。

メニューに「冷のっぺ」(530円)という聞きなれない単語を見つけた。
郷土料理であろう。
美しいお姉さん方に素朴な名前のその料理もオーダーした。

かくして、朴訥としたいかにも田舎臭い料理は、とろみのついたおつゆが冷たい。
里芋、人参、こんにゃく、きのこ類が入ったごった煮のような様相である。
だが、これが文句なくおいしかった。

翌朝に予定されている講演のシナリオを書くという、半ば仕事をしながらの酒にはもったいない。
しばし、仕事の手を休めて「冷のっぺ」に集中した。

この最高の肴にはお酒で対応しなければ失礼であろう。
さすが米どころ!酒には事欠かない。
その中で一際輝く酒が、「米百俵」だった。
小泉純一郎元首相が所信表明演説に用いて一躍有名になったあれである。
その「米百俵」はまさにご当地長岡藩藩士小林虎三郎の逸話。

「この米を、一日か二日で食いつぶしてあとに何が残るのだ。国がおこるのも、ほろびるのも、まちが栄えるのも、衰えるのも、ことごとく人にある。……この百俵の米をもとにして、学校をたてたいのだ。この百俵は、今でこそただの百俵だが、後年には一万俵になるか、百万俵になるか、はかりしれないものがある。いや、米だわらなどでは、見つもれない尊いものになるのだ。その日ぐらしでは、長岡は立ちあがれないぞ。あたらしい日本はうまれないぞ。……」(山本有三「米百俵」より)

その重みのある言葉は「のっぺ」のとろみと重なり、少しほろ苦い。
少しでもそれにあやからねばと酒を味わいながら、シナリオ書きを再開。
土日を惜しむことなく働き、明日の講演を成功させれば、また新しい自分が生まれてくるのでないか。
そんなことを考えながら、せっせとシナリオに没頭し、長岡の夜は更けていくのだった。
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