KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

2016ボリビアの旅 #13-ワイナポトシ登頂

2016年08月02日 | 海外
Day13 2016.8.2
起床0:30-朝食1:00-HC(5.100m)1:30-頂上6:00~20-HC8:30~9:00-BC10:20-ラパス
 
 結局、昨夜はほとんど眠れなかった。
 朝食のテーブルについたカワレツ夫妻に聞いてみると、同様とのこと。
 やはり皆、高山病というよりそれなりの緊張で寝付けなかったようだ。
 
 睡眠不足だが、幸い頭痛や倦怠感、気分の悪さといった高山病の症状は無い。
 ガイドのエドに「気分は?」と聞かれたので「Not sleep, but fine.」と答えておいた。
 
 ワイナポトシはコンドリリ山群より高さもあり寒いというので、今日はありったけのウェアを着込んで行く。
 デジカメのバッテリーも冷えると消耗が激しいので、今日はウェア内側のポケットにホッカイロを貼り、寒さからガードするようにした。
 またチューブ式のビニール水筒は凍ってしまって役に立たないので、テルモスとペットボトルにHotポカリを用意する。
 
 簡単な朝食を済ませ、各パーティー順次スタート。
 自分も用意ができたので、アレックスに声を掛ける。
 
 「Alex. I go !」
 「Ok. See you summit !」
 「Yeah!」
 パーン!とハイタッチを交わす。
 おぉ、なんかカッコよくないか。外国人って、こういう時のノリの良さというか、テンションの上げ方がさりげなく上手い。
 思わず「トップガン」のテーマが頭の中に浮かぶ。
 
 ヘッデンを点け、まずは小屋の先にある岩場を200mほど上がる。
 その先からはいよいよ本格的な雪と氷の世界となり、ここでアイゼンを着けロープを結ぶ。
 P・アルパマヨの時もそうだったが、ここでも私とエドの組が一番先に準備を済ます。
 日本の山屋はこういうのはチャッチャと済ませろと教え込まれるからね。

 

 そして再び出発。
 空は満天の星空だが、真っ暗闇でどこをどう歩いているのかわからない。
 ただヘッデンの光を頼りにエドの後をついていくだけだ。
 なるべく彼のスピードに合わせ、もちろん向こうも馴れない日本人のことを思ってゆっくり歩いてくれているのだろうが、傾斜が少しでもキツくなると途端に呼吸が一杯になってしまう。
 幸い今日は風も無く、気温もそれほど低くない。条件は最高に味方してくれている。
 
 やがて左手にオレンジ色のラパスの夜景が見えるようになってくる。
 
 5,600m付近で最初の難関が現れる。
 多くのパーティーによりステップが刻まれているので壁というほどではないが、傾斜がキツい段差が20m(?)ほどあり、ここでつまづくパーティーも多い。
 ハァハァゼィゼィ息を切らしながら、ここをクリア。 
 これを過ぎるとまたしばらく傾斜は緩くなるが、その分高度も上がってきているので呼吸は苦しい。
 エドには「ゆっくり頼む」と言ってあるが、こちらが何とかついて行くと次第に彼の本来のペースになってしまう。
 
 アイゼンを履いたスタート地点では我々が一番手だったが、その後、ガイドレスのスペイン・チーム、そしてヒゲのペルー・チームに抜かれる。
 スペイン組は強力でバカみたいに速く、トレース無視でとんでもない斜面を独走しているのがヘッデンの明かりでわかる。
 一方、ペルー組は一人がバテたようで途中でヘタり込んでしまった。
 
 そして最後の急登となる。
 コンドリリ山群と同じようにアンデス特有の例のトゲトゲした氷の急斜面となり、とても登りにくい。
 ワイナポトシについてはもっと簡単な雪稜のイメージを勝手に持っていたが、少なくとも今の時期、上部はアルパイン・クライミングの世界で、それなりのアイゼン・テクニックを要する。
 振り返ると、続々と後続パーティーが追ってきている。
 
 あと、どれくらいこの登りが続くのか。プロトレックの高度計は5,900mを表示している。  
 さっさと片づけてしまいたい気持ちもあるが、まだ太陽が上がっていないので暗いうちに登頂しても面白くない。
 エドはどうせ下山時には明るくなるので回りの景色はその時見せればいいと思っているようだが・・・。

 
 
 そのうち先行するスペイン組と遭遇。
 さすがに飛ばし過ぎてバテたのかと思ったら、もう登ってきて下山中とのこと。早いっ!
 それにしても、彼らには山頂からの景色を見るとか写真を撮るという興味はないのか。
 コンドリリ山群のアウストリアの山頂では随分のんびりしていたくせに。
今思うと、あれは彼らの高度順化だったのかもしれない。
 
 擦れ違いざま、スペイン組の一人が私の脚をポンポンと叩き、「バモス!(行け!)」とハッパをかける。
 アイゼンの爪がろくに刺さらないガリガリの氷の斜面を登っていくと、突然前を行くエドが立ち止まり、振り返って手を差し出す。
 エッ、何?

 すると、ここが頂上だと言う。えっ、そうなの?何だか最後は嬉しいとか達成感というより、拍子抜けな感じだった。





 頂上は非常に狭く、一番高い所に四人がせいぜいといったところだ。
 山頂というよりは薄いアイスリッジの一角で、無暗に動きがとれない。ガチガチの堅い氷で、ザックなどその辺に下ろそうものなら、すぐに1,000mも滑り落ちていきそうだ。
 自分らの後にアレックスの組が到着。おぉ、やっぱ強いな!登山は素人同然と言っていたが、さすが21歳の若さだ。
 
 「You did it ! And me too !」そう叫びながら手を上げてきたので、再びハイタッチ。そしてお互いの肩を抱く。

 
 
 山頂ではようやく東の空が明るくなってきたところ。
 写真を撮りまくり、ガイドも撮ってくれるが、とにかく山頂が狭く身動きがとれないのでポーズやアングルを決めることができない。
 
 続いてペルー組、さらに昨日見かけなかったのでおそらくBCから一気に来たと思われる男女ペアが到着するが、それぞれ一人ずつが相当参っている。
 何とか山頂にたどり着いたが、その場にヘタリ込んで目も虚ろである。

 あまり自分たちで頂上を独占しても悪いので、いいところで下山開始。
 明るくなって気付いたが、頂上直下はガチガチにコンクリート化した氷の滑り台。・・・ここを下るのか。
 おそらく時期や積雪の具合によってだいぶ状況は違ってくるのだろうが、いくらガイドにロープで確保されていても、ここはちょっと恐怖を感じた。
 
 アイゼンの歯をガンガン蹴り込んで慎重にクリア。さらにトゲトゲの氷の斜面、そして緩やかな雪の斜面に着いて、ようやく少しホッとする。
 そして朝陽が昇ってくる。今日も綺麗に雲海が広がる。
 乾季とはいえ、本当に今回の山は天候に恵まれた。毎日がほぼ快晴無風だ。


 
 下山中、カワレツ夫妻とは擦れ違わなかったので、おそらく途中でリタイアしてしまったのだろう。
 ワイナポトシは一般的に登頂率50%、天候が安定した時期なら70%は登れるとペドロは言っていたが、天候が安定していても数10%は登れないのが事実。
 日中になるとクレバスが開いてしまうためガイドもタイム・リミットを設けているようで、「最も簡単に登れる六千m」と言われながらもけっこう厳しいものを感じた。
 
 デポしていたザックやシュラフを回収するためHCに立ち寄ると、昨日BCを飛ばして一気にHCまで上がってきたドイツ人のワクチンくんがいた。(名前がポリオなので、私は勝手にワクチンくんと呼んでいた。
 
 彼は今朝、夜半に起きた時点で頭痛がひどく、リタイアしたとのこと。
 やはり一泊二日は二泊三日の行程に較べて料金は安いが、高度順化という点で少し無理があると思う。
 
 通常はここHCから自分の装備をフルに担いでBCへ下山するのだが、私の頼んだエージェントでは、ここでもポーターが持ってくれる。
 何だか大名登山でスミマセン!

 結局、HC~頂上までは4時間半。
 現地ガイドブックで標準5時間半、ネットで他の日本人の記録を見ると6~7時間が普通なので、このタイムはキツかった!
 うーむ、エドめ!
 
 HC~BC間は雪もなく、まぁ安全なトレッキング・コースなので、ようやくエドのペースから解放され一人ゆっくり行く。
 ていうか最後は気が抜けたのか、軽荷なのにもうヨレヨレ。アドレナリンが切れたのか、高度の影響と疲れは少し時間を置いてからガクンとやってくる。
 しかし、昨年は謎の膝痛で、一時は山はおろか日常生活でも支障をきたしていたのに、よくぞここまで復活したものだ。
 自分の足ながら誉めてやりたい。

 
 
 BCに着くとカワレツ夫妻と再会。「Ohー!」と言って握手を交わす。
 聞くと、やはりあの標高5,600mの段差の所で奥さんの方がギブアップし、結局二人してリタイアしてしまったそうだ。
 私とアレックスは登頂できたと言うと「やはりあなたたちはスゴイよ。」と自分の身内のように喜んでくれた。
 Mr&Mrs.Kawaletz、頂上まで一緒に行けなかったのは残念だけど、でもあなたたちのチャレンジはきっと二人の素晴らしい思い出になったんじゃないかな。
 彼らも悔しいというより、むしろ清々しい顔をしていたように思う。
 
 ラパスまでは例のスペイン・ペアも一緒に乗せてエドの4WDで帰る。
 エドは誠実で人柄もいいのだが、英語があまり話せず、スペイン人が一緒だと自分の客そっちのけで自分たちの話に没頭してしまう。
 まぁこっちも疲れてるからいいんだけど、国際ガイドでエージェントの代表なんだからもう少し英語を勉強した方が良いのでは?
 その点、ペドロの方がローカル・ガイドなのに英語は堪能、サービス精神旺盛で好ましかった。
 
 そして、三日振りにホスタル・アウストリアに到着。
 因みに「地球の歩き方」にそう書いてあるのであえて「アウストリア」と表記しているが、現地に住むエドは普通に「オーストリア」と発音していた。
 
 最後の二泊は身体をゆっくり休めたいと思い、奮発してシングルのスーペリア・ルーム。
 と言っても違いは、大型TVとベッドがWサイズ、大きなクローゼットがあるだけで料金は80Bs/泊。(約1,200円)
 まぁドミトリーに較べればロビーに近い分Wi-fiの通りが良く、荷物を大きく広げられるので楽と言えば楽だが。
 
 自室で一休みした後、夕方からサガルナガ通りへ足を運んで、家族への土産などを物色。
 夜はまたホテル隣のチャイナ・レストランでお馴染みトルーチャ(鱒のフライ)炒飯とする。
 ここは中華料理店のくせになぜかスープらしき物がないので飲み物に迷っていると、店のオバさんがレモネードを勧めてくれた。
 
 で、出てきたのが明らかにこちらの水を使ったヤツで、怪しげに濁っている。
 もう山も終わったことだし、ええい、ままよと飲んでみたが、意外と美味しい。
 幸い、その後も腹を下すこともなかった。
自分もずいぶん強い大人になったものだ。

「ワイナポトシ 6,088m - 2016年の記録」 5分37秒



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4 コメント

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Unknown (ぴょん太郎)
2016-10-01 13:33:31
登頂おめでとうございます。そして、5大陸ピークハントおめでとうございます。自分の事のようにうれしいですよー。
その後、胸の違和感は大丈夫ですか?5000メートルを連日登頂し肺に負担がかかりびっくりしてしまったんですかね?

そうなんです。海外のガイドってペース激速ですよね。僕もオーバーペースでガンガン行かれこちらはオーバーヒートして危うく撤退しそうになってしまいました(笑)

記事を読む限り、最も登りやすい6000メートル峰ではないですね!登頂できるかわからないが最も挑戦しやすい6000メートル峰といった感じでしょうか?
ネットで調べる限り、結構な方が途中撤退してますし、やはり山はそんなに甘くないですね。
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Unknown (現場監督)
2016-10-04 00:19:01
 ありがとうございます。
 違いのわかるぴょん太郎さんにそう言われて、こちらも嬉しいです。
 五大陸は別に狙っていたわけではなく、今回はここへ行ったんだから次回は全然別の所へと考えているうちに自然と行先が散らばっただけでして・・・。
 でも小学校の頃、地図帳で見て憧れだった辺境の地へ、気がついた時には足跡を残せたというのは、何とも感慨深いものがあります。
 また現地ガイドの世話にはなりましたが、それでも日本のエージェントに頼らず、全て個人で現地とコンタクトを取り手作りの遠征ができたことに満足しています。

 ワイナポトシはお金は安いしアプローチも短いし、六千m峰の中では格段に取り付きやすい山ですが、山としては体力、技術共も必要だと思います。
 そちらのエルブルースの記録が勉強になりました。
 
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初めまして。 (坂本)
2017-01-18 00:08:27
ワイナポトシ登頂おめでとうございます。
私も来月ワイナポトシに行こうと思ってます。
横パンにもよく行くので、もし横パンで機会があったら直接話を聞かせていただけないでしょうか?
突然の勝手なお願いですがよろしくお願い致します。
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喜んで。 (現場監督)
2017-01-18 22:23:41
坂本さん、こんにちは。
来月ですか。すぐですね。
横パンでももしかしたら拝見したことがあるのかもしれませんね。
今月は仕事がやや忙しく、またいつも混んでいるので横パンに行く日を決めていないのですが、都合がつけばそちらに合わせます。
とりあえずメールでもいただければ。私の情報で良ければ惜しみなく提供させていただきますよ。
kuoutdoor@yahoo.co.jpまで。
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