万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

民主党の中国重視は経済にマイナス?

2008年01月19日 18時45分35秒 | アメリカ
米大統領選の最大テーマは経済に――フィナンシャル・タイムズ(フィナンシャル・タイムズ) - goo ニュース

 外交政策を見ますと、クリントン議員をはじめとして、アメリカ民主党の候補者は、中国重視を打ち出しています。この中国志向は、アメリカ民主党の伝統なのでしょうが、大統領選で経済が最大のテーマとなるとしますと、中国に対する妥協的な態度は、アメリカ経済にとりましてマイナス要因となるかもしれません。

 第1に、中国のドルに対する元安政策は、アメリカの対中赤字を悪化させる原因となっています。現共和党政権にあって、再三にわたり元高是正を求めているにも拘わらず、中国政府は重い腰を上げようとはしませんので、親中政権であれば、なおさらのことです。

 第2に、中国の経済成長が維持され、より高度な性能を持つ製品も安価で輸出されるとしますと、アメリカに失業問題をもたらします。

 第3に、中国側の外資規制を残しながら、政府系ファンドといった中国資本の無制限な流入を許しますと、アメリカ企業の多くが買収される可能性があります。

 第4に、WTOなどの国際舞台においても、自らを途上国と位置づける中国の主張に耳を傾けるとしますと、自由貿易交渉のこれ以上の進展は望めないことになります。

 これらの他にも、民主党が財政拡大政策を実施するとしますと、国債発行額が増加し、中国政府の米債保有量を増やすことになりましょう。

 以上の中国脅威論は、実のところ、80年代の日本脅威論と大凡一致してしまい、何ともきまりが悪い気がいたしますが、中国には、当時の日本にはなかった政治力もあります。民主党は、今後、この政治と経済との利益背反に対して、どのような回答を示すのでしょうか。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする