万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ウォール街と中国―行き過ぎたG2の自由?

2009年09月14日 14時52分02秒 | 国際経済
米国車など反ダンピング調査 中国、セーフガード対抗か(朝日新聞) - goo ニュース
 サブプライム・ローン問題を発端として発生した金融危機は、ウォール街の”行き過ぎた自由”が原因と再三指摘されてきました。その反省から、”自由にも規律が必要”とする認識が広がることになったのですが、もう一つ、重大な”行き過ぎた自由”があるように思うのです。それは、莫大な貿易黒字を生み出している中国の輸出政策です。

 かつてイギリスは、産業革命の強みを生かし、安価な工業製品を世界市場に輸出することで、七つの海を支配する大英帝国を築きあげました。自由貿易体制と工業生産力の結合こそ、イギリスを世界帝国に押し上げた原動力であったのです。さて、過去の事例を現在に当て嵌めてみますと、イギリスの座には、中国が座りそうです。今では、中国は、”世界の工場”であり、”世界の銀行”になりつつあるのですから。それでは、19世紀のように、圧倒的な輸出競争力を武器にして、中国が”世界帝国”を築くことを、他の諸国は黙って”なすに任せる(レッセ・フェール)”のでしょうか。

 WTOの加盟国である限りは、競争を歪め、市場の自律的調整力が働くように、操作的な為替は許されるべきではありません。G2を震源とする国際経済の歪みを正すためには、安易な政治的妥協に陥りやすい二国間交渉よりも、公正で公平な貿易に向けてのルールや制度作りが必要なのではないかと思うのです。

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