万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

自国民殺戮―内政干渉が許される条件

2011年04月26日 15時42分20秒 | 国際政治
シリア政府、市民に無差別発砲 南部に戦車部隊投入(朝日新聞) - goo ニュース
 自国民の生命、身体、財産を守るはずの政府が、自国民を無差別に虐殺した場合、他の諸国は、それを黙認してもよいのでしょうか。この問題は、まさしく正義を問うものに他なりません。

 国際社会では、戦後、内政不干渉の原則が成立したため、非人道的な行為を行った政府は、とかく、この原則を盾にとって、国際社会からの干渉を拒絶してきました。1989年の中国の天安門事件のように。しかしながら、21世紀に至った現在、自国民虐殺に対する包囲網は、確実に狭まってきています。そうして、天安門事件を引き合いに出して自国民虐殺を公言したカダフィ政権に対しては、国連安保理は、NATOの介入を是認する決議を成立させています。国際刑事裁判所もまた、実行力は伴わないものの、国家のトップであれ、人道に対する罪を犯した人物を訴追する道を開いているのです。この流れにあって、シリア政府の残虐行為を、国際社会が見過ごすとは思えません。

 国際社会に正義をもたらすためには、政府による自国民虐殺は、内政不干渉の原則から外れることが許される一つの条件と見なしてもよいのではないでしょうか(家庭内暴力に対する公的介入基準と類似する・・・)。自国民を無差別に虐殺すれば、国際社会からの干渉を受けるとなれば、如何なる政府にとっても、国民に対して暴力的手段に訴えるハードルが高くなると思うのです。

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コメント (6)
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