万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

AIIB債は誰が買うのか?

2015年04月14日 17時12分13秒 | 国際経済
 AIIBは、最終的には資本総額12兆円にも上るそうです。出資額の60%は、中国が支出するとも噂されておりますが、AIIBは投資銀行として設立されますので、実際の融資のための資金調達は、起債によることになりそうです。

 AIIBについては、組織上の問題点も指摘されておりますが、AIIB債についても素朴な疑問があります。それは、誰が、AIIB債を買うのか?というものです。おそらく、AIIBが各国の投資額に見合った額の債券を発行し、市場でAIIB債の購入者を募ることになるのでしょう。イギリスが、AIIBへの参加を表明した理由の一つは、シティを人民元現取引の中心地にしたいという思惑と並んで、AIIB債の起債地としての地位を確保したいのかもしれません。しかしがら、AIIBの優先的融資対象とされる”一帯一路構想”は壮大ではありますが、経済効果は未知数ですし、現在、中国経済も曲がり角にあります。融資の審査基準が甘ければ、麻生財務相が指摘したように、融資が焦げ付く可能性もあります。厳格な審査で知られるアジア開発銀行債(トリプルAの格付け…)でさえ、現地通貨建て債券の利回りがおよそ4~10%なのですが、日米が参加していないAIIB債の信用はさらに低く、起債に際しての利率が高くなることが予想されます。つまり、AIIB債は、ハイリスク・ハイリターンの債権となるのです。しかも、仮に、中国が人民元の国際基軸通貨化政策の一環としてAIIBを積極的に活用するとしますと、人民元建で債権を発行することも予想されます(人民元取引には制限があるにも拘わらず…)。

 果たして、このような状況で、AIIB債を積極的に引き受ける金融機関、並びに、投資家は存在するのでしょうか(一般の個人向けにも販売されるかもしれない…)。中国国内の内情を知る中国人富裕層がAIIB債の購入を渋るとしますと、それは、危険を知らせるシグナルとなるのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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