アメリカでは、議会両院での可決の後、トランプ大統領が速やかに署名を済ませ、香港人権民主主義法が成立しました。共和・民主の与野党とも同法案に対する立場に違いはなく、議会での採決に際しては上下両院共に凡そ全会一致で可決したのです。同法をめぐる政界の動きは、中国の暴力主義的な弾圧姿勢に対して批判的なアメリカ国民の世論をも強く反映させているのでしょう。大統領から一般市民に至るまで同法を支持するアメリカを前にして、中国側は、同法案の成立を内政干渉として報復を示唆しています。しかしながら、アメリカに打撃を与えるような具体的な報復策が存在するわけでもなく、中国側が窮地に陥っているのが実情のようです。
同法を機に米中交渉が決裂して困るのは、凡そ全ての中国製品に高率の関税が課される中国側です。トランプ大統領としても、人権や民主主義といった価値観の問題に敏感なアメリカ国民の世論が大きく反中に強く傾く中、何としても中国との合意を成立させる必要性は薄れてきています。中西部の農業地帯が同大統領の支持基盤であるたとえ、中国への大豆輸出がご破算になったとしても、健康食品としての大豆需要の世界的な高まりからすれば、代替輸出先を見つけることは不可能ではありません。また、部分合意であれ、米中交渉がたとえ成立したとしても、これを以って同法が廃止されたり、無効化される可能性はなく、中国を取り巻く状況が好転するはずもないのです。つまり、中国は、米中交渉を‘報復手段’として用いることはできないのです。
報復どころか、何よりも中国が恐れているのは、同法案に含まれている内容を一般の中国国民が知ってしまうことではないかと思うのです。何故、国民が知ることが脅威となるのかと申しますと、それは、香港を介して本土の共産党幹部や政府高官、そして、富裕層が、アメリカに秘かに資産や家族を移してきた実態が明らかとなるからです。同法には、香港において人権侵害等に加担した中国政府、並びに、香港政府の人物に対する制裁措置として、資産凍結や入国禁止等の制裁を定めています。同条項が最も効果的であるとも評されていますが、この条項は、国民に対しては共産主義者として清廉潔白なポーズを取り、‘虎もハエも叩く’をスローガンに腐敗撲滅に積極的に取り組みながら、その実、‘敵国’であるはずのアメリカに‘逃亡先’を準備してきた中国の特権階級の存在を浮き上がらせています。つまり、同条項の存在自体が、中国の共産党一党独裁体制の実態を暴露しているのです。
中国本土では、目下、政府当局が全国民を完全監視体制の下に置き、ネット情報をも徹底的に統制していますが、海外諸国にまでは同統制は及びません。実際に、日本国内での中国人居住者の数は200万人を越え、中国人訪日客も2018年には800万人を突破しています。日本一国だけでこの数ですから、アメリカをはじめ全世界には相当数の海外在住の中国人がいます。国内にあっては完璧な情報統制を実施していても、こうした人々は、自由に情報を入手できますので、中国本土の一般国民の間でも、情報が当局に筒抜けとなるスマートフォンやネットの使用を回避すれば、やがては口コミによって同法の内容が伝わることでしょう。
今後、中国は、国民の愛国心を煽り、アメリカを‘敵国’とすることで国内の体制を引き締めようとすることでしょう。しかしながら、‘外部に敵を造る’という使い古された同手法は、国民の現体制に対する不信感の高まりにより足元から崩れるかもしれません。この意味において、香港人権民主主義法の制定は、アメリカの妙手であったと思うのです。
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同法を機に米中交渉が決裂して困るのは、凡そ全ての中国製品に高率の関税が課される中国側です。トランプ大統領としても、人権や民主主義といった価値観の問題に敏感なアメリカ国民の世論が大きく反中に強く傾く中、何としても中国との合意を成立させる必要性は薄れてきています。中西部の農業地帯が同大統領の支持基盤であるたとえ、中国への大豆輸出がご破算になったとしても、健康食品としての大豆需要の世界的な高まりからすれば、代替輸出先を見つけることは不可能ではありません。また、部分合意であれ、米中交渉がたとえ成立したとしても、これを以って同法が廃止されたり、無効化される可能性はなく、中国を取り巻く状況が好転するはずもないのです。つまり、中国は、米中交渉を‘報復手段’として用いることはできないのです。
報復どころか、何よりも中国が恐れているのは、同法案に含まれている内容を一般の中国国民が知ってしまうことではないかと思うのです。何故、国民が知ることが脅威となるのかと申しますと、それは、香港を介して本土の共産党幹部や政府高官、そして、富裕層が、アメリカに秘かに資産や家族を移してきた実態が明らかとなるからです。同法には、香港において人権侵害等に加担した中国政府、並びに、香港政府の人物に対する制裁措置として、資産凍結や入国禁止等の制裁を定めています。同条項が最も効果的であるとも評されていますが、この条項は、国民に対しては共産主義者として清廉潔白なポーズを取り、‘虎もハエも叩く’をスローガンに腐敗撲滅に積極的に取り組みながら、その実、‘敵国’であるはずのアメリカに‘逃亡先’を準備してきた中国の特権階級の存在を浮き上がらせています。つまり、同条項の存在自体が、中国の共産党一党独裁体制の実態を暴露しているのです。
中国本土では、目下、政府当局が全国民を完全監視体制の下に置き、ネット情報をも徹底的に統制していますが、海外諸国にまでは同統制は及びません。実際に、日本国内での中国人居住者の数は200万人を越え、中国人訪日客も2018年には800万人を突破しています。日本一国だけでこの数ですから、アメリカをはじめ全世界には相当数の海外在住の中国人がいます。国内にあっては完璧な情報統制を実施していても、こうした人々は、自由に情報を入手できますので、中国本土の一般国民の間でも、情報が当局に筒抜けとなるスマートフォンやネットの使用を回避すれば、やがては口コミによって同法の内容が伝わることでしょう。
今後、中国は、国民の愛国心を煽り、アメリカを‘敵国’とすることで国内の体制を引き締めようとすることでしょう。しかしながら、‘外部に敵を造る’という使い古された同手法は、国民の現体制に対する不信感の高まりにより足元から崩れるかもしれません。この意味において、香港人権民主主義法の制定は、アメリカの妙手であったと思うのです。
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