万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ワクチン・リスクのADEとは?

2021年08月25日 13時19分33秒 | その他

 新型コロナウイルス用に開発されたワクチンの接種開始から一定の時間が経過した今日、その効果やリスクに関するデータも集まるようになりました。そして、目下、懸念されているのは、ワクチン効果の低下です。国ごとに報告が異なるのですが、イスラエルに至っては、感染予防効果のみならず、重症防止効果にも疑問符が付され、ADE(抗体依存性感染増強)さえ疑われる状況にあります。

 

 「ブレークスルー感染者」にあって重症化の防止効果があるとすれば、ワクチン接種による獲得免疫系が働いている証拠となりますので、ワクチン接種者にとりましては一先ずは安心材料となりましょう。その一方で、獲得免疫の記憶レベルは高齢者ほど低く、かつ、何れの年代にありましても、同免疫の持続性については不明です(中には短期間で獲得免疫が消滅してしまうウイルスやワクチンもある…)。また、今後出現する変異株に対する効果につきましても未知数ですので、米FDAによってファイザー社の遺伝子ワクチンが正式に承認されたとはいえ、慎重に推移を見守る必要がありましょう。

 

 そして、ワクチン・リスクとして当初から注目されてきたのが、上述したADEです。ADEとは、体内にあって抗体が生成されたが故に生じる現象であり、通常の感染であれ、ワクチン接種であれ、抗体の存在が引き金となります。もっとも、ワクチン接種では人為的に抗体が生成されますので、ADEは、ワクチンへの期待とは真逆の結果を招きます。いわば、ワクチン接種が’仇’となる恐ろしい現象なのですが、ADEのリスクについては、政府もメディアも積極的に報じないため、知らずして接種した人も少なくないようです。そこで、Wikipediaに掲載されている記事から同リスクについて簡単に纏めてみようと思います(専門家ではないので、間違えていたらごめんなさい…)。なお、参考としたのは日本語版なのですが、このページ、英文記事を邦訳したものであるにもかかわらず、英文版にはコロナウイルスに関する部分が見当たりません。おそらく、最近になって削除されたものとも推測され、そのことが、かえって同リスクの深刻さを浮き上がらせているようにも思えます。それでは、一体、ADEとは、どのような機序において発生するのでしょうか。

 

ADEの第一の経路は、不適切な抗体と感染ウイルスが結合した複合体が免疫細胞に入り込み、ウイルスを複製あるいは増殖させることによって発生します。言い換えますと、ここでは、免疫細胞が死滅する可能性のある免疫細胞への感染という、恐るべき事実がさらりと記されているのです(感染対象となる免疫細胞は、表面にFcyRIIを発現している単球、マクロファージ、B細胞、一部の樹状細胞など…)。もっとも、研究によれば、重症度とFcyRIIの遺伝多型との間には関連性が見られ、このため、同経路でのADEのリスクには個人差がありそうです。

 

特に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)、並びに、MERS-CoVおよびSARS-CoVが属しているβ-コロナウイルスについては、後二者に関する動物実験の論文を紹介しています。ウサギにMERS-CoVを感染させた場合、初回感染時、並びに、再感染時の両者において重篤な肺疾患が発生し、SARS-CoVについても、マウス、ハムスター、マカクを用いた実験にあっては、再感染時、並びに、ワクチンを接種させた後にあって肺損傷や急性肺障害を発症したそうです(フェレットの場合は重症肝炎が発生…)。その一方で、注目の新型コロナウイルスに関しては、一次感染の際に発生したサイトカインストーム等の誘発をADEに求める説が紹介されると共に、抗体が存在しない状態におけるヘルパーT細胞を含む免疫細胞への感染を強く示唆しています(抗体を介さないので、ADEとして理解されているのかは不明…)。

 

第2の機序は、抗原刷り込み(インプリント)、あるいは、抗原原罪と呼ばれるものです(なお、同記事では、積極的に第1と第2の機序を区別していない…)。変異種が発生した場合、従来株との間に免疫交差が生じて感染が防止されるケースがある一方で、従来株に対応して生成された獲得免疫、すなわち、メモリーB細胞が優先的に再活性化して、変異株への免疫反応が著し低下する現象が発生するケースがあるそうです。後者の場合にはADEが発生し、従来株への感染者、並びに、従来株用に製造されたワクチン接種者にとりまして、変異株の出現は未接種者以上に脅威となりましょう。

 

以上に二つの経路について述べられた後に、同記事では、抗SARS-CoV-2IgG抗体に関する臨床研究の結果を報告しています。同報告によりますと、重症患者は、Sタンパクに対するIgG抗体量が軽症患者よりも多く、発症から2から3週間後には大幅に過剰となるそうです。しかも、同抗体価が高いほど炎症マーカーの濃度が高い一方でリンパ球数が少ない、並びに、心筋障害との間にも正の相関が示されたとする報告もあったとされます。「この仮説にはさらに実験的な証明を必要とする」としながらも、「従って、おそらく、Sタンパク質を標的とする抗体は、免疫系に損傷を与えている可能性がある」として、ここでもさらりと恐ろしい結論を述べているのです。

 

皆様方は、同記事をどのように解釈されるでしょうか。コロナワクチンにつきましては他にも様々なリスクが指摘されていますが、Sタンパク質に反応する抗体自体がヒトの免疫システムに対して有害であるならば、今般のワクチン接種におけるADEリスクはやはり無視できないように思えるのです。


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