万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

国民国家体系の維持という課題

2010年02月14日 15時49分00秒 | 国際政治
【コラム】 「日米安保」がなかったらどうなってしまうの?(R25) - goo ニュース
 現在の国際システムである国民国家体系は、1648年のウェストファリア条約により成立したとされていますが、世界大にこのシステムが拡大するのは、第二次世界大戦後の植民地独立を待たねばなりません。国民国家体系は、国家間の戦争をもたらすとして非難されることもありますが、曲がりなりにも全ての国家が並列状態となり、それぞれの国民が、主権国家を持つに至ったことは、評価に値するのではないかと思うのです。国際法もまた、侵略を違法化する方向に歩むことで、国家の独立と権利を保障しています。

 しかしながら、現在、急激な経済成長を梃子とした中国の台頭は、ようやく成立した国民国家体系を揺さ振り、新たな”帝国主義の時代”に世界を引きずり込みつつあるように見えます。開国と共に、我が国は、国際社会の一員として国際法を遵守し、その規範を受け入れようと努力しましたが、現在の中国は、国際法を欧米のルールの押し付けと理解し、すすんで受け入れようとはしません。他国の権利侵害を躊躇せず、法の支配を否定する態度は、中国のみならず、ロシア、イラン、北朝鮮といった諸国にも共通しています。既存の国際秩序が重大な挑戦を受け、体系そのものが動揺する時、何が起きるかは、歴史が証明するところです。

 民主党政権の成立以来、日米同盟の揺らぎが幾度となく指摘されてきましたが、21世紀における日米同盟の意義とは、両国が協力して、覇権主義国家による国民国家体系の破壊を阻止することにあるのではないでしょうか。国際体系を維持するということは、我が国への侵略行為を防ぐと共に、脅威に晒されている全ての国家を守ることでもあります。国連が頼りにならず、アメリカ一国による国際秩序の維持が困難となった時代であるからこそ、同盟を基礎とした協力の下で、安全かつ安定した国際秩序の維持に貢献すべきと思うのです。一国では不可能なことも、複数の国が集まれば、可能となることもあるのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。
 

にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« シビリアン・コントロールと... | トップ | 波乱をもたらす中国の時代感覚 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
国民国家 (芋三郎)
2010-02-15 22:45:19
この稿、勉強になりました。

結果からみると「英米本位の平和主義を排す」という考え方が、第二次世界大戦後の植民地独立を促したともいえるのではないかとも思いますが。

現代においても「英米本位の平和主義を排す」という気分があるのではないのでしょうか。

返信する
芋三郎さん (kuranishi masako)
2010-02-16 09:57:11
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 少なくとも、植民地主義の存続をめぐっては、アメリカとイギリスのスタンスは対立していたように思います。第二次世界大戦後、アメリカは、むしろ植民地の独立を後押ししましたが、イギリスは、英連邦の維持を望んだからです。何れにしても、現在、国際体系としての国民国家体系の成立と国際法が、全ての国家の主権と独立を支えているとしますと、現在の体制は、まずは公平なのではないかと思うのです(チベットやウイグルなどに対する中国の植民地主義の問題は残していますが・・・)。
返信する

国際政治」カテゴリの最新記事