万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

移民リスクを自ら示すユダヤ人-イスラエルとユダヤ系アメリカ人

2024年05月08日 10時36分25秒 | 国際政治
 アメリカの大学にて全国的な広がりを見せている対イスラエル抗議デモを前にして、バイデン大統領は、ホロコースト追悼式典にて自らの政策方針を示すこととなりました。同式典の演説にて、バイデン大統領は、如何なる批判があろうとも、イスラエル支持の信念には揺るぎがないことを宣言したからです。かくして、ユダヤ人国家であるイスラエルが国際法にも人道にも反する残虐行為を行なったとしても、アメリカは、国家として同国を支える姿勢を鮮明にしたのですが、この現象、図らずも移民リスクを内外に知らしめる結果をもたらしたのではないかと思うのです。

 移民反対を掲げる共和党のトランプ前大統領とは対照的に、民主党のバイデン大統領は、常々移民に対して好意的であり、移民受け入れ政策を推進してきました。先日も、日本国に対して‘外国人嫌い’と発言して物議を醸しています。移民歓迎は民主党の党是でもあり、移民こそ経済成長の原動力として捉える故なのですが、安価な労働力の利用という‘経営者’的な視点からしますと、移民によるコスト削減は利潤の源泉ではあります。

その一方で、経済に特化した一面的なメリットは必ずしも政治・社会的にもプラスに作用するとは限らず、多面的かつトータルで見ますと、移民の増加をデメリットが上回るリスクと見なす国民も少なくありません。言語も生活習慣も、そして、時にして道徳・倫理観も異なる移民の社会統合にはコストも労力も時間もかかりますし、‘国家内国家’の誕生や治安の悪化も懸念されます。しかしながら、世界経済フォーラムをフロントとするグローバリスト勢力は、その持てるマネー・パワーをもって宣伝工作をグローバルに展開していますので、一般国民の移民反対の声はサイレント・マジョリティーとなり、かき消されているのが現状なのです。

 今日、移民の経済的なメリット面ばかりが強調される風潮にあるのですが、今般のイスラエル・ハマス戦争、並びに、同戦争に関連して発生した一連の出来事は、移民推進の旗振り役であったユダヤ人自身が、自ら移民の危険性を証明したしまった観があります。何故ならば、マネー・パワーを発揮し得る特定の民族集団によって、国家権力が掌握される、あるいは、乗っ取られてしまう事例を示すこととなったからです。

 アメリカは、その建国の歴史からして移民によって造られた国です。WASPが主流であったものの、世界各地から新天地を求めて世界各地から移民が流れ込んできました。もちろん、移民の中にはユダヤ人も含まれており、ニューヨーク等を中心にユダヤ人コミュニティーを形成してきたのです(因みに、イギリスのヨーク市は、中世以来ユダヤ人墓地があったことで知られている・・・)。否、古来、自らの国家を持たない故にユダヤ人は貿易や金融事業に長けていましたので、アメリカへの移住は、自らの能力を存分に発揮し得る絶好の環境を得ることを意味したのです。この結果、あらゆる分野にユダヤ資本、人材、思想様式等が浸透し、マイノリティーの一つではありながら、アメリカの陰の支配者とも称されるまでその影響力を拡大させてきたのです。

 政治も例外ではなく、現バイデン政権の顔ぶれを見ても、ユダヤ人として親イスラエルを公言しているブリンケン国務長官に象徴されるように、ユダヤ系人脈がアメリカ政界に深く根を張っていることが分かります。政界におけるユダヤ・パワーは、当然に対外政策にも強い影響を与えており、今般のバイデン大統領の断固たるイスラエル支持の姿勢も、ユダヤ勢力の意向に沿ったものであることは明白です。言い換えますと、アメリカの現状が示しているのは、最もマネー・パワーを発揮し得る特定民族が内外の政策を決定し、他の国民を統制し得る‘支配民族’となってしまうという由々しき現実なのです。

 もちろん、資本等の市場開放により、マネー・パワーが国境を越えて押し寄せ、世界権力のコントロール下に入ってしまう状況は、日本国の今日の政治現象としても見られるのですが、今日、日本国を含め、多くの諸国は移民が齎す政治的リスクについて真剣に取り上げようとはしていません。アメリカの今日は明日の日本国かも知れず、マネー・パワーのみならず、中国等の政治・軍事的パワーを有する国を出身国とする移民の増加が、安全保障上の重大なリスクとなる未来も予測されるのです。しかも、イスラエルのようにジェノサイドをも厭わない国であれば、日本国民は、その蛮行を批判したり、糾弾することも出来なくなりましょう(良心の自由が失われる・・・)。アメリカに見られるイスラエルとユダヤ人との関係、並びに、移民国家におけるユダヤ人のマネー・パワーの問題は、理想と現実との乖離、即ち、移民政策の欺瞞をも暴いているように思うのです。

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