万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

東京五輪中止・延期は検討すべきでは?

2020年02月14日 12時34分05秒 | 国際政治

 昨日、夏季に予定されている東京五輪に関して、国際オリンピック委員会と大会組織委員会との間で事前会合の場が都内で設けられたことから、両者による記者会見が行われました。この席で、組織委員会側の森喜朗会長は、新型コロナウイルス肺炎による東京五輪の中止・延期は検討されていないと説明しています。しかしながら、本当に大丈夫なのでしょうか。

 森会長は、ネットやSNSなどで東京五輪の中止説が蔓延していることに憤慨しているらしく、‘デマ’という言葉を頻繁に使いながら、同説の打ち消しに躍起になっておりました。おそらく、開催が不安視されている中、国民の動揺を抑え、不安感を取り除きたいと考えたのでしょうが、むしろ、逆効果のようにも思えます。

 不安が増す理由は、端的に申しますと、五輪の開催による感染拡大のリスクが極めて高いからです。本日、同ウイルスによる国内初の死亡例も報じられており、日本国内での感染者数は増加傾向にあります。最初の感染報告は、武漢からの中国人団体観光客を乗せた観光バスの運転手並びにバスガイドの方々でしたし、今なお感染者数が増え続けているダイアモンド・プリンセス号は豪華客船です。80代の女性とされる最初の死亡例も、親族の一人が感染の陽性反応を示しているタクシー運転手であったそうです。何れも’観光’や’交通’が関連しています。

これらの事例からしますと、新型コロナウイルスは、不特定多数の人々が比較的密封性の高い空間を長時間共有する場合、非常に強い感染性を示しているようです。空気感染は確認されていないとされますが、感染例からは、その可能性は否定できず、また、当然にオリンピックの会場は、感染の適性条件を満たしていると言わざるを得ません。全世界から多数の人々が人口密度の高い都市部に集まり、交通機関及び宿泊施設を利用し、試合会場に詰めかけて数時間の間、共に観戦するのですから、新型コロナウイルスの拡散には最適の環境です(応援に熱が入れば、飛沫感染も拡大)。団体競技であれ、個人競技であれ、選手たちもまた大半がチームで纏まって行動しますので、観客以上に感染リスクは高いかもしれません。

このように、オリンピックでは、開催期間中には中国を含めた全世界の諸国から選手や観戦者が集い、また試合後、あるいは、閉幕後には全世界に向けて散ってゆくわけですから、パンデミックを引き起こしかねないのです。実際に、新型コロナウイルスの感染リスクを回避するために、様々な国際イベントが既に中止されています。こうした諸点を考慮すれば、IOC並びに組織委員会の危機意識や危機管理の低さにこそ、不安を感じるのです。況してやオリンピック開催中、そして、開催後に‘如何なる事態が生じようとも、東京五輪の開催は決行する’という強い決意での発言であれば、一層背筋が寒くなります。

本来であれば、五輪の精神に鑑みれば、IOCは、人類のために現実を直視し、最悪の場合にどのように対応するのか、予め協議しておくべきだったように思えます。最低限、選手、並びに、観客の両面において中国の参加については見送りの方向で検討されるべきでしたし、開催が中止、あるいは、延期となる場合の条件についても説明すべきでした。例えば、新型コロナウイルスの毒性や感染力等について新たな事実が判明した場合とか、日本国内での感染者数や死亡者数、あるいは、世界規模での感染の広がりのレベルなど、予め判断基準が公表されていれば、大会関係者のみならず、日本国民も中止や延期に向けた準備に迅速に取り掛かることができます。むしろ、早急に中止・延期準備委員会を設立し、判断に必要となる情報収集に努めるとともに、実際に中止・延期になった場合の段取りを決めるなど、万が一に備えた方が主催者側としての責任を全うすることができましょう。‘東京五輪の中止・延期は検討されていない’と大見えを切るよりも、これらの可能性を率直に認め、中止や延期となる要件等について詳細に説明した方が、余程、日本国民のみならず、五輪に関心を寄せている全世界の人々を安心させるのではないかと思うのです。

 

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日本政府のクラウド発注問題―情報の支配力

2020年02月13日 14時05分29秒 | 日本政治

 情報化時代を迎えた今日、誰もが情報収集並びに情報管理の重要性を、日々痛感させられております。そしてこの問題は、支配の問題でもあります。米系のGAFAや中国系のBAT等による情報独占が今日問題視されるのも、情報を握る者が経済全体を支配するリスクがあるからです。そして、こうした民間企業、並びに、官民が一体化した企業が情報を独占的に扱う権利を獲得すれば、当然に、政治的支配の問題も提起されます。この点に鑑みますと、今般、日本国政府が、各省庁に共通する基盤システムのクラウドについて、アマゾン・ウェブ・サービスへの発注の方針を固めたとするニュースは、一般の日本国民にとりましては不安材料となりましょう。何故ならば、基盤システムには、人事・給与や文書管理などが含まれているからです。

第1の懸念は、人事や給与に関する情報は、それがバックドアによるものであれ、ハッカーによるものであれ、仮に外部に漏れることともなれば、外部者が日本国政府の全ての配置構成が一目でわかるようになる点です。例えば、どの省のどの部局のどのポストに誰が配置されているかを外部の者が知ることができれば、その外部の者は、自らの利益に関わる職権を有するポストに働きかけ、自己に有利な方向に政策を誘導しようとするかもしれません。合法的なロビー活動のみならず、違法な贈収賄も増えるかもしれないのです。

さらに、仮に情報を握る者がその力で日本国を人事面で支配しようとすれば、日本国の官公庁の人事権そのものを掌握しようとすることでしょう。内部情報をリアルタイムで入手できるのですから、政府の組織図と自らの影響下に置いている公務員リストを照らし合わせ、自らの配下にある人物には高位のポストと高額の報酬を与える一方で、不都合な人物を冷遇する、あるいは、ポストから排除するかもしれません。

また、日本国政府は、データセンターを国内に置くことをクラウド発注の条件としていますが、その管理は、一体、‘誰’がするのでしょうか。外部者によるデータ管理の懸念が第2の問題点です。文書管理を外部事業者のシステムに依存することになれば、上述した人事に関する情報以上に重要な情報も、外部に筒抜けになります。基盤以外の各省のクラウド・システムについては、アマゾンに限定せず、各省の判断に任せるとしています。しかしながら、防衛省、外務省、経済産業省といった対外的な関係から機密性の強い情報を扱う省庁において機密が保持されていたとしても、基盤システムとは中枢システムでもありますので、各省庁レベルで機密化されている情報も、政府中枢に上がった時点で漏洩の危機に直面します。データセンターは、クラウドを提供するアマゾンの管理下にあるのでしょうから、日本国政府は、一部であれ、自らの国家に対する情報管理の権限をアマゾンに付与したこととなります。

第3に、そもそも、アマゾンへの発注の決定プロセスがあまりにも不透明です。この件については、2月12日付の日経新聞の朝刊一面で初めて目にしたのですが、一般の国民には何らの事前の情報提供も説明もなく、ましてや、総選挙の政策綱領に挙げることもなく、アマゾンへの発注が既定路線化されています。政府の情報管理の重要性を考慮すれば、政府クラウドの海外事業者への発注は、電電公社、国鉄、郵政、そして、目下、国民の多くから懸念が寄せられている水道事業の民営化に勝るとも劣らない重要な選択です。仮に、日本国の政府クラウドの分野を海外事業者に開放するならば、国民にその是非を問うべきです。また、競争入札が行われた形跡もなく、アマゾンとの随意契約であるとしますと、どこかで‘誰か’が日本国政府に圧力をかけた、あるいは、有力政治家に便宜を図った可能性も否定はできないのです。

第4に指摘し得る点は、政府は、常々日本企業のIT分野での競争力強化と底上げを訴えてきましたが、コストばかりを基準に委託事業者を決定しますと、当然に、GAFAといった規模の経済を存分に発揮できるIT大手が受注してしまいます。これでは、日本企業はIT分野において遅れをとるばかりであり、大手との間の格差は広がるばかりです。産業政策の一環と考えれば、多少コスト高であったとしても、せめて自国企業に発注した方がよほど国民も安心しますし、日本経済の発展にも資するのではないでしょうか。

今日の日本国政府を見ておりますと、言行不一致な面が多々あります。保守政権のはずが、日本国の弱体化を加速させているようにも見えるからです。他の諸国では既にIT大手の支配力への警戒感が強まり、各国政府共に抑制へと動いているにも拘わらず、日本国政府のみがこの‘グローバルな流れ’に逆行しているかのようなのです。日本国こそ、米中両大国の狭間で苦しむ中小の国家を代表し、巨大恐竜が跋扈する弱肉強食の世界から多様な生物がそれぞれの個性を生かしながら共生し得る、真の意味での多様性のある世界への転換に努めるべきであり、その意味においても、外部者による支配の問題と直結しかねない政府クラウドの分野にあっては、自国主義を‘グローバル・ルール’とすべきよう訴えるべきではないかと思うのです。

 


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生物兵器説否定論への素朴な疑問

2020年02月12日 15時40分47秒 | 国際政治

 本日の東洋経済のオンライン版に、中国の独立系メディアの‘財新’の記事として「新型コロナウイルス「生物兵器論」は本当なのか 専門家見解「人工で製造することは不可能」とする記事を紹介しておりました。同ウイルスには、生物兵器用に遺伝子操作を加えたウイルスとする根強い生物兵器説があり、本ブログでも、その可能性について再三にわたり指摘しております。このため‘不可能’という文字に思わず反応してしまったのですが、本記事を読みましても、生物兵器説は否定しきれないように思えるのです。

 同記事は、財新の記者である 楊睿、馮禹丁、趙今朝の三名の中国人によるものであり、独立系メディアとはいえ、中国政府寄りのスタンスで執筆された記事であることは容易に推測されます。論旨は、アメリカのオハイオ大学の獣医予防学の王秋紅教授による「現在、遺伝子配列がすでに公表されています。この配列の分析から、ウイルスが人工的に製造されたことを示す箇所は見つかりません。実験施設から流出したものである可能性はないのです。完全に自然界のウイルスです」という主張に凝縮されています。つまり、新型コロナウイルスの遺伝子配列からは、人工的な遺伝子操作の痕跡はなく、疑惑の目が向けられてきた武漢の中国科学院武漢ウイルス研究所から漏洩したものではないと述べているのです。しかしながら、本記事を読みますと、新たな問題点も浮かび上がってきます。

 人工ウイルス説に関する科学的な証拠に基づく真偽については、まずは、新型コロナウイルス(2019-nCov)の遺伝子配列において遺伝子操作の痕跡の有無が重要となることは言うまでもありません。この点については、アメリカのペンシルバニア大学医学部の副研究員である李懿澤のインタビューとして、遺伝子挿入に際して配列のつなぎ合わせに際して使用される人工酵素であるエンドヌクレアーゼが見つかっていない点を証拠として挙げています。確かに、現段階のリバースジェネティクスにあってエンドヌクレアーゼを必ず使用し、かつ、同ウイルスの遺伝子情報を完全に解析した結果、同酵素が全く発見されなければ、新型コロナウイルスの人工ウイルス説は科学的に否定されます。

 しかしながらその一方で、同記事では、上記武漢の研究機関では、遺伝子の改造により機能獲得性研究が為されている実態を伝えています。実験室にあってSARSウイルスと中国馬蹄コウモリのウイルス(SHCO14-CoV)との間のキメラ・ウイルスが既に生成・同定されており、既に人工ウイルスが作成されているのです。1月22日には、北京大学、広西漢方薬大学、寧波大学、および、武漢生物エンジニアリング学院の研究者が、新型コロナウイルスは、コウモリのコロナウイルスと起源の未知なコロナウイルスによって作られた人工ウイルスであると発表しています。仮に、エンドヌクレアーゼの検出によって簡単に遺伝子操作の有無が分かるならば、かくも多くの専門家が人工ウイルス説を唱えたのも不自然です。また、インドの科学者は、4つの挿入配列の発見から新型ウイルスはSARSとエイズの両ウイルスのキメラとする説を唱えましたが(現在では一時的にウエブから消えている…)、この説の根拠となったのも、エンドヌクレアーゼの発見であったものと推測されます。

 もっとも、同挿入配列にてついては、アメリカのワシントン大学 医学部・ゲノム科学部のトレバー・ベッドフォード副教授のツイッターを紹介して反論しており、挿入配列、特にHIVと一致したとする配列は他の生物種ともマッチするので、HIVに由来するとは限らないとしています。新型コロナウイルスがエイズの特性を有さないとしますと、それ自体は免疫系の破壊作用が備わっておらず、潜伏期(無症候期)における感染を心配する必要もないこととなり、人類にとりましては朗報なのですが、同氏が‘挿入配列’という遺伝子操作に用いられる用語を使っているところが気になります。

また、同氏は、新型コロナウイルスと96%のDNA配列が一致する雲南キクカシラコウモリのウイルス(RaTG13)が自然に変異した結果、人の呼吸器細胞に感染するようになったと推測しているようです(同説の第一報では、船山コウモリウイルスであった…)。ところが、同説に従えば、共通の祖先から枝分かれしてからわずか25年から65年の間に残りの4%に当たる1100個のヌクレオチドが変化したことになります。こうした大規模な変異は人工ではありえない、と‘中国科学院の生物情報学分野の研究者の1人’も天然説を支持していますが、むしろ、凡そ半世紀足らずでかくも大量の遺伝子変異が自然に起きるものなのか、素朴な疑問も浮かびます。むしろ、上述したキメラ・ウイルスの作成のように、人から人へと感染する機能を獲得するように、感染に関わる遺伝子部分をごっそりと切り取って人工的に他のウイルスに組み込んだと考えた方が腑に落ちるように思えるのです(雲南キクガシラコウモリのウイルスと中国馬蹄コウモリのウイルスのキメラ?あるいは、センザンコウに寄生するウイルスとのキメラ?)。

人工説については、日本国の研究機関を含め、他の客観的な立場にある専門機関による新型コロナウイルスの遺伝子配列におけるエンドヌクレアーゼに関する調査の結果等を待つこととなりますが、現段階では、‘不可能’と言い切るのは語弊があるように思えます(エンドヌクレアーゼが本当に発見されなかったのか、否かをめぐっては、第三者による検証が必要なのでは。また、エンドヌクレアーゼ以外にも、遺伝子操作を可能とする人工酵素などの媒体が開発されている可能性もあるにでは)。

また、人工説が否定されましても、生物兵器説が否定されるわけではありません。自然界の新種のウイルスをそのまま使用する場合もあるからです。私は専門家ではありませんのでウイルスに関する理解は間違っているかもしれず、本記事に誤りがありましたならば申し訳なくお詫び申し上げます。その一方で、未だ同ウイルスの正体につきましては謎が残る状態にあり、この不明な部分こそ感染拡大、防止、予防にも大きな影響があると推測されます。まずは、政治的なバイアスを避けるためにも、中国以外の諸国における科学的な解明を急ぐべきではないかと思うのです。

 


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ダイヤモンド・プリンセス号問題

2020年02月11日 12時42分44秒 | 日本政治

 新型コロナウイルスの感染者が確認されたため、ダイヤモンド・プリンセス号は横浜港に停泊したまま、乗客乗員共に同船内に閉じ込められた状態にあります。乗客乗員凡そ3700人の内、これまでのところ336人の検疫が実施され、70人もの多数の感染者が発生しています。その一方で、日本国政府は、既に症状が現れていたり、不調を訴えているなど、感染リスクの高い336人に対しては検査を行いましたが、それ以外の他の3000余名の全員の検疫は事実上不可能と説明しているため(そもそも、3000人程度で検査不能であれば、武漢レベルの事態となれば、日本国政府はお手上げになるのでは…)、無検査での上陸による感染拡大のリスクが高まっています。国際的にも関心が高く、WHOなども情報やデータ収集に強い関心を示しているようですが、感染リスクを最小限に抑えるような策は存在するのでしょうか。

 ダイヤモンド・プリンセス号は、日本国の三菱重工が建造した豪華客船であり(建造中に数度の火災に遭っている…)、かつ、現在の停泊地が横浜港であることから、同船舶は、‘日本の船’というイメージがあります。しかしながら、同船について調べてみますと、三菱重工に発注し、現在同船を保有・運営しているのは、P&O(the Peninsular and Oriental Steam Navigation Company)というイギリスの名門船舶会社です。1837年にイベリア半島の諸国、すなわち、スペイン並びにポルトガルとロンドンとを結ぶ海運事業から始まり、創業以来の主たる収益源は英国海軍省などを顧客とする郵便の輸送でした。その一方で、様々な事業に手を広げ、アヘン戦争後には中国とのアヘン貿易にも加わり、レジャー・クルーズ事業の先駆けとなったのも同社です。2000年にP&Oがリストラを実施した際に、クルーズ部門はアメリカのマイアミとイギリスのロンドンに本社を置くCarnival Corporation & plcに売却されましたが、同船の船籍はイギリスのままです。つまり、ダイアモンド・プリンセス号には同国の主権が及ぶと共に、乗客・上院に対する事業者としての企業責任は英米二元上場会社であり、世界最大のクルーズ客船の運航会社であるCarnival Corporation & plcあるのです。

 ダイヤモンド・プリンセス号がイギリス船籍であり、事業者が海外の民間船舶会社となりますと、同船の問題は、乗客の国籍が日本、アメリカ、中国といった複数に及ぶことに加え、関与する政府も複数となりますので、俄かに国際問題の様相を呈してきます。船籍国と実態との乖離が指摘されてはいるものの、国際法においては船舶内の空間は船籍国の‘領域’と見なされますので、イギリス政府も当事国の一国となり、また、Carnival Corporation & plcは、英米ダブル国籍の企業であるため、アメリカ政府の監督権も及ぶからです。加えて、乗客の国籍国もまた、自国民保護のために関与することでしょう(中国人乗客が最多なのでは…)。言い換えますと、同船の停泊地である日本国政府は(日本国の領域主権が及ぶ…)、イギリス政府をはじめ各国政府、並びに、事業主であるP&Oと協力して解決にあたる立場にあるのです。それでは、どのような解決方法が考えられるのでしょうか。

 新型コロナウイルスについては不明な点が多く、無検査で下船させますと、無自覚の内にウイルスをまき散らしてしまう無症候性キャリアを見逃してしまう可能性があります。また、一旦完治したように見えても、ウイルスが体内に潜伏するリスクもあり、長期的な影響を含めた同ウイルスの有害性を完全に把握するにはもうしばらく時間を要します。この間、全てのダイヤモンド・プリンセス号の乗員・乗客を船内に留めておくという方法もありましょうが、空調等によってさらに感染者が増加する恐れもありますし、精神的なストレスによる二次的な健康被害も想定されます。となりますと、‘何処の場所に、感染リスクゼロの体制で下船させるのか’という問題になるのですが、船舶であるために移動が容易であり、かつ、同問題が国際性を有する点が選択肢を広げる可能性もあります。

 例えば、幾つかを挙げてみますと、(1)英連邦の一国であり、かつ、P&Oが運営している航路の寄港地でもあるオーストラリアとイギリスの関係を生かし、まずは、オーストラリア政府が隔離地としているクリスマス島に全員上陸してもらう、(2)ダイヤモンド・プリンセス号が乗員・乗客の国籍国をまわり、それぞれの国の港に送り届ける、(3)P&Oに協力を要請し、同社が保有する他の船舶内に隔離施設を設置した上で、これらの船舶で乗客・乗員をそれぞれの国籍国に移送する、(4)乗員・乗客の国籍国に帰国支援を要請し、横浜港に向けてチャーター船(小型ジェット機やヘリコプター等も空輸も可…)を派遣してもらう…などです。

上記の案の他にもアイディアはありそうなのですが、日本国内での新型コロナウイルスの感染拡大を水際で防ぐべく、各国政府の国民に対する責任が重なる問題であるからこそ、国際協力という手法も試みてみるべきではないかと思うのです。


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NHKは中国の報道機関?ー新型コロナウイルス生物兵器説をデマと断言するNHK

2020年02月10日 13時11分22秒 | 国際政治

 昨日2月9日の午後9時より、NHKでは、‘緊急報告’と銘打って新型コロナウイルス肺炎に関する特別番組を放送していました。日本国内でも危機感が高まる中での放送であり、視聴された方も少なくなかったのではないかと思います。報道の自由が保障されている日本国ならではの独自の取材による事実の判明に期待したのですが、同番組、どこか怪しげなのです。

 特に驚かされたのは、同番組が、きっぱりと「生物兵器説はデマ」であると断言した点です。実のところ、同説をデマと決めつけたのは、私見の限りではNHKが唯一の報道機関です。SARSについても台湾の国家安全局長が生物兵器説を唱えたところ、中国の外交部報道官が激怒して否定したという一幕があったそうです。ところが、今般の新型コロナウイルスに関しては、その中国政府さえも押し黙っています。その一方で、状況証拠、並びに、同ウイルスの遺伝子解析等の科学的見地からしますと、生物兵器説の信憑性は高まるばかりです。こうした中でNHKが‘デマ’と言い切ったのですから、この見解を素直に信じる人はそう多くはないのではないでしょうか。

 そもそも、NHKには、正確なるファクトチェックをし得るほどの十分な情報や分析能力が備わっているとも思えません。おそらく、同ウイルスの生物兵器説については、日本国政府でさえ真偽の判断は困難な作業となりましょう。(もっとも、アメリカ政府から情報を得ているとすれば、日本国政府も真相を知っており、既に国立感染研究所において独自に同ウイルスの分離に成功していますので、自然界における突然変異の可能性を100%否定はできないまでも、真偽の判明は時間の問題であるかもしれない…)何故ならば、それは、絶対に外には漏らしてはならない中国のトップシークレットであるからです。そうであるからこそ、先に触れたようにSARSに際して生物兵器説が浮上した時に烈火の如くに怒って否定したのでしょう(人は本当のことを指摘されると怒るとも言う…)。

生物化学兵器禁止条約が存在しながら、それが純粋に研究目的を表看板としていたとしても、各国、並びに、国際組織が競うかのように生物兵器の開発に転用可能なウイルス研究を行っていることは紛れもない事実です。アメリカのハーバード大学の研究所から中国人が21種のウイルスを盗み出したのも事実であり、同事件が百歩譲って新型コロナウイルスと関連性がないとしても、この‘ファクト’を消すことはできません。SARS生物兵器説を提起したのが台湾の国家安全局長であったように、国家の防衛や安全保障を担う立場の人であれば、有事であれ、平時であれ、中国政府による生物兵器使用は当然にあり得るシナリオなのです。

 その流出は偶発的な事故であったとしても、新型コロナウイルスが生物兵器として開発された可能性が高いとしますと、NHKが敢えて‘デマ’と断言したのは、おそらく、WHOとも結託した中国政府の意向を受けてのことなのでしょう。折も折、中国では、情報を隠蔽してきた政府に対する国民の不満が高まっており、共産党一党独裁体制への批判にまで発展する様相を呈しています。こうした国内の状況に危機感を抱いたのか、国家中枢は世論誘導に力を入れるように訓示したとも伝わります。となりますと、NHKは、この中国からの指令に従ったとしか考えられず、日本国の公共放送ではなく、その実態は中国共産党、あるいは、中国電視台の日本支部なのかもしれません。

 真偽が不明な状態では、生物化学兵器説など、意図的、あるいは、明らかなる虚偽を除いて、断片的な事実から推測・構成された説は、無防備な人々への善意の警告とはなっても‘デマ’とはなり得ず、逆に、こうした推測説を‘デマ’と断言した側こそが、‘デマ’の発信源ともなりかねません。常々黒を白と言い含め、国民を騙してきた中国政府のように…。真偽が不確かな情報は、それが客観的な証拠に基づいて真偽が判明するまでは、敢えて断定せず、個々が様々な情報を突き合わせ、自らの常識や理性に照らして判断するしかありません。そして、言論の自由が保障されている国では、多くの人々が真実を求めて真偽を自由闊達に論じることができるのです。NHKによる新型コロナウイルス生物兵器説の否定は、公共放送の権威を以って自由な言論を封じようとした点において、同局に対する国民の信頼を著しく損ねたのではないかと思うのです。

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最悪を想定すべき新型コロナウイルス―健康保菌者のリスク

2020年02月09日 13時33分55秒 | 国際政治

 本日の報道によりますと、日本国内初の新型コロナウイルス肺炎の感染者となった奈良県のバス運転手の方が退院されたそうです。重い病から回復し、無事に退院することができたのですから、本来は、大変おめでたいお話なのですが、同ウイルスが生物兵器として開発された人工ウイルスであると仮定しますと、一抹の不安が脳裏をよぎります。

 人工ウイルス説において最も有力な説は、同ウイルスは、SARS等を含むコロナウイルス菌とエイズウイルスを組み合わせたというものです。つまり、両ウイルスのハイブリットにより、自然界ではありえない感染力も毒性も強いウイルスが出現したこととなります。しかも、エイズは、後天性免疫不全症候群という正式名称が示すように、一旦感染しますと完治することなく長期的に人の免疫システムを蝕みます(免疫細胞であるCD4陽性T細胞に取りついて減少させる…)。仮に新型コロナウイルスがエイズウイルスの特性を帯びているとしますと、その感染予防対策と事後的治療措置は、インフルエンザやSARSとは比較にならないほどの困難に直面することが予測されます

 エイズの死に至るまでのプロセスは、凡そ3段階に分かれています。第一期が急性感染期であり、この時期では、インフルエンザや風邪のような症状を示すに過ぎません。その後、数週間から一か月ほどで抗体が作られるようになり、無症候期に入ります。この期間にあっては、自己免疫性疾患に類似する症状が見られることはあっても、5年か10年は、無症状のままに日常生活を過ごすことができます。しかしながら、体内では、HIVの増加により徐々にCD4陽性T細胞が減少していますので、感染者の免疫システムが対抗しきれない時期を迎えます。この時が発症期であり、感染者の免疫システムは機能不全に陥り、HIV以外の様々な日和見菌にも容易に感染することで、死に至るのです。

 こうしたHIVの特徴を遺伝子操作によって誕生した新型コロナウイルスが引き継いでいるとしますと、たとえ発熱や呼吸困難といった症状が一旦治まったとしても、第一期の急性感染期である可能性があります。エイズの治療でも、CO4陽性T細胞が未だ少量であるうちに治療を開始した場合にはHIVは殆ど体内から検出されなくなりますが、リンパ節や神経中枢系には潜んでいるそうです。治療を中止すると再び増殖を始めるのですが、新型コロナウイルスのケースでも、感染者の体内に同ウイルスが潜伏している可能性があります。あるいは、新型コロナウイルスは、短期間で爆発的に増殖し、かつ、免疫システム破壊力が極めて強いことから、感染者の状況によっては無症候期を経ずして死に至るケースもあるのかもしれません。HIVの場合には、感染力が弱いために気を付けていれば感染を防ぐことができますが、新型コロナウイルスの場合には飛沫感染や接触感染のみならず、空気感染もあり得ます。
 
 ウイルスの保有者でありながら自らは発症せずに感染源となる健康保菌者(無症候性キャリア)は、19世紀にあって腸チフスの事例(チフスのメリー)からその存在が知られるようになったそうです。同ケースでは、健康保菌者を隔離する措置によってチフス拡大を防いでいますが(健康保菌者の数は、メアリー・マローンを含めてニューヨークで100から200名ほど…)、新型コロナウイルスのケースではその数は桁違いです。中国では、武漢を初めとした大都市で封鎖措置が採られているものの、完全なる新型コロナウイルスの予防法や治療法が確立するまでの間、都市、あるいは、国家そのものを隔離する、すなわち、全国境を封鎖する事態に至らないとも限らないのです(あるいは、保菌の有無を100%判別し得る完璧な検査により無感染が証明されない限り、中国からの出国を禁じる…)。また、日本国のように未だに感染者が少数な国でも、長期的対応を視野に、感染者の治療と生活支援を目的として、離島などの外部と遮断された場所を準備すべきかもしれません。
 
 新型コロナウイルスが、人工的なハイブリッドによって呼吸器感染症と免疫系感染症の二つの顔を持っているとしますと、前者のみを前提とした対処的な対応では、将来、甚大なる健康被害を招く恐れがあります。杞憂に過ぎなければよいのですが、そうとも言い切れないところが辛いところです。日本国政府も、同ウイルスの分析や人体に対する長期的影響の調査に努めるとともに、国民を護るために、最悪の事態を想定した長期的な対応の策定を急ぐべきではないかと思うのです。


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嘘は身を亡ぼす―李医師の死去が中国の体制崩壊を招く?

2020年02月08日 13時14分37秒 | 国際政治

 新型コロナウイルスの危険性をいち早く察知し、感染拡大を防ぐために警告を発した李文亮医師が、自らも同ウイルスによる肺炎に斃れることとなりました。中国では、同医師の死を悼む声が広がると共に、同医師をめぐる政府の一連の対応に対する批判も高まりを見せています。そして、この動きは、中国の一党独裁体制を崩壊に導く可能性を秘めているように思えます。

 中国政府は、常々、国家レベルであれ、地方レベルであれ、巧緻な情報操作を以って国民を支配しようとしてきました。高度なITを活用した先端的な情報・通信システムを全国に張り巡らしたのも、個々の国民を徹底監視し、情報統制を徹底したいからに他なりません。目的のためには手段を択ばず、自らにとりまして都合の悪い情報は隠蔽する一方で、世論誘導のためには偽情報を発表することも厭わなかったのです。かくして、中国では、虚実が逆転する異様な世界が出現したのですが、今般のコロナウイルス感染拡大は、この異常な状況が既に限界にきていることを示しています。

李医師の死去こそまさにこの中国の欺瞞性を象徴しております。国民の命を救おうとして事実を伝えた李医師が武漢当局から処罰を受ける一方で、政府当局による隠蔽や数字の改竄が対処を遅らせ、今なおも多くの国民の生命を奪っているのですから。今日ほど、政府の欺瞞が白日の下にさらされたことはなく、あらゆる情報統制が裏目に出る、否、自らの嘘を自らで暴いてしまっているのです。

例えば、中国当局は、当初、新型コロナウイルスは特に高齢者が罹患しやすく、重症化して死亡に至るのも持病を有する人と説明していました。しかしながら、李医師は34歳という若さであり、医師という職業からしますと深刻な持病があったとも思えません。また、集中治療室にあって呼吸が苦しい中でも、死の直前まで微薄に退院に向けた前向きな記事を投稿していたというのですから、その死にも謎が残ります。抗HIV薬が治療に有効であるとする説もあり、治療に最善が尽くされたかどうかも疑問なところです。あるいは、新型コロナウイルスは、年齢や健康状態とは何らの関連性もなく、かつ、現状では有効な治療法も見当たらない、全ての感染者に死をもたらしかねない極めて危険なウイルスであるのかもしれません。

また、中央政府側は、国民に広がる政府批判に敏感に反応し、恰も国民に寄り添うかのように李医師の英雄的な行動を讃えつつ、新型コロナウイルスの感染拡大の責任を武漢当局に転嫁しようと試みています。しかしながら、ここでも、情報統制者としての尻尾を見せています。報道によりますと、死の翌日にあたる7日には、同医師の死を伝える複数のハッシュタグが微薄の検索結果から消えたそうです。また、ユーザーからのコメントや投稿が削除されたり、ハッシュタグのランキングにも当局からの操作の痕跡が見られるそうです。こうした全国レベルでのネット統制は、中央政府からの指令なくしてあり得ません。つまり、ここに国民は、責任を地方政府当局に押し付けつつ、国民からの批判を封じようとする中央政府の狡猾な策略を見て取るのです。

国民の生命、身体、財産等を護ることは、政府の第一義的な役割です。今日の中国政府は、共産党一党独裁体制の維持、すなわち、自らの保身のために最も大事な責務を放棄し、国民を犠牲にしており、これが国民の目の前で明らかとなった時、国民の側が現国家体制を支持する理由は消えてなくなります。そして、中国共産党による支配の道具が情報統制であることが判明した以上、言論の自由を求める声が国民から挙がることは、当然すぎるほどに当然なことなのです。もはや、共産党支配には何らの大義もなければ、存在価値すらなく、むしろ、国民にとりましては危険な存在に成り果てているのですから(国民が政府に殺されてしまう…)。

‘嘘はばれたらが最後’であり、嘘を吐きとおすために後から辻褄を合わせようとすればするほど、見苦しい悪あがきともなります。新型コロナウイルスの蔓延に中国国民が心身ともに苦しむ中、中国という国に希望を見出すことができるとすれば、それは、言論の自由を求める国民の声がやがて政治的な自由を求める声となり、一党独裁体制崩壊をもたらす展開です。新型コロナウイルスの蔓延により死をも恐れぬ境地に至った中国国民が、一党独裁体制の醜悪さに耐えかね、本源的な自由を取り戻す機会となることを願うのです。


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中国での生産再開は難しい

2020年02月07日 13時29分51秒 | 国際政治

 例年であればとっくに春節の時期は過ぎているはずなのですが、新型コロナウイルス肺炎の蔓延により、中国では、延期に次ぐ延期により春節が明けず、長い冬の眠りに就いているかのようです。中国のみが季節が逆方向に移ろっており、首都北京でさえ人通りが少なく閑散とした光景が広がり、‘世界の工場’も休業状態にあります。

こうした中国における感染病の拡大は、同国のみならず、中国市場に進出した海外企業にも多大なマイナス影響を与えています。日系企業も例外ではなく、報道によりますと、2月下旬頃までには終息に向かうのではないかとする希望的観測はあるものの、同地での生産再開の目途はたっていません。しかしながら、異常事態とも言える今般の感染拡大の状況からしますと、長期的な生産停止の覚悟が必要なようにも思えます(そもそも、中国政府が稼働再開を許可するかどうか分からない…)。

中国は、1980年代に鄧小平氏の下で改革開放路線へと舵を切り替え、全世界から安価な労働力を武器に工場を積極的に誘致してきました。‘世界の工場’とは中国が世界最大の輸出向けの製造拠点となることを意味しており、米中貿易戦争の原因も同国の輸出志向の産業戦略にあります。トランプ政権による対中制裁により若干の減少が見られるものの、今日なおも中国の対米黒字は維持されており、製造拠点としての地位を保っているのです。日本国内でも、先端的なIT製品から日用雑貨品に至るまで中国製品で溢れています。しかしながら、今般の新型コロナウイルスの蔓延は、中国経済の強みが弱点になる可能性があります。

先に述べたように、グローバル時代における中国の製造拠点としての強みは、安価で豊富な労働力にあります。進出企業としても、自国で生産するよりは人件費を大幅に削減できますので、中国生産への切り替えは利益率を上げる有効な手段でした。今日では「中国製造2025」を掲げ、ITやAIの分野でのトップを狙い、産業の高度化に邁進しているとはいえ、未だに労働集約型の産業から抜け切れている訳ではありません。中国における人件費の上昇と中国国民の購買力の向上により、中国は、‘世界の工場’から‘世界の消費地’に変貌しつつあるものの、この移行も、海外企業にとりましては、中国市場向けの現地生産の拠点としての重要性を増しこそすれ、製造拠点としての魅力は色褪せていないのです。

ところが、今般のコロナウイルス肺炎は、多数の人々が空間を共有する閉鎖空間において高い感染率を示しています。仮に、中国において工場の稼働が再開されたとしますと、まさしくこの最も感染リスクの高い状況が発生します。精密機器の製造現場では、ちりやほこりを避けるために頭部からつま先までの全身を作業服で覆って作業しますが、それでも、微小なウイルスの感染まで防げるかどうかは分かりません。また、作業現場にあって感染を防げたとしても、休憩や食事の時間帯では従業員の人々は公共スペースに集まることとなります。況してや、日用品などを製造する一般の製造現場であれば、衛生管理が杜撰な状況下で一日の内の8時間程度を同じメンバーが空間を共にして働くことになるのですから、感染リスクは格段に上がることでしょう。つまり、工場の稼働再開は、春節後の公共交通機関を介した感染リスク以上に、新型コロナウイルスの感染を拡大させる恐れがあるのです。

このように考えますと、中国における製造再開は、当面の間は諦めざるを得ないかもしれません。そしてそれは、中国に進出した海外企業に対して、中国頼りの現状を見直し、如何なる状況下にあってもサプライチェーンの迅速な組み換えを可能とする柔軟なシステムへの転換を促すことでしょう。既に日系企業の多くも東南アジアといった他の諸国への代替生産に切り替えているそうです。あるいは、産業の空洞化に直面している諸国にとりましては、産業を自国に回帰させるチャンスとなるかもしれません。新型コロナウイルスの感染拡大にも拘わらずアメリカでは株価が上昇しており、むしろ、内需を育てるという意味ではプラスの作用をもたらす可能性すらあるのではないかと思うのです。


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習主席国賓来日は無理では

2020年02月06日 11時19分52秒 | 国際政治

 中国では新型コロナウイルス肺炎による死者が500人を超え、感染者数も増加の一途を辿っています。全国各地の都市が封鎖されるという非常事態にありながら、中国政府は、4月に予定されている習近平国家主席の国賓待遇による来日については予定を変更するつもりはないようです。しかしながら、日中双方の現状からしますと、同訪日、やはり無理なのではないかと思うのです。

 まずは、中国側の事情から見てゆくことにしましょう。新型コロナウイルスの初期対応の不備は、習国家主席を指導者として仰ぐ個人独裁体制に綻びをもたらしており、同主席が誤りを認めるという異例の事態に発展しています。神格化を以って全国民の前に君臨してきたさしもの習主席も、今般の感染症の拡大により‘化けの皮’が剥がれてしまった感があります。全ての行動が裏目に出ており(もしかしますと、今般の感染拡大を国民監視体制の強化に利用したかったかもしれない…)、今では、失敗は部下に責任をなすりつけ、手柄は横取りしようとし、いざという時には頼りにならず、自らのメンツのためには他者を犠牲にする、悪しき指導者の典型として、国民の目には映っていることでしょう。

国賓訪日を是非とも実現したい習主席の思惑は、日本国を国賓待遇で訪問して熱烈な大歓迎を受け、経済面でも一帯一路構想、否、中華経済圏への参加の‘約束’を取り付けることで、新型コロナウイルス問題で失った権威を取り戻りもどすことにあると推測されます。大国の指導者として歓待され、笑顔を振りまきながら日本国民と交流する姿が全国に報じられれば、中国の一般国民は、巧みな外交力に習主席を見直すかもしれません。失地回復の千載一遇のチャンスなのですから、感染病が発生したからこそ、逆に日本国を訪問するインセンティヴが高まったともいえましょう。
 
しかしながら、常に自分を中心にしか物事を見ることができない独裁者にありがちな失敗を、ここでも習主席は繰り返すように思えます。民意を読み誤るという…。一般の中国国民の多くが新型コロナウイルスの脅威の前に不安な日々を過ごし、生活物資さえ十分に手に入れることができず、不満が鬱積している状況にあります。たとえ日本国側からの招待であったとしても、習主席の訪日は、国のトップが苦しむ国民を放っておいて外国で‘遊んでいる’とする印象は拭えません。習主席の人心掌握の作戦は裏目に出て、主席自身、さらには一党独裁体制に対する批判が一層高まることも予想されるのです。同リスクを側近等が習主席に忠言し、その意味を習主席が理解するとすれば、自己保身のために同主席は今春の訪日は諦めることでしょう。

それでは、日本国側には、習主席訪日中止にどのような理由があるのでしょうか。もとより日本国民には、チベットやウイグル等、並びに、ITにより国民徹底監視体制を敷いている人権侵害国家、中国という国そのものに対する強い反感があります。自由、民主主義、法の支配といった価値観を共有しておらず、国賓として来日したとしても、心から習主席を歓迎する日本国民は僅かに過ぎないことでしょう。そして、数千人規模の大訪日団を率いるとされる同主席の訪日は、新型コロナウイルスの日本国内における感染拡大のリスクを高めることは言うまでもないことです。

その一方で、日本国政府は、中国側と同様に、渋々中止に追い込まれる立場にあります。おそらく、日本国政府が、中国からの全ての渡航者に対して入国措置に踏み切れない理由は、この措置を採った途端、習主席の訪日が泡と消えるからなのでしょう。特に中国との関係の深い自民党の二階幹事長や連立相手の公明党といった媚中派は、日本国民を犠牲にしても習主席の訪日を実現させたいはずです。しかしながら、国民の命と健康を最優先にして護るのは、誰もが認める第一義的とも言える政府の責務です。今般の局面では、日本国政府は日本国民から、‘日本国をとるのか、中国をとるのか’試されているとも言えましょう。一部の親中派の利益のために、仮に日本国政府が媚中派の圧力に屈して中国を選んだとすれば、日本国政府もまた中国の習政権と運命を共にし、国民からの信頼を失うこととなりましょう。

日中両政府が直面している状況を考慮しますと、今春にあって習主席の訪日が実現する可能性は極めて低いのではないでしょうか。既に中国側からも延期の声が上がっているようですが、新コロナウイルス肺炎の蔓延が中国の国家体制を揺さぶる中、少なくとも一党独裁体制が維持されている間にあっては、中国から国賓待遇で国家主席を招待すべきではないように思えます。そもそも、中国は、人の道徳や倫理観を麻痺させて非人道的な行動に走らせてしまう、共産主義という精神の重い病を患っているのですから。


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否定できない新型コロナウイルス生物兵器説

2020年02月05日 13時25分43秒 | 国際政治

WHOがパンデミックの認定に煮え切らない態度を示す中、遂に、かのペストにまで喩えられるに至った新型コロナウイルスの感染拡大。ヨーロッパの人口を三分の一程までに減少させ、死亡率が30から90%とされたペストほどではないにせよ、同ウイルスが人々に与える恐怖感はペストに勝るとも劣りません。その主たる原因は、それが得体の知れない未知のウイルスであるためなのですが、とりわけ、同ウイルスが生物兵器として開発されたとする説は人々の恐怖心を倍増させているように思えます。

 新型コロナウイルスについては、動画を含む様々な情報がネット上にアップされていますが、中にはデマやフェイクニュースも少なくないそうです。騙されないように警戒が促されているのですが、不思議なことに、新型コロナウイルス生物兵器説については誰もがデマとは見なしていません。真っ先に否定にかかりそうな中国政府も、この説には口を閉ざしています。中国の当局が設けた記者会見の席でも記者から質問がありそうなものの、メディアの側も申し合わせたかのように押し黙ったままなのです。その一方で、政府や研究機関等によって発表された同ウイルスに関する情報は、むしろ同説の信憑性を裏付けています。

状況証拠とも言えるのが、生物化学兵器に関して詳しい情報や知見を有する諸国の態度です。対外的には過剰反応として他国の入国規制を批判している中国はでさえ、武漢を初め、諸都市の封鎖という前代未聞の強硬措置で感染封じ込めに臨んでいます。こうした中国の慌てたような態度は、同ウイルスは‘ただ者’ではないとするイメージを与えています。本当のところは、中国政府は、同ウイルスの出処、すなわち、武漢に設置されているウイルス研究所において生物化学兵器用に開発された凶暴な人工細菌であることを知っており(中国科学院武漢ウイルス研究所微生物毒種保存センター以外にも人民解放軍系の研究施設もあるらしい…)、それ故に、非常手段として閉鎖措置を採らざるを得なかったとする推測が成り立つからです。

加えて、核・ミサイルと並んで、生物化学兵器を秘密裡に開発・保有しているとされる北朝鮮も、他国に先駆けて封鎖措置を採っています。同国の医療レベルや国民の衛生・栄養状態からしますと、新型コロナウイルスの国内感染によりペストレベルの大惨事となる可能性は高いのですが、それでもその対応は素早すぎます。また、アメリカ、ロシア、イギリス、オーストラリア、カナダ等の諸国の反応も早く、かつ、その措置も厳格です。

しかも、1月28日には、米司法省は、ハーバード大学の化学・生物化学部の教授であるチャールズ・リーバー博士の逮捕を公表しています。同博士が起訴された事由は、同氏が武漢理工大学の‘戦略的科学者’の一人となると共に、中国の人材誘致のための国家プロジェクトである‘千人計画’に秘密裡に参加していたことが判明したからです(同時に逮捕された二人の中国人研究者は、21種類のウイルスを盗んだ罪で起訴されている…)。カナダについても、ネット上に新型コロナウイルスの原型は、同国の研究機関から中国人研究者によって盗み出されたものとする情報が流されております。何れにしましても、中国が、積極的に先進国の研究機関からウイルスを盗み出してきた実態が伺えるのです。

以上に述べた状況証拠から新型コロナウイルスが、遺伝子の改変による人工生物兵器であるとしますと、自然界の細菌にあって見られる感染力と毒性との間の反比例の関係も通用しない可能性が高くなります。つまり、新型コロナウイルスは感染性も毒性も強い可能性が否定できず、楽観視は決してできないのです。

ましてや、同ウイルスに対してはエイズの治療薬が有効であるとする説は、人々を震え上がらせるに十分な情報です。中国当局からも感染拡大当初からエイズの治療薬への有効性が示唆されていましたし、同治療薬を製造している医薬品メーカーの株価が上昇するといった現象も見られました。先日、タイ保健省も抗インフルエンザ薬と抗HIV薬との併用治療に著しい効果が認められたと発表していましたが、これらの情報は、新型コロナウイルスが、エイズウイルスの性質を有していることを示しています(遺伝子操作によりコロナウイルスとエイズウイルスを組み合わせたのでは…)。そして、エイズという病が免疫不全を引き起こす点を考慮しますと、新型コロナウイルスは、他の感染症とは全く違う様相をも呈してきています。

この疑念を裏付けるように、中国国家衛生健康委員会は、数日前に同ウイルスの感染者の体内では抗体が消える可能性について触れています。一度罹患した人でも再度感染する可能性があり、重症化する人は二度目の感染者ではないかとする指摘もあります。体内の抗体反応が持続しないとすれば、抗体検査では当然に陰性となりますので同検査を実施する意味はなくなりますし(別の方法で判別するしかない…)、一旦、感染しますと、エイズと同様に完治することがないために、一生涯治療を続けざるを得なくなります(死亡率は低くとも、一種の後遺症として免疫力が低下する…)。今日、エイズの治療法が飛躍的に発展し、平均余命も一般の人々と同程度になっているとはいえ、感染者の心理的、並びに、財政的な負担は計り知れません。また、エイズ治療薬が高額とされていることを踏まえますと、日本国内で爆発的に感染者が増加すれば、日本国の財政状況は逼迫し(指定感染症のため全額国費負担…)、健康保険制度も破綻の危機を迎えることでしょう。

仮に、新型コロナウイルスが、インフルエンザ並みの高い感染力を有するとともに、エイズ並みの毒性を持つとしますと、人類は、恐怖のどん底に突き落とされることとなります。日本国政府は、最悪の事態を想定し、中国からの入国禁止措置や中国への渡航禁止、並びに、治療法の開発などのあらゆる手段を尽くし、新型コロナウイルスについては何としても国内における感染拡大を防ぐべきなのではないでしょうか。

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イギリスのEU離脱と新型コロナウイルス―国家の出入国管理権限

2020年02月04日 11時30分04秒 | 国際政治

 2020年1月31日、イギリスは、1973年の加盟から半世紀を経ずしてEUから去ってゆきました。時を同じくして、人類は武漢発の新型コロナウイルスの脅威に見舞われたのですが、この二つの世界を揺るがせた出来事を観察しますと、ある共通点を見出すことができるように思えます。

 それでは、どのような共通点が両者にあるのかと申しますと、それは、両者とも国際組織というものの‘人の移動’に関する権限が注目された点です。イギリス国民がEU離脱を決定した最大の理由は、国家の主権的権限がEUに移譲されてしまうことへの危機感にあります。ブレグジットの最大の争点は移民問題とされましたが、移民の受け入れは国家の国境管理の権限と表裏一体ですので、移民問題=国家主権の問題とっても過言ではありません。つまり、EUにおいて域内の‘人の自由移動’が原則として確立し、かつ、難民の受け入れ等においてEUが加盟国に対して受け入れ数の割り当てといった権限を有するに至ると、イギリスは、独自に国境管理権を行使することはできなくなるのです。

‘これでは、もはや我が国は独立主権国家とは言い難い’というのが、離脱を支持したイギリスの一般国民の多数派の気持ちなのでしょう。個人レベルでも自己決定権が尊重されるように、自らに関する重大な事柄についての決定権は、その本人が有するのは当然のことです。逆に、決定権が他者にある状態は半ば決定者への隷従を意味しますので、人格の尊重からすれば望ましいことではありません。国際社会でも独立性の尊重は自決権としても原則化されており、イギリス国民の離脱決断も理解に難くないのです。

イギリスが国境管理の権限を自国に取り戻す一方で、新型コロナウイルスもまた、国境管理の権限をめぐる問題を提起することとなりました。後者は感染症という前者とは全くことなる状況とはいえ、感染拡大を事前に防止するために、日本国をはじめ世界各国の政府は中国からの渡航について厳しい規制を設ける決断を下しています。‘自国ファースト’との批判はあるものの、政府には国民の命と健康を守る義務がありますので、むしろ、何らの措置も採らなければ、政府は国民からの厳しい批判に晒されることとなりましょう。

ところが、こうした各国の対応について、国際機関であるWHOのトップであるテドロス事務局長は苦言を呈しています。公衆衛生上の緊急事態を宣言しつつも‘中国との取引や渡航については勧告しない’と述べ、中国擁護に回っているのです。同局長の親中姿勢の背景として、中国の習近平国家主席との間の親密な関係が指摘されていますが、初期対応の不備の責任を問うこともなく、中国の適切な対策によって世界大での拡大が阻止されているとして逆に恩を着せようとしているのですから、あまりの媚中ぶりに驚かされます。そして、中国もまた、各国の渡航制限についてWHOの提言に反しているとして息巻いているのです。

新型コロナウイルスをめぐる国際機関の動きを見てみますと、国際機関が出入国に関する権限を握るリスクがよく分かります。現状では、WHOの決定や事務局長の提言等には法的拘束力はなく、出入国に関する権限は加盟国の手中にありますが、仮に、WHOが同権限を排他的に有するとしますと、恐ろしい事態が予測されます。国際機関において‘出入国規制を設けてはならい’との決定がなされますと、全ての加盟国は、否が応でも同決定に従わざるをえなくなるからです。たとえ、この決定によって、自国に深刻な感染病が持ち込まれたとしても…。

また、WHOの今般の決定はチャイナマネーの影響下においてなされており、民主的でもなければ、公平でもありません。WHOのみならず、世界第二位の経済大国にのし上がった中国は、国連をはじめとした他の国際機関に対しても影響力を浸透させており、今後、国際機関のあらゆる決定は、中国の意向の代弁に過ぎなくなるかもしれません。中国は、グローバリズムの旗手を自認していますので、他の諸国による中国からの移民を制限するようなあらゆる措置に反対することでしょう。国際機関の衣を借りて…(中国にとっての‘グローバリズム’は、中国による政界支配を意味する?)。

このように考えますと、地理的、性質的には離れているものの、イギリスのEU離脱と新型コロナウイルスの感染拡大という二つの出来事は、偶然にか国際機関と国家の出入国管理の権限に関する重大な問題を問うているように思えます。従来、国際機関は理想視されがちであったのですが、これを機に、国際機関への権限の移譲に伴うリスクについても考えてみる必要があるように思えるのです。


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観光と命のどちらが大事?-新型コロナウイルス対策問題

2020年02月03日 11時11分06秒 | 日本政治

 日本国への中国人観光客の数は年々増え続け、2019年には959万人を数えています。年間1000万人突破も間近に迫る中、武漢を震源地とする新型コロナウイルスの感染拡大がこの勢いに急ブレーキをかけています。訪日客の半減も予測されてはいますが、こうしたマイナス情報は、必ずしも悲観的に捉える必要はないように思えます。

 観光と命のどちらが大事?という二者択一の選択であるならば、誰もが後者を選ぶに決まっています。新型コロナウイルス肺炎に感染すれば、高熱のみならず咳や呼吸困難に苦しめられると共に、手足が動かずに脱力状態に至るケースもあります。最悪の場合には命を落とすことにもなりかねませんし、たとえ病院での治療を要さない無症状の状態であっても、保菌者であることが判明すれば、2週間程度は隔離状態に置かれることになりましょう。想像しただけでも怖くなります。

 人から人へとうつる感染病は、人が病原菌のキャリアーとなりますので、保菌者の移動範囲がそのまま感染リスクの範囲となります。今日、世界各国が中国からの入国者を厳しく制限しようとしている理由も、人と病原体との一体性による感染拡大リスクを認識しているからに他なりません。自由な人の移動はリスク拡大と凡そ同義なのであり、感染拡大防止のための最も効果的な手法は、感染者の隔離と移動制限と言っても過言ではないのです(人権保障の普遍性に鑑みれば、感染リスクを受ける側の人権、すなわち、基本的権利(生存権)も保護しなければならないので、保菌リスクのある人々に対する自由の制限は致し方ない側面がある…)。

 感染症というものの特性を考えますと、観光という行為は、観光客の側とこれらの人々を迎え入れる観光サービス業者や観光地の住民側の両者に高い感染リスクをもたらします。日本国内では、武漢からの団体観光客を乗せたバスの運転手とガイドさんが感染しており、長時間にわたって密封状態とならざるを得ない団体旅行に伴う極めて高い感染リスクを示しています。中国政府は、既に団体旅行による出国を禁止していますが、規制対象ではない個人旅行客にあっても、目的地への移動手段として使用した公共交通機関のみならず、観光地においてウイルスをばら撒く可能性があります。宿泊先のホテルや旅館、さらには、民泊である場合にはその住居にウイルスを持ち込むかもしれず、それは同時に、日本人を含めた同地に観光に来ていた他の宿泊客等、観光施設や宿泊施設で働く人々、そして、観光地の住民に対しても重大な脅威となるのです。

 仮に、日本国内の観光地において一人でも感染者が確認されたならば、おそらく、その観光地はほとんど封鎖状態となることでしょう。日本国政府は、観光客のみならず、武漢市と同様にあらゆる人の同地への出入りを禁じるかもしれませんし、こうした強硬な法的措置を採らなくとも、誰もが自からの判断で同地を避けることが予測されるのです。日本国政府が中国からの訪日客の入国禁止措置を躊躇うのは、日本国内の観光業へのダメージを懸念してのこととも指摘されていますが、新型コロナウイルスの感染力の高さからしますとこの懸念は逆であるかもしれません。早期に感染リスクを最小限に抑えておけば、観光地が長期的な‘休業’に追い込まれるリスクも減らすことができるからです。

短期的な損失を恐れるばかりに長期的な損害を招き入れるのでは、この判断は、賢明であると言えないように思えます。そして、今般の新型コロナウイルスによる感染拡大による中国人観光客の大幅減少は、日本国の観光業をもう一度見直すきっかけになるかもしれません。すなわち、‘観光立国’の危うさを示唆しているのです。

急激に増加した中国人観光客による観光公害は既に対策を要するレベルに達していますし、日本国内の観光地の多くが如何にも日本らしい佇まいを残す木造建築の多い古都や集落である点を考慮すれば、将来的には文化財や伝統的な景観の保護にも支障をきたすことでしょう(損傷や摩滅の原因に…)。また、中国人観光客が押し寄せる観光地では、あまりの騒々しさに日本人観光客の足が遠のく現象も起きています。さらには、中国人向けの観光業の場合には、中国人、あるいは、中国資本の事業者がサービスを提供しているケースが多く、近い将来、日本国の観光市場が中国系に占められてしまう事態もあり得ます(観光業が中国経済のみを潤し、日本経済に資さないようになる)。

日本国政府は観光立国を目指し、年間4000万人の外国人観光客の訪日を目標に掲げていますが、一般の日本国民が政府と同目標を共有しているとも思えません。グローバル時代における‘国際分業’の結果が、日本国の産業の空洞化と外国人向け観光地化であるならば、この目標は軌道修正すべきであり、一般の日本人も国内旅行を気兼ねなく楽しめ、かつ、外国人観光客も静謐を好んできた日本の伝統的な精神性にも接することができるような、量よりも質を求める観光の在り方を探るべきなのではないでしょうか。今般の新型肺炎による観光へのマイナス影響は、それが日本国の観光政策の転機となるならば、危機をチャンスに変えることができるのではないかと思うのです。

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新型コロナウイルスに見る‘友情’を押し売りする中国

2020年02月02日 12時30分45秒 | 日本政治

 新型コロナウイルス肺炎の全世界的な感染拡大を受け、アメリカ政府は、異例の入国禁止措置を採ることとしました。この決定に対して、中国政府は、‘困っている時に助け合う友こそが真の友’にもかかわらず、アメリカが事実上の‘大陸封鎖’という冷たい対応をしたとして憤慨しているそうです。しかしながら、中国のこの言い方、他の諸国にとりましては迷惑な‘友情の押し売り’ではないかと思うのです。

 ‘困っている時の友が真の友’という言い方は、おそらく英語の諺である‘a friend in need is a friend indeed’に由来し、日本語では「まさかの時の友こそ真の友」と一般的には邦訳されています。実のところ、この言葉は、日本国の茂木外相が武漢支援を中国の王毅部長に申し出た際にも用いられたと報じられており、全世界的に定着している言い回しなのかもしれません。その後、中国系メディアも、同表現を以って日本国の支援を称賛するようになりました。しかしながら、この言葉、一旦、言葉として口に出た途端に色褪せてしまう、あるいは、意味あいが違ってしまうようにも思えます。

 日本国の茂木外相のケースでは、支援者側が支援を受ける側に対してこの言葉を使っています。同外相は、他意なく中国の心理的な負担を軽くするためにこの言葉を添えたのであれば、日本国側の中国に対するさり気ない心遣いということになりましょう。あるいは、中国公船が日常的に尖閣諸島周辺海域に出没し、かつ、学校教育の場でも反日教育に勤しんでいるところからしますと、文字通りの‘外交辞令’というものであったのかもしれません。

何れにしましても、この場合には、取り立てて問題とすべき点はないのですが、仮に、同外相が中国に対して何らかのメッセージを込めていたとしますと、この言葉は、若干の‘棘’を含むことになります。どのようなメッセージであるのかと申しますと、それは、「‘真の友達’として助けてあげたのだから、この恩を忘れないように」というものです。もっとも、近年、頓に顕著となっている日本国政府の媚中ぶりからしますと、この可能性は相当に低いと言わざるをえません。

茂木外相に触発されたのか否かは分からないのですが、その一方で、支援を受ける側である中国も、上述したように、この言葉を自ら言い出すようになります。中国系メディアは、日本国による対中支援によって中国人の日本人観が変わった、すなわち、日本国が中国の‘真の友’であることが判明したかのように報じているのです。対中支援によって対日感情が好転することは必ずしも悪いことではないのですが、中国からのアプローチともなりますと、それがたとえ評価の好転であったとしても一般の日本人は反射的に身構えてしまいます。心理作戦にも長けた中国のことですから、この言葉に、中国の別の意図を読み取ってしまうからです。

 支援される側、しかも強者の側が‘苦しい時の友こそ真の友’と言い出した時、それは、支援を強要しているようにも聞こえるからです。学校等にあっても、いじめる側は、しばしば‘友達だろう’と言っていじめられる側を脅したり、金品の提供を迫るそうです(いじめられる側も、日頃は疎んじられていたにもかかわらず、俄かに‘友達’と言われてうれしくなり、自発的に言いなりになってしまう場合もあるかもしれない…)。人の好い日本人の多くは、中国から‘真の友達’と礼賛されたことにより、‘忖度’して、あるいは、‘感激’してしまって、中国の望む方向に誘導されてしまう可能性があるのです。その要望が、‘中国に対してこれ以上の封鎖的な措置をとって欲しくない’というものであれば、日本国政府は同国に気を使い、日本国民の生命と安全を犠牲にすることとなりましょう。

もっとも、日本国に対しては常々高飛車な姿勢で接する中国ですが、アメリカに対してだけは、こうした心理作戦は通用しないようです。冒頭で報じた中国からの冷酷批判も、‘その通りです。アメリカは中国の真の友人ではありません’の一言で片づけられてしまいそうですが…。

中国側は、今春に予定されている習近平国家主席の国賓待遇での訪日についてはスケジュールを変更する予定はないとしていますが、‘真の友達’であるならば、自国で感染症が猛威をふるっているにもかかわらず、他の国を訪問しようとするでしょうか(一般社会でも、インフルエンザに罹っている、あるいは、家族が感染している人は、迂闊に友人宅を訪問しようとはしないはず…)。また、招待したのは日本国側とされていますので、新型コロナウイルスの問題を理由として招待を取り下げても、‘真の友人’であるならば理解を示すはずです。何れにしましても、日本国政府が新型コロナウイルス肺炎に関して中国に支援するならば、人道的な立場からの医薬品の物資の提供に止め、自国を危険に晒すような中国配慮はしてはならないのではないかと思うのです。


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春節後の中国人Uターン問題―政府の対応は緩いのでは?

2020年02月01日 13時05分59秒 | 日本政治

 新型コロナウイルスの全世界的な感染拡大を受けて、アメリカ政府は、「公衆衛生上の非常事態」を宣言し、過去14日以内に中国への渡航歴のある外国人を入国禁止とする方針を決定しました。同措置に対して、中国は‘薄情’であるとして反発を見せていますが(こうした措置が薄情であるのならば、中国政府による武漢封鎖は、なおさら‘薄情’なのでは…)、情報収集力に長けているアメリカの厳格な措置は、同ウイルスの脅威を物語っているとも言えましょう。その一方で、日本国政府の対応を見ますと、感染防止に万全を期しているとは思えません。

 報道によりますと、日本国政府が入国を禁じているのは、「入国の申請日前、14日以内に湖北省の滞在歴がある外国人、または、湖北省発行の中国旅券を所持する外国人」です。この規定に従えば、日本国内の大学に留学していた中国人学生、あるいは、企業に勤めていた中国人社員等は、湖北省の出身者であれば、日本国には戻れないこととなります。新型コロナウイルス肺炎の発生地が湖北省に限定されているのであれば、この措置は、有効な水際対策となりましょう。

しかしながら、既に500万人が武漢市を離れて中国全土に散らばっているともされ、実際に、北京や上海といった中国屈指の大都市でも感染者が報告されています。加えて、春節は2月2日までに延期されたものの(もっとも、北京市当局は企業に対して2月10日からの業務再開を通知しているので、事実上、春節はこの日まで延長されている…)、帰省などで既に他所に移動していた人々は、2月初旬にはUターンの大移動を開始することでしょう。このことは、春節後にあって、湖北省以外での感染者数が急激に増加する可能性を示しています。日本国内での発症事例を見ましても、公共交通機関の利用には高い感染リスクが認められています。先日、バスの運転手さんとガイドさんの二人の感染が確認されましたが、おそらく同運転手が運転したバスに乗っていた武漢からの団体客の大半も既に発症していることでしょう。交通機関では、乗客乗員の全員が車内で同じ空気を吸わざるを得ないからです。閉鎖状態にある武漢は迂回したとしても、何億もの人々が、長時間の閉鎖空間となる交通機関を利用して移動するとなりますと、春節の終わりがさらなるアウトブレイクを引き起こすきっかけともなりかねないのです。

これまでのところ、中国政府は、訪日団体客については出国を禁じていますが、個人客やその他の留学生、駐在員、あるいは、日本企業が雇用する中国人社員等については同様の強制措置を採ってはいません。もっとも、日本国政府が派遣した邦人退避のためのチャーター機第3便では、中国政府が7人邦人の出国を足止めしたと報じられていますので、中国当局は独自の検査を実施して出国者を事前にふるい分けているのかもしれません。しかしながら、武漢空港以外ではこうした感染有無のチェックが行われている保証はなく、また、日本国側でも、中国からの入国者全員に対して厳格な検査を実施しているわけでもありません。無症状での人から人への感染が報告されてもいますので、春節明けには、日本国内での感染が拡大する怖れが高いのです。

春節後の感染拡大リスクを考慮しますと、湖北省に限定した日本国政府の入国禁止措置は十分とは言えず、その対象範囲を国レベルに広げる必要があるように思えます。そして、日本国政府が、アメリカと同様の措置を採るならば、入国禁止措置の公表と発効を同時にすべきかもしれません。武漢の封鎖令のケースでは、公表から施行までの間に8時間のタイムラグがあったため、その間に大量の武漢市民が市を脱出したとする指摘があります(この点、習近平主席の感染拡大阻止の呼びかけは無視されたことに…)。冒頭で述べたアメリカの入国措置もその発行時は2月2日午後5時なそうですので、この間、中国に帰省していた在米中国人、あるいは、感染の恐怖から海外に脱出したい中国人がアメリカを目指して我先に殺到するかもしれません。猶予期間を設けますと、‘駆け込み’によるリスクを高めますので、日本国政府は、この点は十分に留意すべきではないかと思うのです。


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