ただいま追記を加えましたので、ぜひお読み下さい。
前の記事でお話した、Chapel Choirのビデオクリップ中に出てくるHarryのインタビューですが、その具体的な内容についてお知らせします!
彼の大変早口の英語を聞き取ってtranscribeし日本語訳までしてくださったのは、ケンブリッジ大卒の素敵なご主人様とクリストファー・ロビンのような可愛い息子さんといっしょにベルギーにお住まいの、Yukoさんです。ただいまコメント欄に投稿してくださったのですが、コメントにしておくにはもったいなすぎるので、ここであらためて紹介する次第です。
以下,Yukoさんの文面をそのままこちらに移動させていただきました。
私も遅ればせながら、Chapel Choirのビデオクリップを拝見させていただきました。とっても良いですね。男の子達も皆お利口そうなだけでなく、学校での生活をとても楽しんでいて、幸せそうなのが印象的でした。ウチの息子もぜひ行かせたい、などと夢見ています。でも、頭と才能が足りないかな?
さて、Harryくんのインタビューの内容を聞き取りできましたので、お知らせいたしますね。
'I've been singing in the Chapel Choir for several years now because I was a Quirister beforehand. The sight-singing abilities you learn from the age of seven or eight really set you up for all kinds of music, and I find my training from when I was that young helps me not only with just singing, but with playing the piano and the viola and things like that.'
翻訳はKeikoさんのご専門なので、お恥ずかしい限りですが、ざっと訳しますと、
「僕は、以前コリスターだったものですから、チャペルの聖歌隊で歌ってもう数年になります。7歳か8歳から習う初見で歌う能力は、あらゆる音楽の基礎となるもので、そんな小さいうちから受けてきたトレーニングは、ただ歌うことだけでなくて、ピアノやヴィオラなどを弾くのにも役立っていると僕は思っています。」
ということです。Harryくんは、他の人よりも早口で、あまり口を開けずに話すので、聞き取りづらいかもしれませんが、いかにも頭の回転の速いアッパーミドルクラスの青年らしいアクセントや話し方だと思います。チャペルで歌う姿も、堂々として素敵ですね。
sight-singing abiliyという表現を初めて聞きました。私に聞き取れるはずもないわけです・・・・
ちなみに、辞書を見ますと、、、sight-readという動詞として載っています。楽譜をread してsingするわけですから、同意ですね。
<OALDより>
sight-read verb [v, vn] to play or sing written music when you see it for the first time, without practising it first
sight-reader noun: He’s an excellent sight-reader.
sight-reading noun [U]
<Cobuild より>
Someone who can sight-read can play or sing music from a printed sheet the first time they see it, without practising it beforehand.
eg.) Symphony musicians cannot necessarily sight-read.
なるほど、、大変勉強になりました。私は専門的なことは全くわからないのですが、初見で楽譜を読んですぐ歌ったり演奏したりできる能力を、7歳くらいから徹底的に訓練するというのは、いわゆる音楽エリートを育てる条件なのでしょうね?
ところで、、私は、HPのこのビデオクリップを自分のPCに保存しようと思いまして、Orbit Downloaderという動画保存ソフトをインストールし、ダウンロードそのものは確かにできたのですが・・・こんどは保存したものが開けない! もうしばらく格闘してみましょう。。。。。
追記
* Wikipediaには、音楽用語として、sight-read のほか、sight-playと sight-singが載っていました。sight-singing = vocal sight-readingということになるそうです。
* イギリスの音楽教育において、sight-reading abilitiesがいかに重要視されているかということと、それはどういう事情のためか、ということについて、こちらのブログさんに有益情報があります(コメント欄の9番目の投稿もご覧下さい)。フリーランスとして即戦力になる高度な実力を求められるため、その証として必要なスキルなのですね・・・フリーランス翻訳者が、初めての分野(技術内容)でも、なんとかして納期内にやっつけなければならないのと同じかな? ともかく、7歳からその訓練を受けるということが、いかにすごいことかわかりました。。。
さて、私も少しでもお役に立てればということで・・・
初見で楽譜を読んですぐに歌うことを初見視唱(または新曲視唱)と言います。音大や音楽科を受験する人や、音楽を深く勉強している人は、必ずソルフェージュというものも勉強します。ソルフェージュはフランス語で、もとはこの初見視唱を意味していたのですが、今では音楽理論・視唱・読譜・暗譜・調音などの音楽の基礎教育全般を指します。というわけで、初見視唱はソルフェージュの1つです。
練習法は、歌詞のない音符だけの楽譜を見て、ピアノの音出しなしでドレミファの音名で歌います(または全てラで歌うこともあります)。なので、初見で楽譜を読む訓練の他に、絶対音感を養う狙いもあるのです。音程のほかに、即座にリズムも理解し正しく歌わなければいけません。最初は4小節や8小節の短い簡単なものから始まりますが、だんだんと難しくなっていきます。
初見視唱の練習用曲集はたくさんありますが、有名なのはコールユーブンゲンです。実技試験に課されることがあります。私はこの初見視唱が苦手でした~。大学受験のために1年間習いましたが、音がとれなくて苦労しました。ともするとものすごく音痴になってしまうんですよ(笑)。でも大学に入ってから授業の中でも初見視唱があったので、後から役に立ちましたけどね。
初見視唱ができると、合唱の中でも役に立ちます。ピアノ伴奏があるので音を取りやすいですし、パート練習なしでもすぐ歌えるからです。それに自分の歌うメロディーを把握しているので、他のパートにつられるということもありません。聖歌隊はほとんどアカペラが多いので、この初見視唱は絶対不可欠でしょうね。
それから初見はもちろん声楽だけではなく、他の楽器の演奏にも役立ちます。新しく取り組む曲をすぐに弾けるというのは大事なことですし、何より即座に楽譜全体を理解することが重要です。私はホルンやテノールの先輩の伴奏をしたことがありますが、そのとき「Satomiは初見がきくから助かる」と言われました。なぜなら彼らはちょっと歌ってみたいとか、どの曲にするか試しに演奏したいということでたくさんの楽譜を持って来ていきなり弾いてというからです。初見ができないと、わざわざ練習時間をとって待ってもらわなければいけませんから。まあ、伴奏はそんなに難しい楽譜ではないのでできることで、本当のピアノ独奏の曲などは初見ですらすら弾けるものではありませんが。
それにしても、本当に聖歌隊員たちは小さいころからきちんとした音楽教育を受けているのですね。どんな授業内容なのかとても興味があります。すいません、すっかり長くなりました~。
さて、sight-readingについてテクニカルな詳細をどうもありがとうございました!なるほど、、本当に大切で有益な能力・スキルなのでうね。ソルフェージュがもともと初見視唱の意味だったということからも、わかりますね・・・・
コールユーブンゲン!コンコーネと並ぶ声楽の基本の教科書ですねーー 専門家を前にこういうことを書くのも恥ずかしいですが、、私も若い頃・・個人的に先生についてそういう本を勉強してみたことがあったので・・・・1年も続かなかったですが、懐かしいです。あ、このことは、FBACのフォーラムでも話したことありましたっけ??
そうですか!Guest先生が、そんなことを!確かに彼の理論の影響は絶大なものがあると思います。
Oxbridgeのどのコレッジでも、choral scholarに選抜されるには、大変厳しい試験をパスしなければならないのでしょうね。超一流音楽エリートのなかでもさらに秀でたごく一部の人たちなのですね。
ところで、、、私も「視唱」という日本語がランダムハウスに載っていたので、ふーんと思って、Googleしたりもしていたのですが・・・仕事柄、どの分野であっても、テクニカルタームにはつい慎重になってしまうので、この日本語を当てて本当に大丈夫なのか確信がもてないうちは、自分では使えないと思っていたわけですが、、、こうして専門家が紹介してくださって、安心しました。またひとつテクニカルタームを覚えました。
Yukoさん、Satomiさん、こんごともよろしくご教示ください。 なにせ管理人がこういうレベルのミーハーなもので、助かります。。。
本文のほう、今から直しておきますね。ついでながら、、、quiristerを大文字Quiristerにさせていただきますね。この言葉は少なくとも今ではWinchesterでしか使っていないようで(ん?他にもあるのかな・・)、固有名詞的な扱いなのでしょうね・・・学校のサイトでは常にQuiristerと書いてあるようですので。
>イギリスの大学の音楽やスポーツの奨学生は、一般の受験生とは違って、入試の学力基準は少しゆるいのだそうですが
普通の?!大学ではそうなのですか、、、それだけにOxbridgeの場合はまた別だということでしょうね。Harryは理想的!むふふ・・・将来はすぐれた指導者にもなれるかも
私はどうも、、、My Own Countryのカバーの裏のどアップ写真のイメージが強く・・・あの写真をあまりに愛しているので、あのまま大きくなって欲しいと思っているところがあるかもしれません・・ワガママだあ Harryらしく成長しているということなのでしょうね・・・
申し訳なく思います。
そう、本人はとっても気になるのですよね!
スポーツや音楽などの奨学生は、
一般入試の時期よりもずっと早く、
まず実技の試験が先に行われるそうです。
それから学力試験になるわけですが、
その学力試験の基準がゆるいということで、
これはOxbridgeも同様です。
それは、スポーツや聖歌隊で優れた才能を
発揮してもらえれば、それもまた大学の
評判を上げることにつながるからですね。
だから、夫がはっきり言ってdim(おバカ)
でも構わないとちょっと大げさな言い方
をするのは、そういう「特殊な才能を優先」
するからとわけなんですね。
とはいうものの、Oxbridgeの場合は、
本当に特別な大学なので、おバカでは
ついていくことができず、即落第です。
実際、そういう人もいます。
私が(イギリスの)大学の通信で
毎月数千語の論文を書かなくてはならず、
大変で愚痴をこぼしましたら、
夫が自分の大学時代の話をしてくれた
のですが、tutorial(個別指導)には
必ず出席して、毎月どころか、
2~3週間に一本の割合で、数千語の論文
の提出したり、試験もたくさんあるなど、
とにかく並の勉強量ではとてもついては
いけないということがよーくわかりました。
当然アルバイトなどする時間はなく、
夏休みに大学の図書館で短期間やるのが
せいいっぱいだったそうです。
というわけで、聖歌隊で歌う奨学生の皆さんは、相当ハードなスケジュールをこなしている
ということですね。
King's Collegeなど、毎日の礼拝に
加えて、プロ並のコンサートスケジュール
ですから、その合間にしっかり勉強
しなければならないというのは、
いくらまだ若いとはいえ、
精神的にも体力的にも相当タフでないと
できないと思います。
それだけに、彼らの美しい歌声を聴くと、
素晴らしい音楽の裏に隠された努力
が感じられて、頑張っているんだなー
と感謝の気持ちでいっぱいになります。
Harryくんもこれからきっと大学で
ハードなスケジュールをこなしながら、
素敵な歌声を聞かせてくれることと
思います。楽しみですね!
私もMiliyさん同様、Harryくんは、それほど
変っていないと感じますよ~。
赤毛はよく金髪に変ったり、その逆も
ありますが、Harryくんはそのままですし、
色白で細面、賢そうな青い目は以前と同じ
です。声もオジサンのようなゴッツイ声に
なったわけではないですし。
でも、確かに17歳にしては、大人っぽいですね。
*****
大変ご丁寧で、私には過ぎたご紹介をいただきましたYukoでございます!
お役に立てて本当に嬉しく思います。
初見視唱(Satomiさん、このような専門用語があったのですね。詳しくご教示くださり、大変感謝しております)がイギリスの聖歌隊の世界において、いかに重要視されているかということについて、私も興味深い事を発見致しました。
私は今、Dr. George Guestという、Cambridge大学St.John's Collegeにて40年間(1950年代~90年代)も聖歌隊の音楽監督を務め、同聖歌隊の独特のスタイルである、宗教音楽へのより情緒的なアプローチとヨーロッパの作曲家の作品を積極的に取り入れたいわゆるContinental Styleを確立した音楽家の自伝を読んでおります。
その中に、同カレッジの聖歌隊で歌うChoral Scholars(St.John'sではChoral Studentと呼ばれています)を採るための入試の際、with great emphasis being placed on an accurate ear, and on fluent sight-reading、つまり
「正確な耳と、よどみのない初見視唱の能力が非常に重要視される」と書いてあるのですね。
Dr.Guestは、Connor Burrowesくんを始めとするBoys Air Choirの主要メンバーを指導した
St. Paul's Cathedralの音楽監督John Scott氏や、現在のSt.John's College Choirを率いる Andrew Nethsingha氏、そして King's College Choirの監督 Stephen Cleobury氏らを育てた偉大な指導者として知られており、その教え子達は、イギリス各地の大聖堂、教会、学校の音楽監督やオルガニストとして活躍していますから、現在のイギリスの多くの聖歌隊は少なからずDr.Guestの影響を受けているものと思われます。ですから、初見視唱が聖歌隊で歌うための必須条件であることは、本当なのでしょうね。
それにしても、7歳ぐらいから習い始めるというのは、すごいですね。
私の息子は、今4歳ですが、あと3年後に初見視唱を習い始めたとしたら、一体身につけることができるでしょうか!?
Yukoさんふご夫妻が身をもって体験されたように、イギリスの大学生活は、ともかくいつも大変で、demandingで、日本みたいに受験生のときが一番??大変で、入ったら楽勝モードでバイト、、(あっ、それは私の学生時代のことです・・・)という生活からは考えられないほど厳しいのではないでしょうか・・・
Harryが変わったか変わっていないか、ということで日本でこんなに盛り上がっているとは、当の本人さんは想像もつかないでしょうね。。。
いずれにせよ私は彼に会ったこともないので、なんとも言いがたいというのが本音です。死ぬまでには一目おめもじしたいものです。。。