昨日も摩耶山に登るため、西宮北口で各停に乗り換えました。
運良く、進行方向左側、浜手側の席に座ることができました。六甲(むこ)の山を眺めながら行くのが至福の時間です。
西宮北口を出て、夙川、芦屋川と、六甲(むこ)の山のそのまた向こうは、きれいな羊雲でした。
「かわぃい羊雲…! 今日は秋らしい空の写真が撮れそうだね…!」
と、愛娘もうれしそうでした。
今年は、というか今年も、ようやく夏が終わったと思ったら、いきなり冬で、秋は実質3日程度しかありませんでしたからね。
しかし、岡本、御影、と西に進んでいくと、次第に雲の数は少なくなり、六甲を過ぎ、王子公園に着くころには、雲ひとつない青空になっていました。
青空なのはうれしいですが、あの羊雲を楽しみにしていたので、少し残念でした。
あれはきっと宝塚方面、能勢方面の空だったんですね。阪急西宮北口から宝塚までは今津線が出ていますが、宝塚・能勢はほぼ真北です。
同じ日同じ時間帯、能勢を訪ねられていたFFの水仙さん改め紅葉さんが、能勢の雲の写真をアップされていました。
西宮から能勢まで、20キロもないはずですが、阪神側からとは雲の形がちがってみえるのが、おもしろかったです。阪急神戸線の車窓からは、規則正しい羊さんの行列に見えましたが、能勢の空の真下で紅葉さんが撮影した羊さんたちは、ひとりひとり個性があって、やんちゃな感じがします。
さて、山を降りた帰りには本屋に寄ると、若い頃お世話になった気象写真家・高橋健司さんの『空の名前』(角川書店)が平積みになっていました。木の実ナナさんが推薦のことばを寄せています。
「心が沈んだ時、この本を開いてください。
空が、あなたを包んでくれるはず」(木の実ナナ)
『空の名前』はすでに、初版から30年以上版を重ねています。
「日本の古本屋」の書誌情報によれば、光琳社出版から初版が刊行されたのがいわゆる平成4年、1992年です。私が手にしたのも、この初版だったと思います。順調に版を重ねていたようですが、光琳社出版の倒産に伴い、1999年に角川書店から新装版が出て現在に至ります。
この出版不況の世でも、「本物」がしっかり評価されていることは、うれしい限りです。
著者の高橋健司さんには、児童書の仕事で監修をお願いしたのです。通常ならこちらから菓子折り持参でお訪ねするところ、気さくな方で、職場から近いからと、仕事帰りにわざわざ事務所まで訪ねていただけました。
高橋さんにご監修いただいたこの科学ファンタジーの付属カセットの音声ストーリーでは、今や大御所の青二プロのスターのおふたりに、雪の王子さまと氷の女王さまを演じていただいたのでした(ウィキペディアにも記載のないお仕事です)。いちおう文部省準拠(!)のお仕事でしたから、リアリズムの体裁をつけるため、夢オチにしましたが、夢でなかった証拠に、雪と氷の世界を案内してくれた雪だるまが最後に登場するのです。その雪だるまは、『空の名前』に登場する、高橋さんのお嬢さんが作った雪だるまでした。
あれはほんとうに楽しい仕事でした。私の本も何刷かされたはずで、高橋さんには良いプロモーションになったかも。少しは恩返しになったかな。
さて、自宅に帰り、『空の名前』を探したのですが、見つかりません。
よほど深くしまいこんでしまったようです。
そのかわりに、高橋さんの別の著作に再会できました。
『CLOUDLAND』
雲の国、ですね。表紙はきれいなレンズ雲です。
『CLOUDLAND』より、羊雲。
この羊雲には、ピンク・フロイドの『雲の影』を思い出します。
昨日神戸線から見た羊雲は、もう少し人口密度ならぬ羊口密度が二、三割低かったような気がします。
『空の名前』を探していると、こんな本も出てきました。
『水のことのは』ネイチャー・プロ編集室(幻冬舎)
渋谷宇田川町のネイチャー・プロの方々には、ひとかたならぬお世話になりました。
この本、これからの山歩きに必携かも。
「空も空気も風も月も
すべて水の如く淡く、水の如く清く、水の如く流る」(徳富蘆花『自然と人生』)
お山のなかで出会う自然のいろいろな現象は、畢竟するに、「水」が姿かたちを変えたものです……
『水のことのは』より、竜ヶ窪の池(新潟県)。こんな場所があったんだ!
美しい自然の写真に癒やされます。