尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「資格確認書」があれば、「マイナ保険証」は不要

2024年12月03日 22時32分04秒 | 政治

 2024年12月2日以後をもって、「紙の保険証」が発行されなくなった。政府はいわゆる「マイナ保険証」に統一したいという意向だが、その問題に対する反対意見はこれまで何度も書いてきた。(例えば、『衆院選、マイナ保険証を争点に!ー各党の公約を見る』を10月21日に書いたばかりである。またこの問題を書くのも恐縮だが、やはり書くべきだと思う。テレビニュースで今頃取り上げて、「知ってますか?」と聞くと、知らないという人がいるのである。信じられるか? そしてインタビュアーは「マイナ保険証は持ってますか?」と誘導的質問をする。これだけ騒がれても知らない人がいるのもすごいが、それは若い人だった。

 なるほど、確かに。ちょっと前まで、保険証は家族単位だった。若い頃はほとんど病院に行かないから、全然関心がなかった。まあ若い時も歯医者に定期的に行くべきなんだけど、やはりホントに痛くなるまで行きたくなかった。若くても病気やケガが多い人もいるだろうが、ありがたいことに自分はそうじゃなかった。数年に一度ぐらいインフルエンザになったりしたが、その程度。学生時代は親の扶養で、親の会社の健保組合に入っている人が多いから、当事者意識も湧かないだろう。 

(資格確認書=見本)

 ところでマスコミでは「資格確認書」について、触れてはいるけど不十分。「紙の保険証廃止」というと、そりゃ大変だと思う人が出て来るが、現在の保険証は有効期限まで従来通り使用できて、「その後も資格確認書が自動的に送られてくる」のである。マイナカードなんかなくても大丈夫なのである。マイナカードを持ってても、マイナ保険証の登録をしなくて大丈夫。資格確認書は従来の保険証とほぼ同一で、名前を変えただけである。今までの保険証で特に困ってなかった人は、今後は資格確認書で受診すれば問題ないのである。まあ一部の医療機関、薬局、行政機関などが「マイナ保険証はありますか」などと誘導的に聞いてくるかもしれないけど、「資格確認書でお願いします」と言えばよいだけである。

(マイナ保険証と資格確認書の違い)

 まあ両者には多少の違い(上記)があるわけだが、本質的な不便はない。マイナ保険証は医療費の削減になるなどと言ってるが、それは政府がそう設定して嫌がらせしているから。どんな薬を飲んでいるか医者が判るようになるとか言うが、そもそもそれは薬局で薬剤師がお薬手帳をを見て行うことである。そうじゃないと「医薬分業」の趣旨に反する。今はまだマイナ保険証にしたばかりの人が多いだろうからいいけれど、今後「5年の期限」が来れば大混乱になると思う。5年も経てば、その間に認知症、身体障害などになる人が増えてくるし、配偶者が死んだり子どもが独立して一人暮らしになる高齢者が多くなるはずだ。

(廃業医療機関が増えている)

 ところで、廃業する医療機関が上記のように増えている。開業医の方も高齢化していくので、後継者がいなくて廃業するところが出て来るのはやむを得ない。だが最近増えているのは、マイナ保険証対応の経済的負担に耐えきれず、(一応政府の補助はあるらしいが、それでは到底まかなえず)、もっとやるつもりだったのに廃業に追い込まれた病院があるらしい。少なくともテレビニュースで見た歯科医はそう言っていた。そこにも利用者はたくさん付いていた。罪深いやり口じゃないか。

 今回一番驚いて憤慨したのが、「年寄りをバカにするな」という意見だ。「暗証番号を忘れてしまって病院で混乱する」事態を心配する声に対して、「そんなことを言ったら銀行のカードも使えないじゃないか」、そして「年寄りをバカにするな」と言うのである。自分で何を言ってるか判ってないんだと思うが、つまりマイナ保険証を作る高齢者は「暗証番号を忘れちゃ困る」と思って「銀行のカードと同じにしよう」と思うだろう。そして、中にはそれを紙に書いてマイナカードに貼ったりする。そして、それをいずれの日か、病院や施設の職員が見るのである。銀行のカードと同じ暗証番号を書いたカードを。

 テレビニュースで見たら、マイナ保険証の利用法が判らない高齢者のために、看護師が一人付いていた。スーパーのセルフレジなんかも、人件費を省くために導入したんだろうが、最初は誰かがずっと付いていたもんだ。今度は病人相手なんだから、ずっと誰かが必要なんじゃないだろうか。(セルフレジは勝手に出来るので僕は愛用しているが、病院の場合は弱ったときに行くわけだから、高齢者が一人で対応出来るようになるとは考えにくい。)本末転倒で、政府が考えることは最終的に「現場」にしわ寄せが行くことになっている。今までの保険証で何の不便もなかったのだから、恐らく「他の目的がある」と考えるべきだろう。

 自分の場合は、マイナンバーカード自体を作る気がないから、保険証にも出来るはずがない。マイナカードは便利だという人がいるが、そういう人は利用すれば良い。だけど、普通はコンビニで住民票を取るなんて、一年に一回もないだろう。僕は遺産相続のため、去年はいろんな書類を取ったけど、今年は一回もない。それに「自分の住民票」は取れるけど、「死んだ親の戸籍」なんかマイナカードでは取れないに決まってる。大体どこにあるかも判らない場合だってあるんだから。

 お上がポイントいっぱいあげるからマイナカード作ろうねと言った時点で、僕はどうにもうさんくさくて嫌な気分になった。それでもなかなか増えないから、今度は紙の保険証はなくなりますよと来た。利益誘導の次は脅迫である。じゃあしょうがないねと皆が作ったら、政府のドレイではないか。誰か「利口」な人が何事かの目的を秘めて作ったんだろう。仕方ないねと「ドレイ」が従う。しかし、世の中には利口とドレイ以外に、そんなことは知りませんという「バカ」もいないと困るじゃないか。

 「教員免許更新制」という愚策を「教育がよくなる」と言って導入した結果どうなったか。それをきっかけに教員不足が深刻化し、ついに政府自らが廃止したではないか。こういう愚策には従えないと思った自分にとって、マイナカードを作らないぐらい全然どうってことない。「間違った国策には従わない」というのは、近現代史を学んだ自分にとって譲れない信条である。権利であるとともに、国民の義務でもあると思う。ま、そういうのが少しはいないと。特に誰にもお勧めはしませんが。


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