何度も行っている温泉を最後に書いておきたい。そうすると日光湯元温泉になるけど、まあ今までいっぱい書いてきたから、長野県の別所温泉を取り上げる。三重県の榊原温泉を書いた時に、『枕草子』に「湯は七久里の湯、有馬の湯、玉造の湯」とあるのを紹介した。この七久里がどこだかはっきりせず、榊原温泉だという説が強いようだが別所温泉という説もある。そのぐらい昔から知られた温泉である。今は「信州の鎌倉」と呼ばれている。北条氏とのつながりが深く、「北条氏が七久里を別院(べついん=本寺とは別に設けられた堂舎)として使っていたことから、別所と言われるようになりました」と上田市のホームページに出ている。
(旅館「花屋」の大理石風呂)
別所温泉は温泉街にお寺や神社が多く、中でも安楽寺の八角三重塔は国宝になっている。温泉街の町歩きで国宝に出会えるのはここだけだろう。(まあ今はどこでも温泉にしてるので、日光東照宮境内にある宿も温泉になってるけど。また道後温泉と石手寺もかなり近い。)他にも常楽寺や北向観音もあるし、近くの塩田平にも多くの寺社が集まっている。温泉に行って山や海のレジャーを楽しむのもいいけど、歴史や文化財を楽しめる温泉としては別所温泉が日本一ではないか。
(安楽寺八角三重塔)
ここには5回ほど泊まってると思う。近くにも良い温泉がいっぱいあるので、そっちに泊まって安楽寺だけ見に来たこともある。少し離れた青木村の大宝寺にも国宝の三重塔があり、合わせて国宝巡りをしたこともあった。そんな中で別所温泉で一番素晴らしい宿は、間違いなく「花屋」だ。国の登録文化財になっている、宮大工が建てたという素晴らしい建築である。特に渡り廊下で結ばれたムードがなんとも言えない趣を醸し出す。まあその分値段も高いから、そう何度も泊まるわけにいかない。
(花屋の渡り廊下)
外湯(共同浴場)が今も3つある。大湯、大師湯、石湯で、全部入った。ものすごく印象的とも言えないが、近在の人もいれば観光客もいて気持ち良い。別所温泉の泉質は「単純硫黄泉」となっているけど、硫黄臭はなく白濁もしてない。そういう硫黄泉もあるんだという感じ。むしろ無色透明の柔らかな湯である。源泉は40度~50度ぐらいらしいが、昔は自然湧出していたという。湧出量が減って何回か掘削して源泉を開発してきた。大湯源泉は自然湧出と出ているから、大湯だけは昔ながらの湯を維持しているようだ。
(大湯)
場所は長野県東部の上田市になる。上田電鉄という小さな電車も通っている。一番最初はそれで行った思い出がある。そして翌日に塩田平を歩き回った。塩田平というのは、上田市西方に広がる千曲川の河岸段丘で、別所温泉はその西端にある。未完成で終わった三重塔(重要文化財)を持つ前山寺など、ここも鎌倉時代にさかのぼる仏教文化が栄えた地域。また前山寺の門前に1979年に「信濃デッサン館」が作られた。画廊主の窪島誠一郎氏が収集した村山槐多ら夭逝画家のデッサンを集めた小さな美術館である。そこには80年代に初めて別所に行ったときに訪れた。窪島氏は作家水上勉の戦争で生き別れた子だったという人である。
(塩田平)
そして窪島氏は1997年に戦没画学生の絵を集めた「無言館」をちょっと離れた場所に開設した。ここも出来た年に行って、非常に深い感銘を受けた。一緒に行った妻は新潟市出身なのだが、実家近くの蒲原神社宮司の三男金子孝信という人の絵があったのには驚いた。無言館は当初入館料がなく、「志納」だった。(今は1000円。)窪島氏も高齢となり、両方は大変だから「信濃デッサン館」を閉館するというニュースが流れた年に、デッサン館をもう一回見に行った。現在は限定的に公開されているらしい。特に無言館は必ず一度は見て欲しい場所だ。別所温泉に泊まって、翌日に文化財を巡るという旅を多くの人に勧めたいと思う。
今回調べていて、昔泊まった宿が閉館になっていて驚いた。もちろんコロナ禍で全国には厳しい宿が多いだろう。また2019年の台風19号で上田電鉄別所線の千曲川橋梁が崩落した影響も大きい。(2021年3月復旧。)ただ別所温泉の大旅館はその前に危機を迎えていた。どこも大変だろうが、やはり大きくしてしまった宿ほど難しい。だから「文化」を発信して個人客にアピールするしかない。寺社、美術もあるが、もう一つ「ため池」というテーマもある。雨が少ないこの地方では昔から「ため池」が多く作られ、ため池巡りが可能なのである。また秋は「松茸」。東京近辺では一番松茸が採れる地域で、秋になると松茸小屋が作られ山の中で食べさせている。様々な楽しみ方がある温泉で、旅番組にももっと売り込んで欲しいと思う。
(旅館「花屋」の大理石風呂)
別所温泉は温泉街にお寺や神社が多く、中でも安楽寺の八角三重塔は国宝になっている。温泉街の町歩きで国宝に出会えるのはここだけだろう。(まあ今はどこでも温泉にしてるので、日光東照宮境内にある宿も温泉になってるけど。また道後温泉と石手寺もかなり近い。)他にも常楽寺や北向観音もあるし、近くの塩田平にも多くの寺社が集まっている。温泉に行って山や海のレジャーを楽しむのもいいけど、歴史や文化財を楽しめる温泉としては別所温泉が日本一ではないか。
(安楽寺八角三重塔)
ここには5回ほど泊まってると思う。近くにも良い温泉がいっぱいあるので、そっちに泊まって安楽寺だけ見に来たこともある。少し離れた青木村の大宝寺にも国宝の三重塔があり、合わせて国宝巡りをしたこともあった。そんな中で別所温泉で一番素晴らしい宿は、間違いなく「花屋」だ。国の登録文化財になっている、宮大工が建てたという素晴らしい建築である。特に渡り廊下で結ばれたムードがなんとも言えない趣を醸し出す。まあその分値段も高いから、そう何度も泊まるわけにいかない。
(花屋の渡り廊下)
外湯(共同浴場)が今も3つある。大湯、大師湯、石湯で、全部入った。ものすごく印象的とも言えないが、近在の人もいれば観光客もいて気持ち良い。別所温泉の泉質は「単純硫黄泉」となっているけど、硫黄臭はなく白濁もしてない。そういう硫黄泉もあるんだという感じ。むしろ無色透明の柔らかな湯である。源泉は40度~50度ぐらいらしいが、昔は自然湧出していたという。湧出量が減って何回か掘削して源泉を開発してきた。大湯源泉は自然湧出と出ているから、大湯だけは昔ながらの湯を維持しているようだ。
(大湯)
場所は長野県東部の上田市になる。上田電鉄という小さな電車も通っている。一番最初はそれで行った思い出がある。そして翌日に塩田平を歩き回った。塩田平というのは、上田市西方に広がる千曲川の河岸段丘で、別所温泉はその西端にある。未完成で終わった三重塔(重要文化財)を持つ前山寺など、ここも鎌倉時代にさかのぼる仏教文化が栄えた地域。また前山寺の門前に1979年に「信濃デッサン館」が作られた。画廊主の窪島誠一郎氏が収集した村山槐多ら夭逝画家のデッサンを集めた小さな美術館である。そこには80年代に初めて別所に行ったときに訪れた。窪島氏は作家水上勉の戦争で生き別れた子だったという人である。
(塩田平)
そして窪島氏は1997年に戦没画学生の絵を集めた「無言館」をちょっと離れた場所に開設した。ここも出来た年に行って、非常に深い感銘を受けた。一緒に行った妻は新潟市出身なのだが、実家近くの蒲原神社宮司の三男金子孝信という人の絵があったのには驚いた。無言館は当初入館料がなく、「志納」だった。(今は1000円。)窪島氏も高齢となり、両方は大変だから「信濃デッサン館」を閉館するというニュースが流れた年に、デッサン館をもう一回見に行った。現在は限定的に公開されているらしい。特に無言館は必ず一度は見て欲しい場所だ。別所温泉に泊まって、翌日に文化財を巡るという旅を多くの人に勧めたいと思う。
今回調べていて、昔泊まった宿が閉館になっていて驚いた。もちろんコロナ禍で全国には厳しい宿が多いだろう。また2019年の台風19号で上田電鉄別所線の千曲川橋梁が崩落した影響も大きい。(2021年3月復旧。)ただ別所温泉の大旅館はその前に危機を迎えていた。どこも大変だろうが、やはり大きくしてしまった宿ほど難しい。だから「文化」を発信して個人客にアピールするしかない。寺社、美術もあるが、もう一つ「ため池」というテーマもある。雨が少ないこの地方では昔から「ため池」が多く作られ、ため池巡りが可能なのである。また秋は「松茸」。東京近辺では一番松茸が採れる地域で、秋になると松茸小屋が作られ山の中で食べさせている。様々な楽しみ方がある温泉で、旅番組にももっと売り込んで欲しいと思う。
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