川越雑記帳2(川越見て歩き)

テスリカガミ

7月の蒸し暑い日の午後4時頃だったと思う。
上野駅の京浜東北線のホームへ降りる階段を下り始めて、ふと下を見た。
下から2・3段目くらいのところに、黒いもの見えた。
黒いスーツ、黒い靴、全身黒づくめの男だった。
気温35度を超える暑さの中、周りは白っぽい服装なので目立った。
同じステップの上で足を前後に開き、上体を曲げ、手すりに顔を向けていた。
手すりと言っても、上下2本の棒状のものではなく、その上部である。
階段の下の方は、壁が切れて、平らな上面とその側面をステンレスで覆っている。
側面の幅2~3センチ位の面をのぞき込んで、手でこするような仕草をしていた。
近づいてよく見ると、二十歳前後の若い男で、盛んに前髪を直していた。
何のことはない、手すりの側面を鏡代わりにしていたのである。
周りを気にする様子もなく一心に鏡に向かっている。
周りの人のほうも、まるでこの男の姿が見えないように無関心で通りすぎた。
私が電車に乗るまで、同じ姿勢でいたが、乗ってから見ると消えていた。

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