川越雑記帳2(川越見て歩き)

ウデバサミ

 昨日の朝、京浜東北線の鶴見行きに乗っていた。
乗客はいつもより少なめで、互いにぶつからない状態だった。

 西日暮里の駅で、また少し人が減って、ドアが閉まり始めた。
その時、座席のある方から1人の男が慌てて出てきた。
座っていたのか、立っていたのか分からなかったが、相当にあせっていた。
低い姿勢で、立っている他の乗客を押しのけてドアへ向かって走った。

 ドアがあと10cmほどで閉まるというとき、その男はドアの隙間に腕を入れた。
二の腕まで入れ、さらにドアを押し広げようとした。

 外から見ると、閉まったドアから、1本の腕が出て上下している状態であろう。
ホームには、他の人は居らず、電車から腕だけが出ている。

 腕を挟んだドアは、少し開いて直ぐに閉まろうとした。
それでも閉まらないので、また少し開いてから閉じようとした。
男は更に肩くらいまでドアの間に差し込んだ。

 ドアは、しょうがないなという感じで、人が通れるほどに開いた。
男は、ドアをすり抜け、ホームに立った。
その頃になって、やっと駅員が駆けつけて来た。

 男はホームを歩き出し、一度こちらを振り向き、ニヤッと笑った。

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