ミンは今すごく人気のある、シンガーソングライターだ。
或る日、マッシ―は彼女のラジオ番組に投書した。
するとそれがきっかけで、同じ町出身と言う事で内緒で少し会って話すことになった。
場所は、自然の多いところとして、近くの大きな神社で会う事になった。
マッシ―はすごくドキドキしてて、胸が高鳴ってた。
境内のベンチに腰掛けては立ち上がりを繰り返して、気をやわらげた。
すると、駅の方から、大きなツバの黄色の帽子を被って、顔を隠すようにしてミンがやってきた。
ミ「あ、マッシ―さんですか?」
マ「あ、どうも、、初めまして。」
ミ「すこし待ちましたか?」
マ「いえ、少しだけかな(笑)境内の中にお庭があるんですよ。少し歩きましょう。」
ミ「ええ地元だから知ってますよ(笑)。マッシ―さんはバンドされてるんですね?」
マ「はい、ベース弾いてます。」
ミ「ベースマンね。私はギターしか弾けないわ。」
マ「アコギで十分いいじゃないですか。」
ミ「どうもです。(笑)」
二人は境内の中に入って行った。
マ「早速ですが、ミンさんは拓郎さんや浜省さんを聴いてた、と云うのをウィキで読んだのですが、どんな点に惹かれましたか?」
ミン「それは、拓郎さんが『浜田省吾の歌で、上手く行くような恋は本当の恋じゃない、というのがあるが、まさにそのとおりだと思う』と、オールナイトニッポンで語ったと、雑誌に書いてあったのを、年配の方に聞いたからです。」
マーシー、あまりの周りくどさにガクッと来た。
マ「つ、つまり、うまくいくような恋は本当の恋じゃない、と言うのにひかれたんですね?」
ミ「そうです。と、同時にそれに共感された拓郎さんにも共感しました。」
マ「それと、みんさんは、ようつべのライブ配信で演奏をミスったのをそのままアップされてたでしょ?あれ凄いなー。でも驚きました。なんでかな?とも思いました。どうしてまた、ミスった方をチョイスしたんですか?」
ミ「あ、あれですね。私が考えたのは、いい演奏だったのにミスをしてしまったテイクとミスを隠すために編集しまくったりしたテイクとで、どっちがいいのか考えてみたんです。今の録音技術なら、ミスをたやすく編集して、それを無かったことにできます。でもそこからでは統一したライブ感を出すことはできません。私はそう考えて敢えてミスしたバージョンをアップロードしました。」
マ「はあ、なるほどねえ。それはちょっと僕としては引っかかってたんですよ。たしかに近年のレコーディングはすべてトラックも管理されてて、それに従っているとこがありますね。ライブとなると余計にその管理から離れようとする点があるかもしれませんね。」
ミ「私が尊敬する岡本太郎さんも仰った、『偶発性』が大事なんだろうと思います。太郎さんが仰った『今日の芸術はうまくあってはならない、心地よくあってはならない、綺麗であってはならない』という3原則にも通じるものがあるでしょうねえ。言い換えると『下手でもいい』ってことなんです。
マッシ―はさらに驚いた。
マ「ちょっと待ってください。いくら何でも『下手』はないんじゃないですか?下手ではプロでもやっていけないし、上手くやらないと通らないと思うんですが。。」
そこで二人は、境内のお茶屋さんに着いた。
マ「ここでおしるこでも食べましょう。」
ミ「いいとこですよね。赤の敷物が鮮やかです。」
おしるこ、2つ来た。
二人は、鯉の池が見える縁側に座った。
マ「こんなええところがあるって、地元のミンさんから見てゆったりできるでしょう?」
ミ「いいですよね。都会のオアシスって感じがします。」
マ「おしるこ美味しいですね。」
ミ「はーい、とってもいいです。」
二人はしばし味を楽しんだ。
マ「ミンさん、さっきの話のつづきなんですが、『下手でもいい』っていうのがどうもピンとこないんですよー。だってプロは下手じゃ無理でしょう?そこんとこが引っかかるのですが。。」
ミ「うーん、下手って言う言葉がまずかったかもしれませんが、太郎さんなどのモダンアートが目指した考え方に『インフィニート=不完全さ』というのがあります。たとえばミケランジェロの彫刻でも綺麗に彫られているものもあれば、粗削りなままそのまま完成品とされているものもあります。私がその『粗削りな』ものの方に魅かれるとしたらマッシ―さんは驚かれますか?」
マ「わかりませんねえ。。。天才の指先の跡に魅かれるという事ですか?」
ミ「いえ、やはりその『不完全さ』に魅かれるんです。太郎さんの戦時中の上官を写生した絵をご覧になった事ありますか?」
マ「うーん、見たかもしれません。」
ミ「はっきり言って全然岡本太郎さんらしくないですよ。そりゃ上手いって言えば上手いですよ。でも違うんですよ。誰でも持ってる様な上手さなんです。戦後、芸術の3原則を掲げて新しい世界を生み出していった太郎さんと比べたら、そこにその存在はありません。」
マ「そうなんですか。ミンさんの話を理解するには、岡本太郎さんを研究する必要性がありそうですね。」
ミ「そうかもしれませんね。私の夢は太陽の塔の前でライブする事です。それが実現したらどれだけいいか。。」
マ「是非、実現させてください!」
こうして二人は、自分たちの町の話などを十数分ほど話して、帰路についた。
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