毎日のようにニュースや天気予報で「京都の最高気温は37.5℃でした。明日も厳しい暑さになるでしょう。」と聞くとゲンナリした気持ちになります。
今年は暑さが身にしみる感じで流れる汗も半端ないのは節電を心がけているから?それとも歳のせいでしょうか(笑)
そんな猛暑もなんのその、額に汗しながらテキパキと仕事する山の職人さん達がいます。
先週、水曜日の朝。北山杉の里総合センターの駐車場に入ると、見慣れない光景が・・・
伐採されたタルキが、皮を剥いて槍組みにしてあります。
昨年の8月に「本仕込」の見学会でお勉強させてもらった時のことを思い出します。
てっぺんの葉を残すのは、じっくりと水分を蒸散させるためでしたよね。
この日から、生産組合のタルキの伐採が始まりました。前日は大安吉日。「伐り初め」といって、暦を見てよい日に1本だけでも伐っておく、そんな慣わしがあるそうです。気持ちを正して、仕事を始める。良い木であるように願いをこめて。育ててくれた山に敬意を表して。
近年、機械での皮むきが普及してきたので伐採は木の成長具合を見ながら時期を選択することが出来ますが、本来は皮が剥ける時に伐採をします。
その最初となるタルキの伐採時期は7月下旬。この時期に剥くのは、春から太った部分の身が締まって木肌が固まってきているから。身が締まっているものは肌がツルツルで、そうでないものはぶよぶよなんだそうです。
そして、夏に伐採するために春までに枝締めをします。
枝締めは伐採前の最後の枝払いのことで、これが最終の太り(年輪)を抑えて表皮の良し悪し・光沢・割れにくさを決定づけます。
特に、タルキは背割りを入れないので割れには注意しないといけません。
一番太る成長期が4月5月6月で、それ以降は水を上げるのが止まるので7月の中頃で固まります。
中と外から一気に水分を飛ばすために枝締めをすると、この時期しか剥けないということになります。
伐採の現場に潜入!
中にはよく太った木もありまして。 枝打ちや手入れを怠ったものは太くなり、「ゴロンボ」と呼ばれます。刑事コロンボではありませんf(^^);
チェーンソーでちゅい~ん!
この日は二人組で息もぴったり。倒す方向を考えて支えながら刃を入れます。
長さが3mを超えたら伐採の時期。
台杉の株です。左は伐採したばかりの切り口、右はその前に伐採した跡。これで15~20年ですから、いかに細く長く密に育っていたかがわかります。そしてまた横から次の芽が育ち20数年かけて伐採の時を待つのです。
こんなお客さんを見つけました。チェーンソーの音にも怯えず、伐採を見学?
そして皮むき作業。
伐れ伐れのタルキたち。
剥く前に「これは綺麗に剥けるなぁ。」「何でわかるんですか?」
「勘や。」
勘。それが、ずっとこの仕事に携わってきた職人さんの何にも勝る武器。
綺麗に剥かれた跡に見える、美しい木肌。
先っちょの葉を少し残してツルツルに剥きます。
剥いたばかりの皮は、しっとりと水分を含んで生々しい感じです。
乾燥の方法はそれぞれやり方があり、伐採した木をそのまま山で5日~1週間寝かしてから皮を剥く、という人もいます。
30本くらいの槍組みの中から撮影してみました。自分がとっても小さく思えます。
お日様がもうすぐ山の端に沈む頃。まだ作業は続いていました。この日は100本くらい。
黙々と作業する職人さんたち。シャツもパンツも、着替えてもすぐに汗でぐっしょりです。
職人さんの手に身を委ねるタルキたちは、エクボも可愛く何だか幸せそうに見えます。
たくさんの皮はお風呂の焚きつけなどにも使われます。きちんと纏めて、最後まで美しい仕事。それが、ここの職人さん。
伐採して皮むきを終えたタルキは槍組みのまま数日置かれ、手で触ってにちゃにちゃしなければ葉を少しだけ残して落とし、陰干しします。
そうすると残った葉は自然に茶色くなっていきます。あくまでも、木自体の持つ力を利用して、じわじわ乾燥させる。それが色艶を美しく、割れにくいタルキへと導いてくれるのです。
葉の色が変わり、再び触ってみてにちゃにちゃしていなければ、その時点で使える直材の長さでカットして保管します。
長い年月をかけて細く長く育ったタルキは、この灼熱の夏に職人さん達の手によって伐採され、ひと皮剥けた水も滴るいいタルキになりました。
建築の近代化で需要の減少、後継者不足など様々な問題をかかえている北山林業。けれどまだまだ、先人の智恵を受け継ぎいいものを創る人がいます。そしていいものを求める人もいます。
タルキの手触りが温かいのは、母なる大地に根を下ろす台杉から生まれそして、一本一本に携わった職人さんの心がこもっているからではないでしょうか。
夕暮れ迫る、でもまだ青い空を見上げるとスッと描いたように白い飛行機雲が。このタルキたちを明るい未来に運んでいってくれるような、そんな気持ちがしたのでした。(了)
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