峡中禅窟

犀角洞の徒然
哲学、宗教、芸術...

曼珠沙華 あっけらかんと 道の端 ...

2016-09-19 00:52:36 | 日記
 
曼珠沙華 あっけらかんと 道の端

夏目漱石の句です...

曼珠沙華は、何よりも血のようなその紅さ、その容姿、咲く場所、そして季節のせいでしょう、あるいは哀しく、あるいは恐ろしく、あるいは淋しく、あるいは妖しく...さまざまな思いを想起させてくれる花です。特に夕暮れ時に、西の空に傾きゆく陽の光りを受けて、畦に並ぶ沢山の緋い花が、いっそう赫赫と耀く姿は、何かこの世のものならぬ不思議な気配を辺りに漂わせます。
しかし、朝の爽やかな光りの中で見る姿は、とても可憐ですし、昼の強い日差しの中で見れば、意外なほどおとなしく、ポツンポツンと、むしろ控えめに咲いているように見えるのです。
漱石のこの句は、そんな控えめで、静かな佇まいの一瞬を、「あっけらかんと…」と見事に切り取って来ています。
妖しく私たちの心をかすかにかき乱すような不思議な魔力がかき消え、嘘のように楚々とした、呆気ないほど素直な素顔が垣間見得る一瞬です。

さて、妖しい魔法の気配を身に纏うのが、本当の姿なのか...それとも、あっけらかんと、何の神秘もなくひっそりと道の端に立つのが、本当の姿なのか。
漱石は、曼珠沙華の見せる意外な顔に驚きながらも、やはりその妖の世界の向こう側に、思いを馳せているのでしょうか...
思わしくない天候が続く中、曼珠沙華が今は盛りと咲きそろいました。

「圧力鍋」のこと...

2016-09-09 20:52:57 | 日記

 

フタが天井に刺さっているよ。圧力がかかりすぎて蓋が吹っ飛んだ圧力鍋による...

カラパイア 2015年9月7日

 

これは、凄いですね(笑)


圧力鍋を発明したのは、17世紀のフランス人、ドゥニ・パパンだとされていますね…
この人は蒸気機関の発明史において、とても重要な位置を占める人だとされています。

加熱による蒸気化の膨張力ではなく、冷却する液体化の収縮過程から動力を取り出す、「パパンの真空エンジン」というアイデアで知られているとか…
それはさておき、この人は Steam digester という、今日の圧力鍋と同じ原理の装置を発明したとされています。確か、この装置によってパパンは、名誉あるロンドンのロイヤル・ソサイェティーに迎えられたと読んだ記憶があります…
もっとも、パパンの装置はとても大掛かりで、とても家庭用などなり得ない(笑)


パパンは、ユグノーでしたから宗教弾圧でフランスから逃げてきたわけですが、貧窮のうちに世を去ったと言われています。
パパンの装置が大掛かりになるのは、仕方がないことですね…この記事から見て、圧力鍋装置の破壊力は殺傷力ありと充分認定可能です…
圧力鍋のような、日常的なものであっても、安全なものを設計し、作り出すには粘り強い研究工夫と努力の歴史が必要なのです。

*****

バブルたけなわの頃、大学に入学した私たちに、学生運動をやっているお兄さん達が色々な世話を焼いてくれ、自治会を作ろう、などと集会に呼ばれたりもしました…
その時に、革マル派の先輩が、「圧力釜爆弾」の凄い威力を教えてくれたことを思い出しました(笑)
身振り手振りを交えて、「圧力釜なんて、バカにしちゃいけないぜ! 破裂したら、本当に凄いんだぜ!」
今は遠い昔、三十年ほど前のことです(笑)


そんな物語と繋がる映画を一つご紹介...2002年の作品ですから、少し古いですが...

ドイツ映画、日本での公開名は『レボルーション6』...

ティル・シュヴァイガーが主演しています。

学生運動のメンバーが仕掛けた『圧力鍋爆弾』が、不発のまま残り、忘れられた頃に突然爆発...

依然として運動を続ける二人を除いて、燃え上がる季節を無事(?)卒業したかつての運動メンバーたちは、多くが社会に適応(?)し、成功している者もいます...

爆弾事件として警察の捜査が始まり、犯行が明らかになっては困るメンバーたちが数十年ぶりに集まり...

という作品です。

はちゃめちゃなストーリーで、悪ふざけが少しすぎる作品ですが、才気溢れる冴えが所々に見られます。

この映画に出てくるモットー

Wenn's brennt,brenn lassen!

「火が付いたら、燃やしてしまえ!」

は、学生運動の隠れた本質を一言でいいあらわしています...

ともあれ、娯楽作品ではあっても、それだけには終わらない一癖ある作品。お時間がありましたら、お試しを...

『レボルーション6』~グレゴア・シュニッツラー監督/ティル・シュヴァイガー他出演