表紙の絵は、版画家の長谷川潔さんの鳩笛でした。どちらが早いのかというと、たぶん、潔さんの作品が先にあったのだと思われます。
フォークシンガーの長谷川きよしさんは、今は京都で活動されているそうで、チャンスがあればコンサートでも行きたいんだけど、そういうライブ活動はされてるんだろうかな。あったら見に行きたいです。
NHKの「みんなのうた」が60周年ということだそうで、昔をふり返って、それぞれの「みんなのうた」がありますか? と問われていました。私も最初はネットで書き込みしたんですけど、もうそんなの忘れてしまってました。
それでふと、長谷川きよしさんの「鳩笛」を思い出して、youtubeで検索して、歌詞も調べて、少しだけ思い出せました。
歌そのものが耳に残ってたけれど、その歌の背景とか、歌との関連の思い出みたいなのはありません。ただ、懐かしさを歌ったものだったのだと今さらながら知ったところです。
当時は、ただ何となくノスタルジックで、人恋しい歌で、想起されてる人とのことがどうなったのか、気になってしまう、シンミリする歌でした。たぶん、何かの拍子にハナウタくらい歌ったかもしれない。それくらい、耳に残るフレーズもありました。
簡単な歌ではありますし、そんなに難しいメロディではないような気がします(音楽的なことはあやふやですけど)。
でも、耳に残ったんです!
70年代半ば、深夜放送を聞いていました。フトンの中でイヤホンで、眠りこけながら、何かを求めて聞いてたんでしょう。
東京のTBSラジオで、「パック・イン・ミュージック」というのが夜になると、大阪でも聞き取れました。誰かに教わったのではなくて、勝手に見つけたんだと思われます。
毎晩聴けるわけではないから、金曜だったか、土曜だったか、youtubeには愛川欽也さんの時の分があるみたいだけど、その時だったのか、違う人だったのか、そこに長谷川きよしさんが出ておられました(たぶん)。
それで、こんなギターやら、音楽やら、シャープな演奏とクールな歌声という持ち味で、単純なフォークというんではなくて、二三歩引いた感じのフォークで、とにかく独自の世界を作っておられる人だというのは知ってたような気がします。
深夜放送で出会ったのが先か、「みんなのうた」で出会ったのが先か、どちらか分かりませんけど、たぶん、そのころにきよしさんの音楽には出会っています。
鳩笛に 亡き友をおもう
岩木山 雨にけむる日
岩木山なんて、どんなところにあるのか、どんな山なのか、知ってたか知らなかったか。よくは分かりませんが、友だちとの思い出を呼び起こしてくれる鳩笛というものがあったようです。
70年代、「進歩と調和」も言われたけれど、過去への回帰を伝えてくれる人たちがいました。音楽はのんびり行こうよ、という人たちがいたはずです。楽器としてはメジャーじゃないけど、オカリナという楽器は何とも言えない懐古的な楽器で、中学生には憧れでした。
テレビ番組では、オカリナを吹けば、怪獣を操れたり、きれいな髪の女の子が振り向いてくれたり、海岸の崖に謎の洞窟が現れたり、不思議なことが起こるような、そんな奇跡の起こる楽器でした。
鳩笛も、その延長線上にあって、人を過去へと誘ってくれる気がしました。実際の音を聞いてもいないくせに。
鳩笛をくちびるにあてる
思い出は雲と流れて
鳩笛に涙する人よ
君もまた津軽生まれか
「津軽」という不思議なことばも知りました。大阪の中学生には遠くて、イメージできない場所ではあったけれど、行ったこともないのに、どこか懐かしい、いつか訪れてみたい場所になりました。
そこで、どれほどの出会いがあるのかはわからないけど、旅ごころも見つけられたでしょうか。
改めて津軽の鳩笛を探してみたら、実に穏やかで優しい感じでした。うちにも一つでも二つでも欲しくなりました。とてもポップだし、とてもノスタルジックでした。