たぶん、小学校の四年生くらいの時、刷り込まれたから(?)、ボクはスティーブ・マックイーンさんが大好きでした。
「パピヨン」の不屈の脱走劇を図る主人公には、もう限りなく尊敬してしまいました(あまりに深い執念で、根性なしの自分には無理だなとは思ったけれど)。豪華キャストの「大脱走」、あの映画でリチャード・アッテンボローさんのしたたかさも知ったけれど、それ以上にカッコイイのはマックイーンさんで、穴掘って、執拗にナチスから逃れようとする彼のたくましさ、ボクたちだけではなくて、アメリカのたくさんの若者や子どもたちに負けじ魂を届けたことでしょう。
「タワーリングインフェルノ」では消防隊の隊長でしたっけ。とにかく、マックイーンさんが出たら、その場面が輝いて見えた。何もかも名作だし、マックイーンさん見たさに、ボクたちは映画館にあこがれたことでしょう。
昨日、BSで見た「荒野の七人」(1960)は、130分くらいあったそうで、こんなに長いとは知らなかった。短縮版でしか見たことがなかったのかもしれません。フィルムも修復されたバージョンだったと思います。
内容は、黒澤明さんの「七人の侍」「隠し砦の三悪人」など、パクる作品をそのままベースにして、それを西部劇にしてしまったものでした。
ですから、盗賊に苦しめられる村人が、ガンマンを雇って、盗賊たちをやっつけるという形は全く同じ。村で行われるお祭りは、「七人の侍」でもそんなシーンがあったかな、うろ覚えなんですけど、音楽はまるで東宝の怪獣映画にもあったような民族舞踊風のものでした。これはメキシコの民俗音楽ではないかもな、と見ていました。
そういえば、一番若いガンマンに惚れる村の娘さんも、メキシコ系ではなくて、アフリカ系の黒髪の美人さんだったような気がしました。
★ Rosenda Momtereosさんは、去年の12月29日に83歳で亡くなっていました。メキシコの女優さんだったそうです。知りませんでした。アフリカ系ではなかった。
まあ、そんなことはどうでもいいことでした。とにかく、マックイーンさんでした。ボクは小さい時から、マックイーンさんが出る映画は無条件に楽しいものと思って見るようにしていた。
晩年のマックイーンさんは、宗教とか、違う方面の作品に出たり、私たちのイメージ通りの役をやってくれなかったけれど、70年代が終わるまで、ずっとボクたちを支えてくれて、ここぞという時にはニヤッと合図をしてくれるし、時にはムチャクチャ頑張るし、誰かの話し相手もしてくれるし、主役でもあるし、サポート役でもある、心強いヒーローであり続けてくれました。
ボクたちは、鉄条網をバイクでぶっ飛ばそうとしたり、独房でキャッチボールをしてたり、いつもクールで熱い彼の魂を感じていた。
それで、彼から遠ざかって40年の歳月が経過したわけですか。それで、自分もくたびれてきて、再び原点回帰をめざそうとしている。
そこにボクたちの魂があった。「荒野の七人」は何度かテレビで見たはずです。何年かに一回やってくる放映の時を、子どもたちはワクワクしながら待っていたはずです。
みんな西部劇が好きでした。このイメージが強すぎて、私はジョン・フォードさんとジョン・ウェインさんの作品など、イマイチ入り込めなかったし、他にもたくさんの西部劇の名作があったと思いますが、それらを受け入れるには時間がかかりました。
ゲーリー・クーパーの「真昼の決闘」(1952)、グレゴリー・ペックさんの「大いなる西部」(1958)、その他みんな、かなり後になって知ることができました。音楽もみんなよくって、西部劇音楽を集めたCDを昔はよく聞きました。今は、CDプレーヤーがないから、聞けないんですけど。
ボクたちは、長い間、マックイーンさんたちから遠ざかっていた。そして、今ごろになって原点回帰しようと躍起になっている。回帰したって、何も生まれては来ないだろうけど、でも、魂だけは火が付く気がします。
そう、マックイーンさんの魂を胸に、コロナの日々を生きていこう。あまり世の中はいい方向には向かっていないけれど、でも、それはいけないと声を上げ、文句を言い、70年代的な連帯を胸に、あなたたちは大事なものを忘れている。大事なのは人々の安寧であり、個人の繁栄はその後なのだ。いくら自分のためを思って行動しても、それは何も生まないし、その虚しさをかみしめなくちゃ! 世の中の権力者たちに教えてあげたいけど、彼らは「荒野の七人」なんて見ないと思うし、マックイーンさんをただの役者としか見ないでしょう。そこにささやかな魂があるの、わかんないんだもんな。