ムクゲはピークです。ネムの花はたいてい終わってしまったけれど、ムクゲは元気。近所にサルスベリの木がないから見られないけど、百日紅だって咲いてますね、きっと!
夏は怒涛のように押し寄せています。
夕暮れに、それらの花を見たら、
「お疲れ様。今日も一日終わったね。もうすぐ夜だね。」
そう言ってもらっている感じです。だから私は、
「ちょいと、写真を撮らせてくださいね。夕日に照らされてるキミはなんとも言えない、浮遊感があるよ。残照いっぱい浴びてる。この瞬間がすべて、みたいな感じだよ。」
みたいにおだてて写真を撮るのでした。
木槿さんは、私の気持ちなんかお見通しで、
「せいぜい撮りなさい。へたくそなあなたに付き合ってあげますよ。」
そういう感じかな。
電車を撮るために、たまたま鳥居のところにおりました。夕日に照らされて鳥居はしんどそうでした。
「何やってるの? 電車が来るまで待っているのかい。のんきなことだね。」
「はい、コツコツと同じような写真を撮っているんです。スミマセン!」
「好きなものがあるのはいいことさ。せいぜい頑張りなさい。ただし、鳥居の中に電車を入れる構図はダメだよ。電車は神様ではないからね。」
「はい、そうします。でも、夕日は入れてもいいですか? 逆光でシルエットがいいかなと思ったんですけど……」
「たいしたものは撮れないと思うけど、キミがやりたいならやりなさい。やりたくなかったら、もちろんやめなさい。すべてキミの判断でやりなさい。私たちはやめさせはしない。ただそれぞれの限界を見ているだけなんだよ。」
「はい、わかりました。へたくそですけど、撮ります! はい、バシャ」
夕暮れに、穴から出てきて、羽を伸ばしているセミを見つけました。風が吹いてユラユラしていますが、全く無言のまま、じっとぶらさがっていました。
彼には、ただやみくもにカメラを向けました。セミはピントが合わないようにユラユラしたり、目を怒らせたりしていたけれど、何枚か撮らせてもらった。
かくして私は、蚊にたくさん食われたけれど、セミのこの世に出てきた姿を撮らせてもらいました。羽が緑だなんて、少し感動的でした。