古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!)
【別冊 編集後記】
2024(令和6)年4月15日号(vol.17 no.7/No.364)
「私の読書論183-トールキン『指輪物語』(第一巻・第二巻)70周年」
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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2024(令和6)年4月15日号(vol.17 no.7/No.364)
「私の読書論183-トールキン『指輪物語』(第一巻・第二巻)70周年」
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今年1954年から70年となります。
この年には、偉大なる人々や偉大なる創作物が生まれています。
最初に、1月生まれの
“ユーミン”の愛称で知られる荒井由実、現・松任谷由実さん。
かつてオリンピックの野球の「長嶋ジャパン」で、
長嶋さんが倒れて代役の監督を務めた、
現役時代は「絶好調男」と呼ばれた、元プロ野球巨人軍の中畑清さん。
歴代最長の任期を記録した元首相、故・安倍晋三さん。
(もう一人、一部の人々――主に左利きの、
そのまた一部の人たちの間では、
左利き界の“第一人者”とか“大師匠”とか呼ばれる、
「レフティやすお」さんも1月生まれです)
創作物でいいますと、最新作がアカデミー賞を受賞したことで
改めて話題となっている<ゴジラ>シリーズの第一作「ゴジラ」。
海外では、そう、今回取り上げます『指輪物語』です。
『指輪物語』は全三巻(普及している邦訳版では全六巻)ですが、
その第一巻(邦訳版「旅の仲間」上下)、
第二巻(同「二つの塔」上下)が、本国イギリスで出版されたのが、
この年でした。ちなみに、第三巻(同「王の帰還」上下)は翌1955年。
ということで今回は、
J・R・R・トールキンの『指輪物語』について――。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆ 1954年の奇跡!? ◆
~ 『指輪物語』『ホビットの冒険』の作家トールキン ~
『指輪物語』第一巻・第二巻出版(1954年)から70周年
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
●『最新版 指輪物語』文庫版・全六巻(評論社)
2022年に、『指輪物語』の邦訳版の出版元・評論社から、
『最新版 指輪物語』の文庫版・全六巻が出ました。
2022年9月、AmazonのPrime Videoプライム・ビデオ
『ロード・オブ・ザ・リング――力の指輪 第1シーズン』
の配信に合わせたもののようで、その広告の帯が付いています。
出版社の紹介文にも、
《ファンタジー文学の最高峰『指輪物語』が
日本で初刊行された1972年から奇しくも50年目の2022年、
訳文と固有名詞を全面的に見直した日本語訳の完成形として、
本最新版をお届けします。》
この文庫のことは知らなかったのですが、
これという気になる本がないなあ、と近所の本屋さんをのぞいていて、
見つけました。
従来あった文庫版は、活字が小さくて、文庫派の私でしたが、
買う気になれずにいたものでした。
本屋さんにあったのは、この全六巻だけでしたが、
第七巻「資料編」も2023年に出ています。
*
『最新版 指輪物語1 旅の仲間 上』J・R・R・トールキン/著
瀬田貞二, 田中明子/訳 評論社文庫 2022/10/19
《遠い昔、魔王サウロンが、悪しき力の限りを注ぎ込んで作った、
指輪をめぐる物語。全世界に、一億人を超えるファンを持つ
不滅のファンタジーが、ここに幕を開ける。》
631ページ
『最新版 指輪物語2 旅の仲間 下』J・R・R・トールキン/著
瀬田貞二, 田中明子/訳 評論社文庫 2022/10/19
《瀬田・田中訳の集大成
黒の乗手の追跡から、辛くも逃れたフロドが目を覚ましたところは、
「裂け谷」のエルロンドの館。翌朝、モルドールに抵抗する種族――
魔法使い、エルフ、人間、ドワーフ、ホビット――の代表が参加する
会議がエルロンドの主催で開かれ、指輪をどのように扱うかについて
話し合われた。さて、その決定は……》
547ページ
『最新版 指輪物語3 二つの塔 上』J・R・R・トールキン/著
瀬田貞二, 田中明子/訳 評論社文庫 2022/10/19
《瀬田・田中訳の集大成
ガンダルフを失った悲しみを、ロスローリエンで癒した一行は、
大河アンドゥインを漕ぎ下り、とうとう別れ道へ差し掛かる。
フロドの指輪棄却の決意を知ったボロミルは、それを奪おうとする。
逃げ出すフロド。悔悟したボロミルは、オークとの戦いに倒れ、
メリーとピピンはさらわれる。ここに旅の仲間は離散した……》
545ページ
『最新版 指輪物語4 二つの塔 下』J・R・R・トールキン/著
瀬田貞二, 田中明子/訳 評論社文庫 2022/10/19
《瀬田・田中訳の集大成
ボロミルから逃れて一人モルドールに向かおうとするフロド。
しかし、忠実なサムは、出し抜かれずに後を追う。
大河アンドゥインの東側に連なる急峻エミュン・ムイルの荒涼たる
山中を、やっとのことで抜け出した二人だったが、
その後ろに忍び寄る一つの影が……》
418ページ
『最新版 指輪物語5 王の帰還 上』J・R・R・トールキン/著
瀬田貞二, 田中明子/訳 評論社文庫 2022/10/19
《瀬田・田中訳の集大成
堕落した魔法使いサルマンが所持していたパランティールを、
好奇心に勝てずに覗き込んだピピンは、魔王サウロンの見出すところ
となる。ガンダルフは、パランティールをアラゴルンに預け、
ピピンを連れてミナス・ティリスへ。
一方ローハン軍召集のためにエドラスに向かう騎士たち。
空にはナズグールが飛び交い、風雲急を告げる中、
物語は佳境へと近づく。》
436ページ
『最新版 指輪物語6 王の帰還 下』J・R・R・トールキン/著
瀬田貞二, 田中明子/訳 評論社文庫 2022/10/19
《瀬田・田中訳の集大成
フロドをオークの手から奪い返した忠実なサム。
二人は、助け合いながら最後の使命を果たすべく滅びの罅裂を目指す。
一方、冥王の目をフロドたちから逸らすべく、黒門前に兵を進めた
ガンダルフやアラゴルンをはじめとする西国の勇士たちは、
圧倒的な兵力の差のため暗黒の渦に吞み込まれようとしていた……
ここに「一つの指輪」をめぐる物語の大団円を迎える。》
403ページ
『最新版 指輪物語7 追補編』J・R・R・トールキン/著 瀬田貞二,
田中明子/訳 評論社文庫 2023/5/30
《瀬田、田中訳の完成形として、日本初刊行以来50年の
2022年に刊行を始めた『最新版指輪物語』の最終巻。
固有名詞と訳文の見直しを行った。本編では語られていない
歴史の記述、固有名詞便覧など、『指輪物語』世界の案内書。》
●著者J・R・R・トールキンについて
――出版社より(著者について)
1892~1973年。南アフリカのブルームフォンテンに生まれ、3歳のとき、
イギリスに移住。オックスフォード大学卒業。第一次世界大戦に従軍後、
1925年からオックスフォード大学教授。中世の英語学と文学を中心に
講じた。『指輪物語』は、20世紀最高のファンタジーとされる。
これに先立つ物語として『ホビットの冒険』『シルマリルの物語』
『ベレンとルーシエン』があるほか、児童向けの作品に
『トールキン小品集』『サンタ・クロースからの手紙』などがある。
というわけで、2023年に没後50年として出版されたのが、
『ユリイカ 2023年11月臨時増刊号』総特集◎J・R・R・トールキン
―没後50年――異世界ファンタジーの帰還― 青土社 2023/10/5
(Eureka 2023 no.811 vol.55-14)
《『指輪物語』や『ホビットの冒険』といった作品において壮大かつ
緻密な世界を構築し、様々な”読み直し”の旋風を巻き起こしてきた
J・R・R・トールキン。後続世代による模倣と継承から、映像や
ゲームがもたらしたビジュアライズの時代を経て、没後から半世紀が
経つ本年、終わらざりしトールキン論に臨みたい。》
目次
❖異世界は何度でも /上橋菜穂子 /小谷真理 /井辻朱美
/パトリック・カリー(訳=鏡リュウジ)
❖汲み尽くしがたい源流 /鶴岡真弓 /一條麻美子 /石野裕子
❖座談会 /大久保ゆう+川野芽生+逆卷しとね
❖遠く聞ゆるは懐かしき調べ /伊藤尽 /清水知子 /宮本裕子
/木澤佐登志 /森瀬繚
❖テーブルを囲んで /上田明
❖創造のカレイドスコープ /辺見葉子 /髙橋勇
/アラリック・ホール(訳=岡本広毅)
❖エルフ語入門 /伊藤尽
❖言葉は輪廻する /山本史郎 /小野文 /小澤実
❖叙述から始めよ /桑木野幸司 /勝田悠紀 /岡田進之介
/石倉敏明 /渡邉裕子
❖資料 /髙橋勇 編
●『指輪物語』の思い出
私がこの作品を読んでのは、1979年6月から7月の初めについて。
この作品を読もうと思ったのは、山口の女子大生からお便りをもらい、
その中にオススメ本としてこの本のことが書かれていたからでした。
これではよく事情がおわかりにならないでしょうから、
もう少し説明します。
当時の私の愛読雑誌のひとつだった、
故やなせたかしさん編集の『詩とメルヘン』の読者投書欄に、
私の投書が掲載され、それを読んだ人が手紙をくれたわけです。
以前このメルマガでも紹介しました、ハヤカワSF文庫から出た、
ゼナ・ヘンダースン『果てしなき旅路』のような作品を書いてみたい、
というのが私の投書でした。
疎外された立場の人たちが仲間を得て、彼らの手助けもあり、
自分を肯定できるようになり自立して行く、といった内容の作品で、
私のお気に入りの作品でした。
*参照:
【ゼナ・ヘンダースン <ピープル>シリーズ
『果てしなき旅路』『血は異ならず』ハヤカワ文庫SF】
『果てしなき旅路』ゼナ・ヘンダースン/著 深町眞理子/訳
ハヤカワ文庫 SF ピープル・シリーズ 1978/7/1(1959)
・2023(令和5)年1月15日号(No.334)「私の読書論165-
私の年間ベスト3・2022年フィクション系(前編)総リスト&再読編」
・『レフティやすおのお茶でっせ』2023.1.15
私の読書論165-私の年間ベスト3・2022年フィクション系(前)総リスト&再読編
-楽しい読書334号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/01/post-ce3d4b.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/963db458297d62363a53bf4aaefe9930
・2023(令和5)年1月31日号(No.335)「私の読書論166-
私の年間ベスト3・2022年フィクション系(後編)再読編&初読編」
・『レフティやすおのお茶でっせ』2023.1.31
私の読書論166-私の年間ベスト3・2022年フィクション系(後)初読編
-楽しい読書335号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/01/post-059ad0.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/3d8f4210a27677ac55d433cea1778596
それに対して、お返しにご自分のお気に入りの作品として、
この『指輪物語』が紹介されていました。
さっそく図書館で借りて読み始めました。
長い作品でしたが、面白く読んだ記憶があります。
その後、この作品の前作というべき児童向けの『ホビットの冒険』も
楽しみました。
45年前の思い出話です。
*
『ホビットの冒険 上』J・R・R・トールキン/著 瀬田 貞二/訳
岩波少年文庫58 2000/8/18
《ひっこみじあんで、気のいいホビット小人のビルボ・バギンズは、
ある日、魔法使いガンダルフと13人のドワーフ小人に誘いだされて、
竜に奪われた宝をとり返しに旅立つ。79年刊の新版。》
336ページ
『ホビットの冒険 下』J・R・R・トールキン/著 瀬田 貞二/訳
岩波少年文庫59 2000/8/18
《魔法の指輪を手に入れたビルボとその一行は、やみの森をぬけ、
囚われた岩屋からもなんとか脱出に成功。ビルボたちは、
いよいよ恐ろしい竜スマウグに命がけの戦いを挑む。79年刊の新版。》
282ページ
『新版 ホビット――ゆきてかえりし物語 <第四版・注釈版>』
J・R・R・トールキン/著 山本史郎/訳 原書房 2012/11/12
《映画「ロード・オブ・ザ・リング」で世界中にブームをまきおこした
J.R.R.トールキンの『指輪物語』。 その前章の物語『ホビット』の
定本(第四版)の新訳決定版! 著者自筆の挿絵および各国語版の挿絵を
収録。 時代を越えて読み継がれる“名作"の理解を助ける詳細な
注釈付の愛蔵保存版。 2012年12月、3部作の第1弾
「ホビット 思いがけない冒険」がついにロードショー!》
470ページ
(文庫)
『ホビット〈上〉―ゆきてかえりし物語』J・R・R・トールキン/著
山本史郎/訳 原書房 2012/11/1
《時代を越えて読み継がれる不朽の名作『ホビット』を、
さまざまな角度から詳細な注釈をつけた新訳決定版。
トールキン自筆の挿絵つき。持ち歩きしやすい文庫判。》
362ページ
『ホビット〈下〉―ゆきてかえりし物語』J・R・R・トールキン/著
山本史郎/訳 原書房 2012/11/1
422ページ
●『指輪物語』の内容について
『指輪物語』は1960年代に欧米の若者たちのあいだで大いに読まれた、
といわれています。
1960年台後半、ベトナム戦争に嫌気したアメリカの若者たちのあいだで、
カンターカルチャーとしてファンタジーが流行し、
『指輪物語』のペーパーバックが300万部も売れたといわれています。
日本では、1972年に翻訳刊行されました。
『ゴジラ』が水爆実験の影響で出現した、とされているのに対して、
この作品は「指輪」が核兵器を表している、という読み方もあります。
実際には、戦時中から書かれた物語ということなので、
その時代背景が著者に影響している、
というのが本当のところではないか、といわれています。
さて、なにしろ45年ほど前に読んだっきりですので、
詳しいストーリーも今は忘れてしまい、
あらためて『ホビット』から読み直している状況で、
まだ第一巻「旅の仲間」(上)巻を読んでいるところですので、
具体的な感想などはまだ書けません。
『ホビット』も昔読んだ、岩波少年文庫版『ホビットの冒険』ではなく、
20年ほど前に手に入れたまま放置してあった旧版、
『ホビット―ゆきて帰りし物語― 第四版注釈版』のほうです。
図書館で岩波少年文庫版の方ものぞいてみましたが、
Amazonのレヴューにもあるように、
ひらがなが多くおとなにはちょっと読みづらく感じました。
おとなが読むなら、
原書房版のおとな向けの翻訳の方が適しているかもしれません。
●おとな向けファンタジー『指輪物語』
『ホビット』と『指輪物語』の違いについて書いておきましょう。
一言でいえば、「子供向け」と「おとな向け」ということになります。
その分、ストーリーがより複雑になり、
背景となるムードもより深刻になっています。
『ホビット』は、ホビット族のビルボ・バギンズが主人公で、
ドワーフの王様とその一行がドラゴンに奪われたお宝を奪回にゆく旅に、
魔法使いガンダルフの推薦を受けて「忍び」役として同行し、
お宝を奪い返したご褒美と、偶然手に入れた指にはめると姿を消せる、
魔法の「指輪」を持って帰って来るという、副題にあるように、
文字通り<ゆきてかえりし物語>で、
その途中で出会う冒険の数々を語るものです。
『指輪物語』は、このときの「指輪」が実は、
魔王サウロンが探している魔法の指輪で、
この世界を統べることができるというしろもので、
これを奪われないようにどうにかしよう、とビルボから指輪を預かった
養子のフロド・バギンズが仲間たちと旅に出る、というものです。
「黒の乗手」という悪の一味たちから追われる旅です。
――私は、今はまだその辺までですね。
今どきの小説と違って、会話の応酬で進め、
ジョットコースターのようなストーリー展開で読者を離さない、
といったものとは異なり、
詩というか歌も交えて、ゆったりとした地の文で読ませるお話、
というイメージです。
『ホビット』も子供向けにしては長いお話でしたが、
『指輪物語』もまた長大な作品です。
残り5巻とちょっと。
何ヶ月後になるかわかりませんが、読み終えたら
具体的なストーリーの紹介や感想など書いてみたい、と思います。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本誌では、「私の読書論183-トールキン『指輪物語』(第一巻・第二巻)70周年」と題して、今回も全文転載紹介です。
『指輪物語』の映画化作品三部作もありました。
そちらで知っているよ、という人も多いかと思います。
あるいはゲームも出ているそうで、そちらで知ってるという人もいるのかもしれません。
映画にしろゲームにしろどちらにしろ、それはそれでいいのですけれど、やはり本の方を読んでいただきたいと思っています。
それがそもそもの始まりだから。
小説というのは、言葉の芸術なのです。
歌なども言葉の芸術の一つですけれど、これには音、あるいは声が伴います。
しかし、小説のほうは、言葉のみ、それも文字のみの世界です。
それは、人間だけが楽しめる世界といっても過言ではありません。
そういう頭の中だけの空想の世界で遊ぶのも楽しいものなんですよ。
・・・
*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』
『レフティやすおのお茶でっせ』
〈メルマガ「楽しい読書」〉カテゴリ
--
『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
私の読書論183-トールキン『指輪物語』70周年-楽しい読書364号
--
【別冊 編集後記】
2024(令和6)年4月15日号(vol.17 no.7/No.364)
「私の読書論183-トールキン『指輪物語』(第一巻・第二巻)70周年」
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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2024(令和6)年4月15日号(vol.17 no.7/No.364)
「私の読書論183-トールキン『指輪物語』(第一巻・第二巻)70周年」
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今年1954年から70年となります。
この年には、偉大なる人々や偉大なる創作物が生まれています。
最初に、1月生まれの
“ユーミン”の愛称で知られる荒井由実、現・松任谷由実さん。
かつてオリンピックの野球の「長嶋ジャパン」で、
長嶋さんが倒れて代役の監督を務めた、
現役時代は「絶好調男」と呼ばれた、元プロ野球巨人軍の中畑清さん。
歴代最長の任期を記録した元首相、故・安倍晋三さん。
(もう一人、一部の人々――主に左利きの、
そのまた一部の人たちの間では、
左利き界の“第一人者”とか“大師匠”とか呼ばれる、
「レフティやすお」さんも1月生まれです)
創作物でいいますと、最新作がアカデミー賞を受賞したことで
改めて話題となっている<ゴジラ>シリーズの第一作「ゴジラ」。
海外では、そう、今回取り上げます『指輪物語』です。
『指輪物語』は全三巻(普及している邦訳版では全六巻)ですが、
その第一巻(邦訳版「旅の仲間」上下)、
第二巻(同「二つの塔」上下)が、本国イギリスで出版されたのが、
この年でした。ちなみに、第三巻(同「王の帰還」上下)は翌1955年。
ということで今回は、
J・R・R・トールキンの『指輪物語』について――。
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◆ 1954年の奇跡!? ◆
~ 『指輪物語』『ホビットの冒険』の作家トールキン ~
『指輪物語』第一巻・第二巻出版(1954年)から70周年
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●『最新版 指輪物語』文庫版・全六巻(評論社)
2022年に、『指輪物語』の邦訳版の出版元・評論社から、
『最新版 指輪物語』の文庫版・全六巻が出ました。
2022年9月、AmazonのPrime Videoプライム・ビデオ
『ロード・オブ・ザ・リング――力の指輪 第1シーズン』
の配信に合わせたもののようで、その広告の帯が付いています。
出版社の紹介文にも、
《ファンタジー文学の最高峰『指輪物語』が
日本で初刊行された1972年から奇しくも50年目の2022年、
訳文と固有名詞を全面的に見直した日本語訳の完成形として、
本最新版をお届けします。》
この文庫のことは知らなかったのですが、
これという気になる本がないなあ、と近所の本屋さんをのぞいていて、
見つけました。
従来あった文庫版は、活字が小さくて、文庫派の私でしたが、
買う気になれずにいたものでした。
本屋さんにあったのは、この全六巻だけでしたが、
第七巻「資料編」も2023年に出ています。
*
『最新版 指輪物語1 旅の仲間 上』J・R・R・トールキン/著
瀬田貞二, 田中明子/訳 評論社文庫 2022/10/19
《遠い昔、魔王サウロンが、悪しき力の限りを注ぎ込んで作った、
指輪をめぐる物語。全世界に、一億人を超えるファンを持つ
不滅のファンタジーが、ここに幕を開ける。》
631ページ
『最新版 指輪物語2 旅の仲間 下』J・R・R・トールキン/著
瀬田貞二, 田中明子/訳 評論社文庫 2022/10/19
《瀬田・田中訳の集大成
黒の乗手の追跡から、辛くも逃れたフロドが目を覚ましたところは、
「裂け谷」のエルロンドの館。翌朝、モルドールに抵抗する種族――
魔法使い、エルフ、人間、ドワーフ、ホビット――の代表が参加する
会議がエルロンドの主催で開かれ、指輪をどのように扱うかについて
話し合われた。さて、その決定は……》
547ページ
『最新版 指輪物語3 二つの塔 上』J・R・R・トールキン/著
瀬田貞二, 田中明子/訳 評論社文庫 2022/10/19
《瀬田・田中訳の集大成
ガンダルフを失った悲しみを、ロスローリエンで癒した一行は、
大河アンドゥインを漕ぎ下り、とうとう別れ道へ差し掛かる。
フロドの指輪棄却の決意を知ったボロミルは、それを奪おうとする。
逃げ出すフロド。悔悟したボロミルは、オークとの戦いに倒れ、
メリーとピピンはさらわれる。ここに旅の仲間は離散した……》
545ページ
『最新版 指輪物語4 二つの塔 下』J・R・R・トールキン/著
瀬田貞二, 田中明子/訳 評論社文庫 2022/10/19
《瀬田・田中訳の集大成
ボロミルから逃れて一人モルドールに向かおうとするフロド。
しかし、忠実なサムは、出し抜かれずに後を追う。
大河アンドゥインの東側に連なる急峻エミュン・ムイルの荒涼たる
山中を、やっとのことで抜け出した二人だったが、
その後ろに忍び寄る一つの影が……》
418ページ
『最新版 指輪物語5 王の帰還 上』J・R・R・トールキン/著
瀬田貞二, 田中明子/訳 評論社文庫 2022/10/19
《瀬田・田中訳の集大成
堕落した魔法使いサルマンが所持していたパランティールを、
好奇心に勝てずに覗き込んだピピンは、魔王サウロンの見出すところ
となる。ガンダルフは、パランティールをアラゴルンに預け、
ピピンを連れてミナス・ティリスへ。
一方ローハン軍召集のためにエドラスに向かう騎士たち。
空にはナズグールが飛び交い、風雲急を告げる中、
物語は佳境へと近づく。》
436ページ
『最新版 指輪物語6 王の帰還 下』J・R・R・トールキン/著
瀬田貞二, 田中明子/訳 評論社文庫 2022/10/19
《瀬田・田中訳の集大成
フロドをオークの手から奪い返した忠実なサム。
二人は、助け合いながら最後の使命を果たすべく滅びの罅裂を目指す。
一方、冥王の目をフロドたちから逸らすべく、黒門前に兵を進めた
ガンダルフやアラゴルンをはじめとする西国の勇士たちは、
圧倒的な兵力の差のため暗黒の渦に吞み込まれようとしていた……
ここに「一つの指輪」をめぐる物語の大団円を迎える。》
403ページ
『最新版 指輪物語7 追補編』J・R・R・トールキン/著 瀬田貞二,
田中明子/訳 評論社文庫 2023/5/30
《瀬田、田中訳の完成形として、日本初刊行以来50年の
2022年に刊行を始めた『最新版指輪物語』の最終巻。
固有名詞と訳文の見直しを行った。本編では語られていない
歴史の記述、固有名詞便覧など、『指輪物語』世界の案内書。》
●著者J・R・R・トールキンについて
――出版社より(著者について)
1892~1973年。南アフリカのブルームフォンテンに生まれ、3歳のとき、
イギリスに移住。オックスフォード大学卒業。第一次世界大戦に従軍後、
1925年からオックスフォード大学教授。中世の英語学と文学を中心に
講じた。『指輪物語』は、20世紀最高のファンタジーとされる。
これに先立つ物語として『ホビットの冒険』『シルマリルの物語』
『ベレンとルーシエン』があるほか、児童向けの作品に
『トールキン小品集』『サンタ・クロースからの手紙』などがある。
というわけで、2023年に没後50年として出版されたのが、
『ユリイカ 2023年11月臨時増刊号』総特集◎J・R・R・トールキン
―没後50年――異世界ファンタジーの帰還― 青土社 2023/10/5
(Eureka 2023 no.811 vol.55-14)
《『指輪物語』や『ホビットの冒険』といった作品において壮大かつ
緻密な世界を構築し、様々な”読み直し”の旋風を巻き起こしてきた
J・R・R・トールキン。後続世代による模倣と継承から、映像や
ゲームがもたらしたビジュアライズの時代を経て、没後から半世紀が
経つ本年、終わらざりしトールキン論に臨みたい。》
目次
❖異世界は何度でも /上橋菜穂子 /小谷真理 /井辻朱美
/パトリック・カリー(訳=鏡リュウジ)
❖汲み尽くしがたい源流 /鶴岡真弓 /一條麻美子 /石野裕子
❖座談会 /大久保ゆう+川野芽生+逆卷しとね
❖遠く聞ゆるは懐かしき調べ /伊藤尽 /清水知子 /宮本裕子
/木澤佐登志 /森瀬繚
❖テーブルを囲んで /上田明
❖創造のカレイドスコープ /辺見葉子 /髙橋勇
/アラリック・ホール(訳=岡本広毅)
❖エルフ語入門 /伊藤尽
❖言葉は輪廻する /山本史郎 /小野文 /小澤実
❖叙述から始めよ /桑木野幸司 /勝田悠紀 /岡田進之介
/石倉敏明 /渡邉裕子
❖資料 /髙橋勇 編
●『指輪物語』の思い出
私がこの作品を読んでのは、1979年6月から7月の初めについて。
この作品を読もうと思ったのは、山口の女子大生からお便りをもらい、
その中にオススメ本としてこの本のことが書かれていたからでした。
これではよく事情がおわかりにならないでしょうから、
もう少し説明します。
当時の私の愛読雑誌のひとつだった、
故やなせたかしさん編集の『詩とメルヘン』の読者投書欄に、
私の投書が掲載され、それを読んだ人が手紙をくれたわけです。
以前このメルマガでも紹介しました、ハヤカワSF文庫から出た、
ゼナ・ヘンダースン『果てしなき旅路』のような作品を書いてみたい、
というのが私の投書でした。
疎外された立場の人たちが仲間を得て、彼らの手助けもあり、
自分を肯定できるようになり自立して行く、といった内容の作品で、
私のお気に入りの作品でした。
*参照:
【ゼナ・ヘンダースン <ピープル>シリーズ
『果てしなき旅路』『血は異ならず』ハヤカワ文庫SF】
『果てしなき旅路』ゼナ・ヘンダースン/著 深町眞理子/訳
ハヤカワ文庫 SF ピープル・シリーズ 1978/7/1(1959)
・2023(令和5)年1月15日号(No.334)「私の読書論165-
私の年間ベスト3・2022年フィクション系(前編)総リスト&再読編」
・『レフティやすおのお茶でっせ』2023.1.15
私の読書論165-私の年間ベスト3・2022年フィクション系(前)総リスト&再読編
-楽しい読書334号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/01/post-ce3d4b.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/963db458297d62363a53bf4aaefe9930
・2023(令和5)年1月31日号(No.335)「私の読書論166-
私の年間ベスト3・2022年フィクション系(後編)再読編&初読編」
・『レフティやすおのお茶でっせ』2023.1.31
私の読書論166-私の年間ベスト3・2022年フィクション系(後)初読編
-楽しい読書335号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/01/post-059ad0.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/3d8f4210a27677ac55d433cea1778596
それに対して、お返しにご自分のお気に入りの作品として、
この『指輪物語』が紹介されていました。
さっそく図書館で借りて読み始めました。
長い作品でしたが、面白く読んだ記憶があります。
その後、この作品の前作というべき児童向けの『ホビットの冒険』も
楽しみました。
45年前の思い出話です。
*
『ホビットの冒険 上』J・R・R・トールキン/著 瀬田 貞二/訳
岩波少年文庫58 2000/8/18
《ひっこみじあんで、気のいいホビット小人のビルボ・バギンズは、
ある日、魔法使いガンダルフと13人のドワーフ小人に誘いだされて、
竜に奪われた宝をとり返しに旅立つ。79年刊の新版。》
336ページ
『ホビットの冒険 下』J・R・R・トールキン/著 瀬田 貞二/訳
岩波少年文庫59 2000/8/18
《魔法の指輪を手に入れたビルボとその一行は、やみの森をぬけ、
囚われた岩屋からもなんとか脱出に成功。ビルボたちは、
いよいよ恐ろしい竜スマウグに命がけの戦いを挑む。79年刊の新版。》
282ページ
『新版 ホビット――ゆきてかえりし物語 <第四版・注釈版>』
J・R・R・トールキン/著 山本史郎/訳 原書房 2012/11/12
《映画「ロード・オブ・ザ・リング」で世界中にブームをまきおこした
J.R.R.トールキンの『指輪物語』。 その前章の物語『ホビット』の
定本(第四版)の新訳決定版! 著者自筆の挿絵および各国語版の挿絵を
収録。 時代を越えて読み継がれる“名作"の理解を助ける詳細な
注釈付の愛蔵保存版。 2012年12月、3部作の第1弾
「ホビット 思いがけない冒険」がついにロードショー!》
470ページ
(文庫)
『ホビット〈上〉―ゆきてかえりし物語』J・R・R・トールキン/著
山本史郎/訳 原書房 2012/11/1
《時代を越えて読み継がれる不朽の名作『ホビット』を、
さまざまな角度から詳細な注釈をつけた新訳決定版。
トールキン自筆の挿絵つき。持ち歩きしやすい文庫判。》
362ページ
『ホビット〈下〉―ゆきてかえりし物語』J・R・R・トールキン/著
山本史郎/訳 原書房 2012/11/1
422ページ
●『指輪物語』の内容について
『指輪物語』は1960年代に欧米の若者たちのあいだで大いに読まれた、
といわれています。
1960年台後半、ベトナム戦争に嫌気したアメリカの若者たちのあいだで、
カンターカルチャーとしてファンタジーが流行し、
『指輪物語』のペーパーバックが300万部も売れたといわれています。
日本では、1972年に翻訳刊行されました。
『ゴジラ』が水爆実験の影響で出現した、とされているのに対して、
この作品は「指輪」が核兵器を表している、という読み方もあります。
実際には、戦時中から書かれた物語ということなので、
その時代背景が著者に影響している、
というのが本当のところではないか、といわれています。
さて、なにしろ45年ほど前に読んだっきりですので、
詳しいストーリーも今は忘れてしまい、
あらためて『ホビット』から読み直している状況で、
まだ第一巻「旅の仲間」(上)巻を読んでいるところですので、
具体的な感想などはまだ書けません。
『ホビット』も昔読んだ、岩波少年文庫版『ホビットの冒険』ではなく、
20年ほど前に手に入れたまま放置してあった旧版、
『ホビット―ゆきて帰りし物語― 第四版注釈版』のほうです。
図書館で岩波少年文庫版の方ものぞいてみましたが、
Amazonのレヴューにもあるように、
ひらがなが多くおとなにはちょっと読みづらく感じました。
おとなが読むなら、
原書房版のおとな向けの翻訳の方が適しているかもしれません。
●おとな向けファンタジー『指輪物語』
『ホビット』と『指輪物語』の違いについて書いておきましょう。
一言でいえば、「子供向け」と「おとな向け」ということになります。
その分、ストーリーがより複雑になり、
背景となるムードもより深刻になっています。
『ホビット』は、ホビット族のビルボ・バギンズが主人公で、
ドワーフの王様とその一行がドラゴンに奪われたお宝を奪回にゆく旅に、
魔法使いガンダルフの推薦を受けて「忍び」役として同行し、
お宝を奪い返したご褒美と、偶然手に入れた指にはめると姿を消せる、
魔法の「指輪」を持って帰って来るという、副題にあるように、
文字通り<ゆきてかえりし物語>で、
その途中で出会う冒険の数々を語るものです。
『指輪物語』は、このときの「指輪」が実は、
魔王サウロンが探している魔法の指輪で、
この世界を統べることができるというしろもので、
これを奪われないようにどうにかしよう、とビルボから指輪を預かった
養子のフロド・バギンズが仲間たちと旅に出る、というものです。
「黒の乗手」という悪の一味たちから追われる旅です。
――私は、今はまだその辺までですね。
今どきの小説と違って、会話の応酬で進め、
ジョットコースターのようなストーリー展開で読者を離さない、
といったものとは異なり、
詩というか歌も交えて、ゆったりとした地の文で読ませるお話、
というイメージです。
『ホビット』も子供向けにしては長いお話でしたが、
『指輪物語』もまた長大な作品です。
残り5巻とちょっと。
何ヶ月後になるかわかりませんが、読み終えたら
具体的なストーリーの紹介や感想など書いてみたい、と思います。
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本誌では、「私の読書論183-トールキン『指輪物語』(第一巻・第二巻)70周年」と題して、今回も全文転載紹介です。
『指輪物語』の映画化作品三部作もありました。
そちらで知っているよ、という人も多いかと思います。
あるいはゲームも出ているそうで、そちらで知ってるという人もいるのかもしれません。
映画にしろゲームにしろどちらにしろ、それはそれでいいのですけれど、やはり本の方を読んでいただきたいと思っています。
それがそもそもの始まりだから。
小説というのは、言葉の芸術なのです。
歌なども言葉の芸術の一つですけれど、これには音、あるいは声が伴います。
しかし、小説のほうは、言葉のみ、それも文字のみの世界です。
それは、人間だけが楽しめる世界といっても過言ではありません。
そういう頭の中だけの空想の世界で遊ぶのも楽しいものなんですよ。
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『レフティやすおのお茶でっせ』
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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
私の読書論183-トールキン『指輪物語』70周年-楽しい読書364号
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