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”無罪請負人”弘中純一郎の失墜と逃亡と〜無罪請負人から有罪弁護士へ〜

2020年01月20日 03時28分06秒 | カルロス・ゴーン

 公判準備を進めていた東京地裁、弁護側、検察側に衝撃が走った。
 ゴーンが逃亡した事もそうだが、それ以上に”無罪請負人”で知られる弘中純一郎弁護士がゴーンの弁護人を辞任した事で、今回のゴーンの逃亡劇をより大きくクローズアップさせてしまった。

 厳格な条件を提案し、ゴーン被告の保釈を得た弁護側が”寝耳に水だ”と言えば、裁判所側も”ショックだ”と呑気な事を言ってる。
 一方、証拠隠滅や逃亡の恐れを理由に、保釈に強く反対してきた検察側からは”いつか逃亡すると思っていた”と、これまた呑気で平和ボンボンだ。

 会社法違反事件の舞台は捜査権の及ばない国外の中東にも及び、特捜部は過去最大規模の捜査態勢を組んだが、昨年4月22日に一連の事件の捜査を終結させた。
 ゴーン被告側は保釈を請求したが、捜査の過程でゴーンの妻キャロルが事件関係者と接触してた事が発覚するなど、特捜部は証拠隠滅の恐れが高いとして強く反対。
 しかし4月25日、東京地裁は証拠隠滅の恐れを認めながらも、”弁護人らの指導監督が徹底している”として保釈を許可した。


保釈⇒逃亡⇒辞任⇒結局、無責任?

 ある検察幹部は”弁護人の責任は十分ある。あの手この手を尽くし、細かい条件と引き換えに得た保釈の結果が逃亡だが、いつか逃げると思っていた。日本の刑事司法の恥を世界に晒した裁判所と弁護人の責任は重い”と痛烈に批判した。
 これに対し弘中弁護士氏は、寝耳に水で大変当惑している。保釈条件に違反する裏切り行為だが、気持ちが理解できないかといえば別問題だ”と憔悴した様子だ。
 一方、保釈を許可した東京地裁側にも動揺が広がる。ある裁判所関係者は”裁判期日に被告が出頭しない事態は、制度上やむを得ないとはいえ非常に残念だ。正々堂々と戦う人への背信行為である”と話した。

 ゴーン被告の弁護人•弘中氏に対し、”故意か重過失により出国させた”として、懲戒請求出されてた事が16日に判明した。
 懲戒請求書では弘中氏について、”保釈中のゴーン被告を故意か重過失により出国させてしまった事は保釈条件違反であり、その管理監督義務を懈怠する行為”と指摘。
 保釈は、”弘中氏らが逃亡させない”などを条件に裁判所が許可したものであるとし、”結果的に逃亡を許してしまい、国民の司法に対する信用失墜および刑事司法の根幹を揺るがしかねない事態を招いた事は重大な非行に該当する”としてる。
 弘中氏らが逃亡に関与した疑いもあるとして、同弁護士会に調査を求めた。
 弁護士に違法行為や品位に反する行為があった場合、所属する弁護士会に懲戒を請求できる。綱紀委員会で調査した上で懲戒委員会が処分を決定。重い順に、除名>退会命令>業務停止>戒告がある。
 以上、産経ニュースからでした。


”無罪請負人”から有罪弁護士へ?

 多くの著名事件を手がけ、”無罪請負人”の異名を取る弘中純一郎弁護士だが、かつては日本の刑事司法の問題や特捜検察の腐敗ぶりを糾弾する”法の番人”的存在でもあった。
 ゴーン被告が保釈を勝ち取れたのは弘中氏の人選のお陰だと、一時は海外で持て囃されたが、保釈中のゴーンがレバノンに逃亡した事には関与を否定した。
 事実、刑事弁護界の”レジェンド”と評される高野隆弁護士が弘中氏と手を組んだ時は、理詰めの徹底抗戦は必至で、相対する検察側も相手は”最強の布陣”と警戒を隠さなかった。
 しかし、弘中氏も高野氏もゴーンが逃亡すると、足を揃えたかの如く何の説明をする事もなく、ゴーンの弁護人を呆気なく辞任した。
 これに対しては、”私たちも関与してますって暴露した様なもんだろう”との怒りの声も多い。
 全くゴーンに引き続き、”弘中よお前もか?”って感じですな。

 しかし、この弘中純一郎ってメディアが騒ぐ様な”辣腕弁護士”なのか?
 「無罪請負人、刑事弁護とは何か」(2014)のトップレビューには、弘中氏の身贔屓も相当に酷く、小沢一郎や鈴木宗男は弘中氏が言うほど清廉な政治家ではない。それを”米国の圧力で潰された”という陰謀論は全く荒唐無稽だ。
 また三浦和義を高潔な人物であるかの様に語るが、コンビニで万引きを繰り返す様な人物である。弁護人サイドの一方的な見方で、勝てば莫大な報酬が得られる腐敗した世界。
 結局、弘中は公判戦術が優れているだけで、正しい人物とは全く言い切れないと手厳しい。

 しかし、このコメントが弘中弁護士の全てを語ってる。”無罪請負人”とても、カネで信念や倫理観や良心を平気で曲げる、法廷戦術に優れた犯罪者に過ぎないのか。
 ”推定無罪”の原理とは聞こえはいいが、権力者にとってこれほど美味しい原理もない。どれだけ多くの重犯罪者が、お金の力で(推定)無罪を勝ち取ってきた事か?
 つまり、”疑わしきは罰せず”の論理は貧しい弱者に人間にのみ適用すべきなのだ。”推定無罪の是非と”も参照ですよ。

 結局、”法の番人”である筈の弘中弁護士が守るべきだったゴーン被告は、大方の予想通りに逃亡した。そしてこれまた大方の予想通り、弘中も”逃亡者”の弁護を辞任した。故に、弘中氏に大金が渡された可能性もなくはない。
 人は一度大金を手にすると、倫理も道徳も信念も良心もどうでもよくなるもんだ。
 地検や裁判所側が甘いと言えばそれまでだが、”無罪請負人”が大金に目が眩み、”有罪弁護士”に変貌する事も当然予測すべきだった。


”法内奴隷”と”法外奴隷”と「万引き家族」

 バルザック(1799-1850)の時代から既に”法は権力者の奴隷”であった。カネの論理で法が右へ左で動く様を、バルザックは数多く小説にした。
 弱者を守る為の、権利と正義を守る為の法律が、権力者によって次々と破壊されていく。
 そういう醜い法の歴史があるにも拘らず、大衆もメディアも未だに”法の番人”を”正義の剣”として持ち上げる。法治国家なんて既に死に絶えてるのにだ。

 それでも法の専門家は、”疑わしきは罰せず”の聞こえのいい”推定無罪”の論理を持ち上げ、大衆は一生を”法の奴隷”として過ごす。
 我らは、決まりだからルールだからといって、明らかな矛盾にも不都合な権力にも従順に従ってきた。
 映画「万引き家族」風に言えば、我ら愚かな大衆は”法内奴隷”そのものである。
 以下、”宮台真司の「万引き家族」評”から一部抜粋です。

 この映画には、「万引き」を生業とする疑似家族(万引き家族)が登場する。彼らは法の外つまり”法外”で生活している。
 様々な理由で”法内”から弾かれた者たちばかりで、祖母の年金だけでは足りないので、彼らは連携して万引きをして生きらざるを得ない。
 彼らは、”法外のシンクロ=生存戦略と仲間意識”で繋がってる。つまり、生存戦略あっての仲間意識。故に、逆境では仲間(家族)を置いて逃げる。
 つまり、”逃亡者”ゴーンも”無罪請負人”の弘中氏もやってる事は同じだ。生存の為には仲間も法も存在しない。お金を持って”逃げたが勝ち”なのだ。ゴーンも弘中弁護士も結局、同じ事をやっただけなのだ。
 法治国家が意味をなさなくなったというのはそういう事である。 

 定住以前の遊動民や先住民の様に、「万引き家族」の中に出てくる”父”も逃げたのだ。
 定住以前に”法”はない。は1万年前の定住革命で生まれた、定住を支える余剰収穫物の所有を保護する為だった。
 つまり、法が持ち込まれ、”法内/法外”の区別が生まれた。
 定住以前は遊動民だ。その作法を今に伝える先住民は、法律の代りに”生存戦略と仲間意識”に頼ってきた。
 他方、私たちは”法”に頼る。
 つまり、”法内”は約束の世界で”法外”は拘束の世界。そこで”法を守りさえすれば”の部分が大きくなり、”どうすれば生きられるか”を心配せずに生きられる様になった。


最後に

 つまり、”生存戦略””法”に変わっただけなのだ。その法が役に立たないと解ると、その法を捨て、生存を優先し、終いには逃亡する。
 ゴーンや弘中氏の様に大金で”劣化”した人種は、「万引き家族」たちの様に法外でシンクロする能力を再び取得する必要がある。
 ”法外奴隷”に成り下がり、泥水を啜って生きていくしかないのだろうか。

 彼らの行く末はそれ意外に考えられないのだろうか。
 無罪請負人も所詮は、”法内奴隷”に過ぎなかったのだから。

 弘中純一郎の失墜と逃亡とは、無罪請負人から有罪弁護士へ繋がる困難で苦痛の道のりかも知れない。



10 コメント

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弁(護料で家)が建つ (弟寒)
2020-01-20 10:05:03
サッカー岡田監督の兄弟じゃないのかな…
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弟寒さん (象が転んだ)
2020-01-20 10:45:31
経で家が建つお坊さん
処方で豪邸が建つお医者さん
でも今回は誰が無罪請負人の弁護をするのかな?
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カルロス•ビーン(^o^) (HooRoo)
2020-01-20 11:19:47
という名前にして(^^♪
レバノンにでも逃げましょうね
ゴーンとビーンでいコンビで〜す👋
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Re.カルロス•ビーン (象が転んだ)
2020-01-20 14:51:13
いい響きです(^^)

犯罪者が二人合わされば
何処へ逃亡しても敵無しですね👋👋
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弘中もゴーンも終わったな (#114)
2020-01-21 16:42:35
弁護士の弁が濁ったら
もう終わりだろ
目の前の大金に目が眩んだか?
そんな単純な事かは判らんけど

それにゴーンの逃亡先のレバノンも
大変な事になってるらしいな
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#114さん (象が転んだ)
2020-01-21 21:00:35
泣きっ面に蜂とはこういう事ですか。
この弘中氏も最初はまともな弁護士を目指してたんでしょうが。
大物政治家や凶悪犯と付き合う事で
ある意味感化されたんでしょうね。

そういう意味では弘中も被害者かもです。
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万引き弁護士 (tokotokoto)
2020-01-22 15:12:20
法がお金の奴隷である事を曝け出した様なもんですね。バルザックの小説に出てくる悪徳公証人と極悪犯罪者との関係と同じです。
しかし痛い目に遭う側も正直者過ぎて最後の最後で逃げられてしまいます。

そこで悔しがる正義の公証人。
もしオレが近くにいたらこんなフザけた事はさせなかったのにと悔やんでるシーンが浮かんでくるようです。
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tokoさんへ (象が転んだ)
2020-01-22 19:41:36
少しだけお久しぶりです^_^

私も同じような事考えてました。
作品名は忘れましたが、
最後の最後でクソ女に逃げられる展開でした。
バルザックの作品には大体において弁護士は悪く書かれてます。
勿論正義の弁護士もいるに入るんですが、ごく僅かです。大半の弁護士は手数料などをセコく稼ぐ雑魚ばかりで、ゆくゆくは中央の判事か政界進出を狙ってます。

何だか今の日本と全く同じ形態ですかね。
結局、裁判官も検察も弁護士も皆腐ってしまったんです。
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法外な手数料 (paulkuroneko)
2020-02-01 07:25:23
往復2時間を超える移動である場合、1回の弁護料が2万円~10万円
法律相談が1時間3万円~
顧問料 月間10万円~
事務処理費用 ~万円とされます。

ゴーンの件なら成功報酬は億単位を超えると言われてますが。
逆を言えば、ゴーンの逃亡で稼いだ財産が全て没収されるかもしれません。
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paulさんへ (象が転んだ)
2020-02-01 09:24:04
所詮、弁護士って
手数料ふんだくり屋だもの
今の時代、法で解決出来るものって
殆どないから手数料でセコく稼ぐしかない。
大物政治家と手を組んだ事で
足元が見抜かれたかな?
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