象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

弱すぎる天心と強すぎた中谷〜評価が極端にわかれた2人のボクサーのその先に

2025年02月27日 13時06分00秒 | ボクシング

 これほど評価がわかれたケースも珍しい。
 中谷潤人を”誰も奴を倒せない”と米メディアが最大限に評価すれば、那須川天心を”不公平なジャッジ”とネット上では疑惑の目が向けられた。
 勿論、中谷の異次元の破壊力は想定内だったし、天心の慢性化しつつあるボクサーとしての限界も想定内であった。

 SNS上では、”不可解な採点”に様々な声が噴出しているが、正直、「前回」”疑惑の勝利”と比べても見るべきものは殆どなかった。
 ”想定内の弱さ”と言えばそれまでだが、相手のモロニーも元WBO世界バンタム級王者としてはとても貧相に感じてしまう。一昔前のバンタム級なら、世界はおろかオーストラリア国内のランカーにもなれなかったろう。
 メインのWBC同級王者中谷潤人が(大方想定内だったが)米メディアを”倒せる奴はいない”と唸らせる程の圧巻の3RKO勝ちを演じたお陰で、那須川天心のボクサーとしての才能とパフォーマンスがより一層貧相にも映った。
 まさに、”天と地”いや””雲泥の差とは、この事である。更に、試合内容も相手のレベルもお粗末だったが、2試合続けて那須川のボクサーとしての不足が露呈した形となった。


疑惑の判定再び・・勝つには勝ったが・・

 結果で言えば、ジャッジの採点は、98-92が1人で、97-93が2人だったが、私の採点ではほぼ互角。有効打との点で見れば、1R、6R、10Rはモロニーが取っていたし、4Rこそ微妙だったものの、5Rと8Rは天心が明らかに優勢だった。
 ただ、9Rと10Rの天心の”逃げ”の姿勢がボクサーとしての不足と限界を証明している。但し、現行の採点は互角でも10-9をつける”マスト”方式で、これがボクシングを貧弱にしてる要因の1つだが、上に挙げた以外の4つのラウンドを天心がとったとすれば、97-94の3P差で天心が勝った事にはなる。
 故に、”勝つには勝ったけど”とのイチャモンがつく。事実、モロニー陣営は採点に対し、”(公平に見れば)今回は我らが勝っていた”と、不満を訴える一幕もあった。

 確かに、「前回」の格下の学生ボクサーに相手に、最後まで苦しめられ、この時も3-0の判定勝利だったが、今回と同様に微妙な判定でもあった。今回は元チャンピオンが相手で、”革命の狼煙を上げる”と息巻いてはいたが、蓋を開ければこのザマである。
 一方で、”前に出る=攻勢との見方は今では通用しない。多くのラウンドで天心についた10-9には、ルールに基づいたエビデンスがある”とする解説(NumberWeb)もあるが、根拠と言うより地元有利という不公平な論理が働いた事は、疑いようがない。

 勿論だが、那須川にも同情する所はある。
 彼の前座で行われたWBA世界同級王者の堤聖也と同級7位の比嘉大吾とのフルラウンドに渡る壮絶な殴り合いに化した事も、天心には大きなプレッシャーになったのかも知れない。つまり、ボクシングにもレベルがあり、殴り合いにも質感がある。更に言えば、井上尚弥や中谷潤人の様に、プロボクサーにも資質と能力が必要とされる。
 確かに”KOで勝てば文句はないだろう”との厳しい見方もあるが、今の天心にはそれだけの力もボクサーとしての資質もない。少なくともそういう事が露呈した”炭酸の抜けた”様な闘いでもあった。


倒せるボクサーは誰もいない
 
 23歳の若き無敗のメキシカンを沈めた中谷潤人を米メディアも絶賛。米専門サイト「ボクシングニュース24/7」は”倒せるボクサーは誰もいない”と興奮気味に報じた。実際、エストラーダを初め、対戦オファーを次から次へと断られていた。
 今回の異次元のKO勝ちで、”井上尚弥でさえ倒せないのでは?”との声も聞かれる程に、中谷のボクサーとしての完成度は私が思ってる以上に高い。
 早くも、”来年にSバンタム級の統一王者・井上尚弥との対戦が実現するまで<強すぎて戦う相手がいない>とのジレンマに苦しむ事になる”との声も出始めている。

 1Rは、ダビド・クエジャル(同級6位)の左の強打を警戒する所もあり、中谷は慎重に様子を見ていた。事実、相手の左フックで鼓膜が破れた事が示す様に、”簡単にパンチが当たる意識だったが、そこまで当てさせてくれなかった”と、相手も王者を徹底的に調べ上げていたのだ。
 2Rに入り、アグレッシブに打ち合いを挑むクエジャルの技量を冷静に見極め、”オレの相手じゃない”と確信すると、静かに毒牙を剥く準備に掛かる。
 3R、左右のフックから果敢に前へ出るクエジャルに、左右のボディで布石を打ち、相手のガードが下がった所へ左右のフックから左ボディと繋ぎ、満を持した左ストレートを顔面に突き刺した。流れる様な見事なまでのコンビネーションに、”絶対に倒れない”筈のメキシコのナルシストな甘いマスクが苦痛に歪み、呆気なく膝が崩れた。キャリア29戦目にして初めて経験するダウンだ。
 ”あまり覚えていない。一発当たれば次々と自然に手が出た。振るというより真っ直ぐ伸びる感じで、手応えはあった”と中谷は試合後に語ったが、あまりにも芸術的過ぎて、私は言葉を失いかけた。

 今回は中谷対策として、チャンピオンメーカーのエディ・レイソノを呼び寄せ、徹底的に鍛えあげたクエジャルだったが、何とか立ち上がるも、そこには驚異の左が待ち構えていた。
 軌道はフック気味だが、そこから真っ直ぐに伸びるストレートは、寸分の狂いもなく相手の甘いマスクを捉えた。”左フックの軌道で顔面の中心を狙う、確実に当たるパンチ”である。
 自慢の鼻を潰されたクエジャルは、両足を自ら投げだし腰が砕けた。目は虚ろで足はよろけ、立ち上がる気力もなく、放心状態のまま10カウントを聞いた。試合後の記者会見を拒否した所を見ると、心まで折れてたのだろう。
 23歳の若者には、無情で残酷過ぎたマッチメイクだったかも知れない。

 これには、地元メキシコのメディアも”クエジャルは人生最大のチャンスを手にしたが、中谷に危険な反撃を許した。日本人王者の技量は圧倒的に高く、攻略する術を見つけるのは難しかった”と試合を回想し、勝負を決めたKOシーンも”挑戦者を倒す決意を固めた中谷は凄まじかった。彼は最後に3連発のパンチを繰り出したが、最初の左だけでクエジャルの夢を終わらせるに十分だった”と驚きをもって伝えた。
 確かに、中谷の一方的な展開にも思えるが、後で動画を確認すると、28戦無敗の若いクエジャルはよく鍛えられ、真っ向勝負を挑んでいた事が判る。彼の揺るぎない夢は叶えられなかったが、その気概は十分に伝わってきた。まるで、今回の殺気に満ちた挑戦は(負けたとはいえ)十分に誇れるものだろう。

 まだ23歳と、26歳の天心よりも若く、実績(29戦28勝18KO1敗)も申し分ない。
 次の試合は、この若きクエジャルと天心とのマッチメークを期待したいものだ。
 つまり、弱い人間は弱い奴ばかりと闘っていても更に弱くなる。人生もボクシングもそういうものだろう。


最後に〜井上でも倒せない?

 米老舗雑誌「ザ・リング」は、同誌が選ぶパウンド・フォー・パウンド(PFP)で9位にランクする中谷の記事を3本もアップし、大々的に伝えている。特に、トップランク社の副社長、カール・モレッティ氏は”中谷は間違いなく将来的に、Sバンタム級、フェザー級、そして、Sフェザー級でもチャンピオンになれるだろう”と、マニー・パッキャオに並ぶ6階級制覇の可能性を口にした。
 前述した様に、「ボクシングニュース」では、”PFPのリストに入るべき中谷にとっては簡単な試合だった。中谷は井上尚弥とのメガファイトを希望してるが、その前にバンタム級の統一を望んでいる。でも、誰が中谷を倒す事ができるだろうか?おそらく誰もいない。<ザ・モンスター>の井上でさえ倒せないかもしれない”とまで報じた。
 一方、井上対中谷については、”米メディアがずっと注目し、多くのボクシングメディアが世紀の日本人対決を引き出そうとしている。その試合は日本でかつて最大の試合となる”と追記した。

 井上尚弥対中谷潤人の対決については、この試合の前でなら、KOなら井上で判定なら中谷という声が多く、6対4で井上有利との声も多かった。
 だが、今回の圧巻のKO劇で、その予想も覆りそうな勢いである。つまり、KOなら中谷で判定なら井上となり、力関係も6対4で中谷有利となる可能性がある。事実、”減量は徐々にキツくなってる”と明かす様に、今回の試合でも中谷の筋肉量が増し、パンチが重くなってるのを実感した。
 更に”井上選手とやる時はしっかり体を作る必要がある”と語る様に、<モンスター>とはいえ、Lフライ級上がりの井上尚弥を射程圏内に捉えてる事は確かだろう。

  他方で、今やすっかり”客寄せパンダ”と化した那須川天心だが、プロボクサーとしての限界と不足ばかりが目立つ。デビュー以来6試合(6勝2KO)を戦った彼のパフォーマンスは、高額な入場料(リングサイドで3.3〜5.5万、安い席でも1.1万円)には程遠いし、それに見合うファイトとも言えない。
 一方で、中谷潤人の異次元のファイトだけが目立つPrime Video Boxingだが、同じ世界ランクのプロボクサーでも、こうも差があり過ぎると、”中谷が強すぎるのか?天心が弱すぎるのか?”、少し考え込んでしまう自分がいる。

 言い方は悪いが、キックに戻って小銭稼ぐのも人生の賢い1つの選択でもあろう。
 人気と話題性だけでファイトに中身がなければ、ボクシングの興行は成り立たないし、事実、米メディアも那須川については殆ど触れてはいない。
 いや、最初からその気すらなかった様だ。



1 コメント

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メイウェザーJr (#114)
2025-02-27 15:54:36
とのデビュー戦で
八百長紛いの試合をしたのが
ここに来て
那須川天心を苦しめている

キックのまま引退し
総合でもやってればとも思うが
その資質もないだろうから
結果は同じだろうけど

2試合連続して疑惑の判定では
天心を贔屓にしてたスポンサーも
少しは考えるだろう
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