象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

『ファウンダー』マクドナルドの創業者レイ•クロックに見る20世紀のビジネスモデル。その6〜マクドナルド兄弟との決着の時と〜

2018年05月12日 19時51分25秒 | マクドナルド

 ファウンダーも番外編が3回続き、2月末以来の更新ですが、悪しからずです。ま、番外編を読んだ方はお解りになる筈ですが、レイクロックではなく、”ハリー•ソナボーンに見る20世紀のビジネスモデル”とした方がいいのかも知れませんね。


 ”その4”では、1960年に、救世主のソナボーンがマクドナルドの社長兼CEOに就任。以降、クロックは会長として現場を担当し、ハリーは財政を担当。社名も"McDonald System"から、今の"McDonald's Corporation"に改めた。新生マクドナルド誕生の所まででした。


 しかし、クロックとマクドナルド兄弟との確執は依然として、続いていました。特に頑固一徹な姿勢を崩さない弟ディックとの確執は深まるばかりで、余りの憤激ぶりに、兄弟までもが険悪になる。

 兄弟は現状維持に満足し、クロックが訴えた広告もPRにも、一切お金を掛けようとはしなかった。カリフォルニアでの彼の5年の苦悩は、殆ど無駄に終わった。


 しかし、クロックは”クーパー&コリン”というPR会社と$500/月で契約した。ソナボーンはカンカンに怒ったが、結果は大成功に終わった。マクドナルドが全米中の家庭に広まったのは、クロックのこの危険な賭けでもあった。
 
 クロックは敵も多かった。ライヴァルは盛んにスパイを送った。オペや設計も盗まれた。"スタイルは真似できても、脳みそまでは盗めない"と胸を張った。"相手を知りたければ、ゴミ箱を漁ればいい"とは、彼の口癖だ。

 それに、彼のアイデアや広告キャンペーンは、苦戦するフランチャイズを大いに助け、拡張させたのも事実。


 しかしその後、彼に大きな転機が訪れる。一つは運命の女性であるジョニー•スミスとの出会い(しかし、これは片思いに終り、後にジョンウエインの秘書のドビンス•グリーンと結婚)。 
 そしてもう一つは、妻エセルとの離婚。これには6万ドルを要した。ここでもまたまたソナボーン様の出番だ。彼はクロックのマルチミキサーの会社を15万ドルで売り捌いたのだ。


 一つの縁が切れ、今度はマクドナルド兄弟との縁を切る番だ。兄弟とレイの間では何かある度に揉めていた。そして、弟ディックが契約を盾に使うが、クロックは、"契約は心みたいなもの、壊す為にあるのさ"と見事に切り返す。

 今度は兄マックが"マクドナルドコーポって不動産みたいじゃないか"と切り出せば、"田舎のクソ地主のハンバーガー屋に何が分かる?こっちは17州に土地を持つ国家的大会社だぜ"と切り返す。

 そして、1961年、決着の時が迫る。


 所詮、"15㌣のハンバーガーで、僅か1.4%の利益"じゃやっていける筈もない。追い詰められたクロックは、大胆にもマクドナルド兄弟に、経営の乗っ取りを告げる。実は、この案もソナボーンのアイデアだった。

 頑固な兄マックは激怒し、病に倒れた。兄弟は全ての権利を売るのに、270万ドル&永年の総収益の1%を要求した。"俺たちは30年休まず働いてきた。それだけの権利はあるはずだ" 感動的な話だが、クロックに同情の涙はなかった


 映画では、"旧契約を破棄しない限り、先へは進めない、270万ドルは貰えないぜ。ロイヤリティは入るから心配するな"と兄弟を諭し、クロックは兄弟と新契約を結び、握手をするが。

 兄弟は、270万ドルの小切手を前にし、涙に暮れる。弟のディックは尋ねた。"俺達から全てを盗む気だろう"と。レイは最後に言った。"システムなんかどうでもよかった。マクドナルドという名前だけが欲しかったのさ"と。


 ただ、ここで一番の問題は、毎年の総利益の0.5%(映画では1%)の問題だ。これは後々も大きな問題となっており、未だに決着はついてはいないとか。
 ただ、旧契約を破棄してるから、永年の総収益の0.5%の支払いはなくなるが。口約束の”ロイヤリティの支払い”が問題になる。

 映画のエンドクレジットでは、握手による契約を立証出来ず、ロイヤリティを手にする事が出来なかったとあるが。
 全く、目先の現金に目が眩むっていうケースはよくある事だが、金額が金額なだけに、兄弟にしては、迂闊だったというか。


 自伝本でも、この事には殆ど触れておらず、この本がバイブルどころか、見方によっては詐欺本に成り果てるのではと。
 勿論、映画でも相当に気を遣ったせいか、詳細な描写には至っていない。つまり、これは、単なる詐欺か誤魔化しか、盗みかそれとも、空前絶後の犯罪か。

 クロックも若い頃は、貢献した会社に散々裏切られてきた。しかし、今回は金額が規模が違い過ぎる。マクドナルドが急激に成長する程に、その額も天文学的なものになるのだ。
 これに関して、殆どノーコメントという事は、自らも疚しい所があったのは確かだろうか。

 ここまで来ると、彼が残した数々の名言や格言もインチキにも思えなくもない。孫も柳井氏もその事には殆ど触れず、手放しで褒め讃えてる。彼等もクロックと同類という事か。


 確かに、これだけの天文学的な、脅威の偉業と成功を収めるには、それに見合う悪事も投資も苦難も、当然必要となる。
 これらに対し全く異論はないが。もっとこの闇の部分に、光を当てて欲しかった。ユダヤ的と言えばそれまでだが、これじゃ、タマニー派と同じで、”正当なる汚職”どころか、”正当なる盗み”という事になる。


 勿論、第三者による口約束の立証は難しい。その為に、契約が在るのだが。その契約に拘り続け、レイクロックを追い詰めてきたマクドナルド兄弟が、最後はその契約に羽目られたのだから、実に皮肉だ。

 レイ•クロック流に、ユダヤ的な言い方をすれば、成功は”ゴミ箱の中”ではなく、”契約を潰す事にある”と言えようか。


 結局レイクロックは、270万ドルは支払うものの、年間収益の0.5%(1億8000万ドル)を上手く曖昧に付したのは明らかだ。つまり、僅か270万ドルでマクドナルドの全てを"盗み"仰せたのだ。



2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
言い方を変えれば (paulkuroneko)
2018-05-15 04:59:20
転んださんは、レイクロックに少し手厳しいですが。少し言い方を変えれば、ソンナボーンが絶対的強者である銀行や投資家を上手く言いくるめ、これまた相対的強者である地主の首根っこを強引に抑え込み、クロックがフランチャイズという弱者を、真摯のバックアップと低いロイヤルティ―と地代の提供で、実直に支えたと。

つまり、弱者が強者を利用し封じ込み、世界中に繁殖した、初のビジネスモデルではないかと思うんです。そういう意味ではソンナボーンとクロックは絶妙の組み合わせだったのかもしれません。

結局、一部の金持ちや強者をいくら優遇しても、経済は発展しないどころか衰退するだけだと。そういうのをマクドナルドは暗示してるのかもしれませんね。
返信する
Re:言い方を変えれば (lemonwater2017)
2018-05-15 16:39:00
夕方ですが、こんにちはです。

 当時の銀行や投資家は、今でもそうですが。強者や勝ち組しか相手にしなかったんですが。彼らを味方につけたソナボーンの知力には、やはり頭が下がります。

 彼らは、債権者と債務者という非常に対局的で、危なっかしい立場に有りながら、上手く丸め込み、互いにボロ儲けしたんです。

 レイクロックも裸一貫でフランチャイズを育て上げ、支え、大きくしたんですが。その資金を確保したのがソナボーンだと。

 バルザックは、銀行はユダヤが12世紀に発案した”全能者の組織”と激しく揶揄してんですが。ユダヤ系であるソナボーンには、銀行の弱点を最初から掴んでたんでしょうか。

 この銀行の持つ、弱者に対する残忍性とイカサマ、それに巧妙な手口の全てを、見抜いてたとしか思えません。

 勿論、レイクロックもユダヤ系ですから、学や知はなくとも、そういったイカサマや残忍性やペテンは持ってたと思いますね。そういう意味では、上手くかみ合ってたとも言えますね。

 でも、ユダヤ人って知れば知る程、末恐ろしい民族ですね。
返信する

コメントを投稿