象が転んだ

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「コールガール〜エリート大学講師の悦楽と告解」"その2"(’20/10/12更新)〜ジャネットの告白と親友の裏切り

2018年01月27日 03時11分09秒 | コールガール系

 著者のジャネットの経歴をざっと紹介する。彼女が単なる”好きモノ”じゃないという事を証明する為にもです。
 フランス人の父とアメリカ人の母との間にフランスで生まれ、フランスのアンジェ•カトリック大で神学学士号を取得後、僅か21歳で渡米。フィッチバーグ州立大で歴史学学士、イェール大学で神学修士、ボストン大で人類学博士号を取得するなど、計4つの学位を得るバリバリの才女なのだ。
 読み進める内に、著者の人間観察の鋭さと洞察力の深さを思い知らされる。流石、人類学博士号は伊達じゃない。私も読み進める内に不思議と読み逝って?しまいます。

 日本人がこういう類の本を書いたら、かなり感傷的に浪花節的かつ自虐的になると思うのですが。向うの人はドライでアッケラカンとしてますな、何事においてもね。恐ろしい程に楽天的に出来てんでしょうな。さて、本題に入りますかな。


売春には天罰がつきもの?

 しかし現実問題として、売春という行為を言葉の糖衣で包むのは容易いが、売春で家計を立てるのを新鮮で面白いと言うのは、能天気か大いなる勘違いなのだ。
 最初の頃は、"売春=ごく普通のSEX"だった。いや、それ以上の素晴らしい体験だった。ただ、逮捕だけが怖かった。一瞬にして、実人生を駄目にする。
 "ピーチ、常連だけにして。身元がよく分かってる人しか相手にしたくないわ"が私の口癖になった。

 しかし、裏切りには天罰が付きものだ。経験から言えば、電話で感じの悪い人は会ってみるとそれ程でもないが。逆に、その反対は結構多いのだ。
 初めて、アナルを強要された。相手は私を淫売と罵り、身体中にアザを作らせた。初めてコールガールの洗礼を受けた。
 つまり客には色々いるが、売春とは男の欲望だけじゃなく、性犯罪も防ぐ役目を果たしてるのだ。ホントかな(笑)。

 客の中には、行為に至る前に果てる輩もいる。そういうのに限って紳士である。でも、余りに上手く行き過ぎて心配になる。
 典型の人種差別主義者で、ギャンブル狂の客は最悪で最低だった。流石に契約の最終日は逃げだしたが、この頃になると常連客がつく様になっていた。

 この仕事の一番の難点はブラインドデートをの繰返しで、神経を擦り減らす事。指名を受けるには客の好みを敏感に嗅ぎ分け、客の望む女を巧みに演じる必要がある。しかし、馴染みなら、そんな気遣いから解放される。それに稀ではあるが、友情や愛情で結ばれる事もある。
 しかしこの頃になると、借金の殆どを返し終えてた。今晩の客は下着フェチだ。売春とは未知なる土地を旅する異邦人とはよく言ったものだ。


コールガールの告白

 殺人犯が罪を告白せずにいられるのが、今になって理解できる。この完璧な二重生活が交わる事は一度もなかった。しかし、誰かに打ち明けたかった。NYにいるセスは一番の親友だった。
 "あのろくでなしのピーターのお陰で、自分が全く価値のない女だと思い込む所だったわ。でも、この街の大の男が1時間を過ごす為に、喜んで$200払うの。私、それだけ価値のある女って事ね"
 "でも、下衆な親父ばかりだろう"
 "昨夜はボストン交響楽団の演奏者、そして今日はMITの教授よ。どう?見事な負け犬ばかりでしょ?" 
 "淫売と寝る男達に、君が傷付くのを見たくないんだ"
 "夜な夜な、チャイナ通りをミニスカートとブーツで立ち、バックシートで楽しまない?と誘いかけてるとでも?"
 "いや、君は妹の様な存在だから心配なのさ"
 "でも、淫売じゃないわ!"
 "ああ、分かってる"

 MITの教授は最も激しい喜悦に溢れていた。相手をそこまで至らしめた事の満足と喜びが私を包んだ。しかし、セスの言葉が気になってた。彼は私を友人としてでなく、性の対象として捉えてたのだ。


売春と薬物と虐待

 売春婦として働く女とそれを知ってる男の間に、正常な人間関係は成立しない。多くは薬物中毒が介在し、虐待を伴う。
 客にとってはSEXだが、私にとっては単に仕事なのだ。1時間の間に私の役を演じ、終ればごく普通の生活に戻る。
 しかし恋人からすると、売春行為は裏切りであり浮気なのだ。結局、男にとってSEXが重要で不可欠なものである限り、性産業は厳然と存在する。逆を言えば、女にとってSEXが金になる限り、性産業が潰れる事はない。

 私は、人格的模範にはなり得ないが、大学教師として知識の供給源として、学生に認められてる。自由時間に何をしようが、私の知的能力に何ら変わる所はない。
 何故、この2つの職業は成立しないのか?誰も明確には語れないが、両立しないという事実は誰もが知ってる。売春同様、"ポルノが定義出来なくても、見りゃ判るだろ"
 つまり、そういう事。


君は淫売だろ?

 仕事仲間のベスも公立中学校の教師だった。コールガール程、倫理や道徳を話題にするし、一般の人よりずっと規律を厳しくしてる。
 情事や不倫は言い訳もできなくもないが、売春は見つかったらそれで終り。酒やコカインが生活に入り込むのもそのせいだろうが、哀しいかな、心を麻痺させる必要があるのだ。自分の卑しさから逃れる為に。

 セスとの再会は非常に楽しみだった。彼が用意してくれた豪華なディナーが終わると。彼は立上がり、ジッパーに手をかけた。私はキョトンとした。
 "ああ、猜疑心という単語は君の辞書にはないのかな。いや、口で楽しませて貰おうと思ってさ"

 その瞬間、私の中で何かが壊れた。
 "何故?"
 "だって、君は淫売だろ?" 

 セスとのこれまで積み上げてきた友情は、脆くも崩れ去ったのだ。



8 コメント

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割り切ろうとしても (biko)
2018-01-27 04:18:49
割り切れないのが、女性の肉体と精神の関係性ではないかと思うところがあるから、この記事のお話は興味をそそられます。

さすがの大学教授も壊れた?

いえ、私が言わんとしていることと、この記事の描かんとしていることとは別物と思いますが。
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Re:割り切ろうとしても (lemonwater2017)
2018-01-27 05:37:56
 半分は当たって、半分は外れてますな。でも、bikoさんの言う通りかもです。結局、彼女は好きもんだなって気もします(笑)。

 彼女を追い込むのは売春業ではなく、コカインですね。セックスのやり過ぎで壊れる事はないが、薬物の大量摂取は、確実にどんな人間をも潰しますな。
 
 実は、まだ7割位しか読んでないのですが(笑)。ホント、亡くなった村形さんやbikoさんのお母様に読んで貰いたかったです。
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確かに (tokotokoto)
2018-01-27 06:30:07
セックスは天然だけど、ドラッグは化学物質ですものね。
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象が転んだです (lemonwater2017)
2018-01-27 07:30:24
 とにかく、コカインの量が凄いですね。毎日、朝と晩ですもん。この後マフィアの親分が登場しますが、もう、見てられない(笑)。日本人だったら、男性でも死ぬでしょうに。
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大学教師? (タック)
2018-01-27 09:56:38
大学教師ってあまり聞かない言葉ですね。
何の訳なのだろうと思ってしまいました。
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Re:大学教師? (lemonwater2017)
2018-01-27 10:07:07
 序説には非常勤講師とあり、本文やタイトルには大学教師とあるから、多分、非常勤講師の事ですかね。
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初めまして (ろこ)
2018-01-27 22:40:51
こんにちは。
 この記事を読んでずいぶん前に起きた東電OL事件を思い出しました。
 昼間は大企業の幹部社員、夜は娼婦と全く別の顔を持っていた女性が、殺された事件です。
 慶応大学出身の東電OL.は、売春婦の中でも特に低級な立ちんぼうと呼ばれるものだったとか。
 そして文学の世界では『昼顔』
 
 記事で取り上げた女性はコカイン中毒だったとしたら、東電OLや『昼顔』とは異なりますね。
 
 読者登録させていただきました。
 どうぞよろしくお願いします。
 
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象が転んだです (lemonwater2017)
2018-01-28 03:52:33
こちらこそ、下衆なネタですみません。

 東電OL事件とよく比較されますが。見方を変えれば、バルザックの人間喜悲劇とも言えますね。人類学?の視点で、半客観的に自分を捉えてる所も多少ユニークですね。
 ただ、アメリカという、巨大で闇に埋もれた薬物国家の、ある意味、犠牲者なのかなって。

 コカインは仕方ないにしても、量がまず半端ない、売春がどうのより。

「昼顔」読んでみたくなりました。
 こちらこそ、色々とお世話になります。
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