公開中の映画「パブリック 図書館の奇跡」では、厳しい寒波の到来によって野宿生活も困難になったホームレスの人びとが、宿泊場所として使わせてほしいと図書館にやってきます。彼らと行動を共にする図書館職員は犯罪容疑者扱いをされることになります。この映画は、生存のための一時的な居場所としての利用を望む人たちを排除しないという役割も果たすことができるという図書館の意外な可能性を示唆しているように思います。図書館には「避難所(アジール)」としての機能、福祉的な機能があってもいいのだと思います。ちなみに、主人公である図書館職員も実は図書館によって救われた過去があるようです。タイトルにpublic(公共の、公共的な)という言葉が使われているように、図書館の公共的な役割について考えさせられる作品です。
文字を使った計算
数値でなく文字を使うことによって、具体的な場面を離れて抽象度の高い思考ができるようになります。例えば物理学の研究で力を発揮します。
方程式
未知数を文字で表して等式を作り(方程式)、それを手順に従って変形することによって未知数を求めることができます。
関数
入力される数値と出力される数値との関係の法則性を表現する仕組みです。
この方法でさまざまな数値の間の関係を調べることにより、例えばものごとの変化の様子を数学的に扱うことができます。
座標
数式をグラフ、図形というかたちで視覚化できます。逆に図形を数式で表現することもできます。
証明
考え(命題)の正しさを論理的に明らかにする方法です。数学では重要な役割を果たしています。
日常的な生活の範囲では「太陽や星は地球の周囲を回転している」と考えていても差支えはないでしょう。しかし、それはもちろん正確な認識ではありません。地球も含めた天体の動きを正しく理解するためには地動説の考え方、それがどのようにして確立されたのかを学ぶ必要があります。
理科を学ぶということは、人類がこれまで長年にわたって自然界の事物や現象を探究してきた成果を学ぶことであり、また観察、観測、実験によって得られた事実を正しく合理的に説明できる方法を見い出すという科学的な考え方を学ぶことです。
科学者たちがどのような問題意識をもって、どのようにして探究活動を行ってきたのかという視点から理科を学び直すこともできます。わかりやすい科学史の本、科学者の伝記を読むのもひとつの方法です。たとえば、『物理学とは何だろうか(上・下)』(朝永振一郎、岩波書店:岩波新書)は力学と熱力学を中心に物理学の歴史を解説しています。
論理的に正しく考えるという方法で数量や図形などを扱うところに数学という学問の特色があります。数学における思考のスタイルは日常的な思考とは違ったところがあります。そのため、数学を学ぶのは「むずかしい、なじめない」と感じる方が多いのかもしれません。数学的論理的な思考方法に頭を慣らしていくように意識しながら学習しましょう。
数学は論理的に考えるために用いる「言葉の体系」であるというとらえ方もできます。数学用語の正確な意味(定義)を理解しておくこと、記号の意味を理解してその使い方に慣れることは学習の土台をつくることであり大切なところです。
算数は現実の世界、日常の世界とつながっているところがありますが、数学ではより抽象度が高い世界、現実から離れた(ように感じられる)世界を探究することになります。論理的に正しく考えることで、探究の世界を広げていけることは数学の大きな魅力です。例えば、虚数という概念が考え出されましたこともそのひとつです。虚数は数直線上には存在しない数ですので、なかなか実感はできないものです。しかし、例えば物理学の重要な柱である量子力学は虚数を使わなければ説明できないのです。感覚でとらえられる世界から自由になって、考えをつくりあげていくという数学のスタイルになじんでいきたいものです。
たとえば職場でも学校でも、思うに任せないこと、気持ちが疲れたり傷ついたりすることはあるものです。そうしたときに、図書館で自由に本を読み、自由に時間を過ごすことはいくらかでも生きる支えにもなると思います。図書館の「居場所」としての役割が注目されていることも耳にします。
数年前に、ある図書館が学校に行きづらい子どもたちにネット上で「逃げ場所に図書館も思い出してね」と呼びかけたことを思い出します。
乃木坂46のメンバーだった生駒里奈さんは小学生の時、いじめの被害を受けていました。そのころ、休み時間は図書室で読書に夢中になることで自分を守っていたということです。
学校の図書室といえば、『図書館の神様』(瀬尾まいこ、筑摩書房:ちくま文庫)という小説を思い出します。高校の図書室を主な舞台として、文芸部の顧問教師(女性)とただ一人の部員(男子)との不思議な交流が描かれています。文学には特に興味はない、図書館に行くこともほとんどないという方にもおすすめです。ちなみに、主人公の先生もそうした人物です。
図書館、図書室の存在価値をより広くとらえていくのはいいことだと思います。