久しぶりに友人Hさんと会った。
Hさんはわたしと同じ急性リンパ性白血病だが、その病名の上にはさらに「難治性T細胞」という言葉が加わっている。
彼女は白血病細胞が中枢神経にまで入ってしまい化学療法で寛解しなかった。
そのため骨髄移植を余儀なくされているが、血縁者にHLA型の合う人がいなかったのである。
そんなHさんのドナーが決定したのは1か月前。
ドナーは20代女性で、型が合うと知りすぐに健康診断を受けてくれたらしい。
骨髄バンク登録からドナーが決まるまで通常6か月かかるところを、2か月半という最短スピードでコーディネイトされた。
Hさんの骨髄移植は来月である。
◇◆◇◆◇◆
「寛解していないから移植しても治らないかもって言われたよ」
病院内のレストランで、Hさんはワッフルを食べながら言った。
白血病は治さなければ命がない。
近頃の医療現場は、患者本人に厳しい現実を突きつけ選択を迫る。
医者は‘告知’するか否か悩まないのだ。
わたしも肺炎などの合併症になった時、死にも等しい宣告を受けた。
医者はいつも‘最悪の事態’を宣告する。
そして患者にサインをさせる。
医者にとっての保身である。
◆◇◆◇◆◇
「治療をやめて元気なうちに好きなことをやろうかなとも思った」
白血病は普段痛みもなくとても元気である。
お見舞いに来てくれる人に「元気だね」とよく驚かれる。
本当にそんな重い病気なのか不思議に思われる。
でも、治療しないということは生きることを諦めるということだ。
Hさんは移植をとても怖がった。
わたしも移植をする予定なのでその気持ちがよくわかる。
抗がん剤と放射線で血を造る機能を停止させ、他人の細胞を入れるのだ。
副作用と拒絶反応に耐えられるか。
感染症や合併症はどんなものか。
数年後、後遺症が出ないか。
再発はしないか・・・・・・。
このリアルな恐怖は、いつも寄り添って支えてくれる家族にもわからないだろう。
言葉にすれば想像を大きくして余計な心配をかけてしまうかもしれない。
わたしたちは
「移植コエ~~!」
と笑いながら声を揃えた。
◆◇◆◇◆◇
その夜、わたしも骨髄移植をする治療方針にサインをした。
寛解している今の段階で移植をすれば、5年後の生存率は62%。
正直、高いのか低いのかよくわからない。
でも寛解していない生存率を見たら決して高いとは思えなかった。
Hさんはどんな気持ちでこの説明を受けたのだろう。
B型自分ワールド全開の若く可愛いHさん。
1歳半の息子さんがいて家族と離れて1人頑張っている。
くそう生存率がなんだ!
こんなのただの統計じゃないか!!
わたしもHさんも病気を治して
「ザマミロ!生きてるゼ~!!」
といつか必ず笑ってやるんだ。
そうですね。
でも病気になる人が減ることが一番いいです。