楽団の定期演奏会。
休団者宛てに送られてくる招待券は無駄にせず、いつも客としてこっそり聞いて帰るのだが、今回は当日券の売り子を頼まれた。
売れ行きは芳しくなかった。
しかし、売れても売れなくても構わないという気楽さで、他愛ないお喋りに花が咲く。
今回の演目は、ドヴォルザーク作曲『スターバト・マーテル』。
宗教音楽である。
「スターバト・マーテルってどういう意味ですか?」
と、予習不足の私。
するとボランティアの高齢男性が、
「ラテン語だよね。マーテルが聖母だから嘆きの聖母……とかそんな感じじゃない? よくわかんないけど。まあ、怒りの聖母ってことはないよね」
と言うので、笑ってしまった。
この方は終始、冗談ばかり言って私を笑わせてくれた。
スターバト・マーテルの意味は大体合っていた。
プログラムには「悲しみの聖母」と書かれていた。
激しさはひとつもない。
子(キリスト)を失う母の悲しみが連綿と広がるただそれだけの音楽……。
ドヴォルザークはこの曲を作曲する数年前、相次いで3人の愛児を亡くしていたという。
子を失った作曲家の悲しみを想起せずにはいられなかった。
音楽堂に向かう紅葉坂。
4月は新緑が美しい。
この場所は、今創作中の小説に登場する予定。
休団者宛てに送られてくる招待券は無駄にせず、いつも客としてこっそり聞いて帰るのだが、今回は当日券の売り子を頼まれた。
売れ行きは芳しくなかった。
しかし、売れても売れなくても構わないという気楽さで、他愛ないお喋りに花が咲く。
今回の演目は、ドヴォルザーク作曲『スターバト・マーテル』。
宗教音楽である。
「スターバト・マーテルってどういう意味ですか?」
と、予習不足の私。
するとボランティアの高齢男性が、
「ラテン語だよね。マーテルが聖母だから嘆きの聖母……とかそんな感じじゃない? よくわかんないけど。まあ、怒りの聖母ってことはないよね」
と言うので、笑ってしまった。
この方は終始、冗談ばかり言って私を笑わせてくれた。
スターバト・マーテルの意味は大体合っていた。
プログラムには「悲しみの聖母」と書かれていた。
激しさはひとつもない。
子(キリスト)を失う母の悲しみが連綿と広がるただそれだけの音楽……。
ドヴォルザークはこの曲を作曲する数年前、相次いで3人の愛児を亡くしていたという。
子を失った作曲家の悲しみを想起せずにはいられなかった。
音楽堂に向かう紅葉坂。
4月は新緑が美しい。
この場所は、今創作中の小説に登場する予定。
夏が近づいていますね。