恩田陸さんの同名小説を読んで、何かしら影響を受けたという部分を確かめたく手に取ってみたのですが、意外にも良い出会いとなりました。
ストーリー:
誰が言い出したのか、その土地は呪われた〈ジプシーが丘〉と呼ばれていた。だが、僕は魅了された。なんとしてでもここに住みたい。そしてその場所で、僕はひとりの女性と出会った。彼女と僕は恋に落ち、やがて……クリスティーが自らのベストにも選出した自信作。サスペンスとロマンスに満ちた傑作を最新訳で贈る。
定職に就くことなく貧しいマイケル・ロジャーズが、〈ジプシーが丘〉でアメリカの大富豪エリーと出会い恋に落ちる。女性とは長く付き合うことがなかったマイケルが初めてずっと一緒にいたいと思える女性と出会い、2人で素敵な家に住みたいと友人の建築家サントニックスに家を建ててもらう。その呪われた地で、彼らの周りの人間たちをも巻き込んで繰り広げられるサスペンス。
アガサ・クリスティーはミステリーの女王ではあるけれど、こういうサスペンスで人間の心理描写を描くのも天才なんですねー。最初はただただ何の事件も起きずに2人のロマンスが描かれているだけと思わせておいて、終盤での怒涛の展開。え?別人??と思うくらいガラリと変わる人物像に、見事騙されたなぁという感じ。そこで改めて最初から読んでみると、会話の端々にそれとなく匂わせる何かが潜んでいたのだと気づきます。だから何となく引っかかるところがあって、そのせいで不穏な雰囲気を無意識のうちに感じていたのだろうと…。
タイトルの「終りなき夜に生れつく」はウィリアム・ブレイクの詩『無垢の予兆』からきているんですね。作品内でもエリーがギターを持って歌っていましたが。英語だと、“Some are born to sweet delight,Some are born to Endless night.”という一節からとのこと。ふむふむ。delightとnightで対照的な意味であると同時に韻を踏んでいるんだ。
恩田さんの作品との共通点も探してみようと思っていたのですが、すっかり忘れて普通に読み終わっていました。恩田作品での在色者がつまり終りなき夜に生れついた者たちということだとして、こちらではマイケルのことなんだよね。他にもあると思うんだけどなー。殺人の方法かな。
クリスティー作品、まだまだ読んでみたいものがたくさんありますわ😅