[映画紹介]
ミュンヘンで起きた
オリンピック史上最悪の事件を描く。
1972年9月5日、
パレスチナ武装組織「黒い九月」のメンバー8人が
選手村に侵入、
イスラエル選手団の2人を殺害、
9人を人質にとって籠城した。
イスラエルに拘束されているパレスチナ人及び非アラブ人の囚人、
西ドイツで投獄されている赤軍派の創設者、
アンドレアス・バーダーとウルリケ・マインホフを含む
328人の解放を要求。
交渉は決裂してテロリスト達は海外への逃走を図り、
飛行機でエジプトの首都カイロへ脱出することを要求し、
当局はそれに合意。
午後10時ごろ、占拠部隊と人質は
2機のヘリコプターで空港まで行き、
その後は用意された飛行機に乗り移って
国外に脱出する手筈だった。
だがこれは表向きの話で、
実際はバスでの移動途中、
もしくは空港で犯人グループを狙撃し、
人質を解放する計画であった。
空港で西ドイツ警察による救出作戦が行われ、
銃撃戦や犯人の自爆攻撃により
合計17人(人質9人含む選手11人、警察官1人、犯人5人)が死亡する
大惨事となった。
スティーヴン・スピルバーグの「ミュンヘン」(2005)と同じ題材だが、
テロリストと人質の描写はなく、
五輪の競技を中継するための
ABC(American Broadcasting Company )のTVクルーの視点で描く。
元々オリンピックのスポーツ中継チームで、
ニュース報道に慣れていないメンバーが、
突然、世界が注目する事件を
中継する事となった戸惑いが支配する。
ほとんどが調整室内の描写で、
情報が少ない中、
瞬時に判断して映像を放送しなければならない。
エスカレートするテロリストの要求、
錯綜する情報、冷戦下で機能しない現地警察、
刻一刻とテロリストが定めた期限が迫る等、
事件の発生から終結までの1日を
ノンストップで描き出す。
全世界がテロリズムの脅威を、
生中継を通して初めて目の当たりにする。
放送のルールが明確化されていない時代に
「報道する事の自由」「報道される被害者の人権」
「報道がもたらす結果の責任は誰にあるのか」といった
現代のSNS社会にも通じる、
倫理観への問い掛けが投げかけられる。
問題は、報道内容により、
警察の動きが犯人側に筒抜けになったこと、
また、人質の安否を巡り、
確認取りに忙殺され、
結果として誤報をすることになる。
この事件以降、五輪選手村の警備は厳重となった。
テレビの放送クルーだけに絞り、
場所も限定して、
すさまじい臨場感の描写は、
製作側の志の高さを伺える。
脚本・監督を担当したのは、新鋭ティム・フェールバウム、
キャスト陣にはピーター・サースガード、
ジョン・マガロ、レオニー・ベネシュなど
評価の高いバイプレイヤーたちが集結している。
先のゴールデン・グローブ賞の
作品賞にノミネート。
5段階評価の「4」。
拡大上映中。
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