茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

重陽の節句と菊

2005-09-09 21:31:51 | 季節マメ知識
 今日は9月9日、重陽の節句。奇数は陰陽で“陽”に当たり(偶数は“陰”)、最上級の“陽”の数字が重なるので、重陽。不老長寿や子孫繁栄を願う行事だったが、新暦が導入されて菊の咲く季節とずれてしまい(昔は1ヶ月遅れで、まさに菊が美しい時期だった)、他の節句に比べてすっかり影が薄くなってしまいました。

 この時期、“着せ綿”という銘の、菊の花の真中に綿に見立てた白い餡が乗っている和菓子がよく見られます。これは、昔、菊の花に綿を乗せて、翌日その露を含んだ綿を身につけたり、身体を拭いたり、吸ったりすることで長寿を願ったことに由来しています。愛らしいお菓子なのでデパート等でごらんになってみて下さい。

 菊はもともとはメソポタミア文明の頃から装飾として使われ、インド、中国を通じて奈良時代に日本に入ってきたもので、当時は観賞用ではなく不老長寿の薬として伝わったそうです。花の形が日輪(太陽)に似ていることから天皇の象徴ともされ、後鳥羽上皇が菊を好まれて使ったのが始まりでそれ以降皇室の紋として定着していきました。皇室のご紋の菊の花びらは16枚ですが、皇室以外では16枚のものは使用できないと聞いたことがあります。また、実は菊のご紋以外に皇室には“日月(じつげつ)紋”という日の丸と三日月をかたどった紋があるそうで即位の際はその紋も使われるとか。通常一家に一紋が原則ですが、替え紋という他から下賜されたりして2つの紋をもつ家柄もあるといいます。
 
 四季のある日本では、節句毎に3月3日は桃、5月5日は菖蒲、7月7日は竹(笹)、そして9月9日は菊という風に季節にあった花を大切にしてきたのでしょう。我が家は桃の節句にはお雛様と桃(最近は菜の花もセットで)を飾り、蛤のお吸い物にちらし寿司を頂き、子供の日は兜を飾り、菖蒲の葉を浴槽に浮かべて健康を祈り、七夕には願い事を竹に飾り空を眺めましたが、重陽の節句には特に何も無かった気がします。9月は敬老の日があるので、そこで祖父母に感謝し長寿を祝ったことの方が印象に残っています。
 菊の花というと仏事のイメージが強いですが、歴史を見れば形は日輪に似て長寿を祝うめでたい花だったわけで、少し菊への見方も変わるのではないでしょうか。最近は色・形・大きさ共バリエーション豊かになってきましたし、花屋さんの店先で菊を楽しんでみるのもいいかもしれません。花より団子の方は、菊の花びらのおひたしもなかなか味わい深いですよ。
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