茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

見える風景

2006-04-25 22:12:15 | m-tamagoの物想い
 10年位前から春の銀杏(いちょう)の木がとても好きである。銀杏というと秋の紅葉の頃の印象が強いが、春の芽吹きの頃は小さいけど、ちゃんと銀杏の形をした葉っぱがたくさん吹き出してなんともかわいらしいのだ。冬の間枯れ木だった街路樹の銀杏に若芽が一斉について、その合間から青い空を見ると、春を感じてなんとも嬉しい。東京の銀杏は今とても愛らしい姿をしている。
 10年位前からといったが、それまではその美しさに気づかなかった。そういう景色は他にもたくさんある。柳の木も夏のイメージが強いが、春の芽吹きの頃ホヨホヨと若芽がついて風になびく姿は軽やかでほのぼのさせてくれる。(赤ちゃんの髪の毛のよう!)
アスファルトだらけの都会の真っ只中にも春は確実に訪れると意識するようになったのは社会人になって何年か春を重ねた後だった。小さいことだけれど私にとっての“気づき”であった。

 年を重ねると見える風景が変わってくる。周囲の環境が変化し、自身の立場が変わり、生活する場所が変わり、新しい経験や想いを重ねると、自然と目に飛び込んでくる風景にも変化が訪れる。子供には子供なりの、学生の頃は学生なりの、社会人になってからは社会人なりの、妻には妻なりの、夫には夫なりの、母には母なりの、父には父なりの景色があるのだと思う。そして様々な“気づき”に出会う。
 会社の中でも、立場が違うと見える風景は全く違う。私は正社員と、派遣社員と、出向嘱託という立場を経験した。正社員の頃、派遣社員に対して感じていた疑問は自分が派遣社員/出向嘱託になったことで解決した。彼女があの時言っていたことはこれだったと見事に体験したのだ。同じ会社で、同じ仕事で、立場が違う場合、モラルやモチベーションを維持するのは相当に大変なことだ。そしてそのことに気づく社員はあまりいない。役職につけばまた違った風景が見えるのだろうが、体験できる立場は限られているわけで、あとは想像力を養うしかない。大切なのはどんな立場にあっても相手の意を汲む気持ちを忘れないこと。
 女性の場合は母になると見える風景が全く違ってくるようだ。生活時間帯が変わり、同じ風景を見ながら歩けなくなると話題が合わなくなってくる。同じがいいというわけではないが、一方が見たこともない風景の話ばかりだと理解し難くなるのは確かだ。

 様々な経験や立場を体験してきた人の方が、見える風景に幅が出て、人間として大きく優しくなれるのではないか。自分も含めて体験していないことは本当の意味で実感できないもの。子供、学生、社会人と少しずつ立場を変えてきたが、私はまだ妻とか母という立場に立っていない。そういう意味でまだまだである。友人の話から、それはまたこれまでと全く違った風景を私に見せてくれるのだろうと期待している。これからもたくさんの風景と、たくさんの“気づき”に出会えることが楽しみだ。銀杏の若葉を見て、今年はふとそんなことを思った。
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4 コメント

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新緑 (ゆりかもめ)
2006-04-25 23:18:17
私も春の木々は好きです。もみじの薄緑の葉が一斉に開く様もきれいです。今年は桜の花と同時にもみじの新緑を見ることができました。

以前に英会話の先生からSpring shower grow green.(春雨は緑を育てる)という言葉を教えてもらってから、雨のたびに緑が広がっていくのを感じるようになりました。同じ物を見ていても感じ方が違うのは不思議ですが、これが個性というものかもしれませんね。



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新緑 (m-tamago)
2006-04-26 21:30:47
ゆりかもめさん、こんばんは。

もみじも綺麗ですね!5月に京都に行った時、薄緑の葉をみて、秋ではないもみじも綺麗だなぁと実感しました。

Spring shower grow greenって意味もいいけど、響きも素敵ですね。

本当に同じ物でも年齢やその時の状況で感じ方は変わりますよね。生きてるって感じがします。
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若葉 (albireo)
2006-04-26 23:17:59
秋の紅葉にも、赤や黄や様々な色がありますが、今頃の若葉にも、それぞれに違う緑がありますね。

生き生きと輝いて見える、この季節の木々も美しいですね。

正社員と、派遣社員の件は、僕も派遣社員の人に、部下として働いて貰っていた事があるので、聊かですが、解る気がします。

「想像力を養う」こと「相手の意を汲む気持ちを忘れない」こと、まさしくその通りだと思います。

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若葉 (m-tamago)
2006-04-27 20:42:18
albireoさん、こんばんは。

そうですね、若葉にも様々な緑がありますね。朝と昼と夕方でも緑は変化しますし!心安らぐ色で好きです。



理想と現実の間で葛藤しますが、相手にとってどうかという視点を忘れずに進めたらと思います。

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