prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「裸のジャングル」

2017年11月08日 | アート
1800年頃、アフリカに象牙狩りに出かけた白人たちが現地の部族に本来渡すべき貢物を渡さず、傲慢そのものの態度で象を狩りまくった報いで惨殺され、唯一まともに彼らのルールを守るよう主張した主人公コーネル・ワイルド(製作・監督・ノンクレジットながら一部音楽も兼ねる)だけ逃げきれば助かる人間狩りの対象となる。

人間狩りというといかにも野蛮なようだが、おもしろいのは追っていく複数の原住民の戦士たちがどちらに逃げたのか意見が分かれて理屈っぽく対立したりする一方で、追われる白人の方がひたすら逃げ延び生き延びるという目的ひとつに行動原理を絞り込んだ結果、白人の方が野性的で、原住民たちの方が組織と社会と理屈に縛られているように見えてくること。

とにかく追っかけが始まったらセリフはほとんどなくなり、単純明快きわまるプロットにどうやって逃げるか生き延びるかといった細かい知恵を散りばめていくという映画の作り方のひとつの王道を貫いているのが立派。
あと人の走りというのは、実に映画的だなと改めて思った。
「アポカリプト」の原点という説が有力だが、遜色ない迫力。

登場人物にはまったく名前がなく、コーネル・ワイルド扮する主人公もA Manとしかクレジットされない。また、追ってくる戦士たちがエンドタイトルでThe Purchaseとひとくりながらひとりひとりキャストの名前と共にクレジットされる。
全体とすると昔の「秘境」の「土人」のイメージなのだか、昔の映画(1965製作)ということもあって意外と今でいうポリティカル・コレクトネスに通じるセンスを感じる。

文明と未開の対立というより原住民と白人という「部族」の違いはあっても「戦士」としてのルールとプライドを尊重した戦いといったニュアンスが特にラストでくっきり出ているのが爽快。

ワイルドはハンガリー生まれのユダヤ人(出生名コルネール・ラヨシュ・ヴァイス)ということもあるかもしれない。
髭面にしているとすごいマッチョということもあってヒュー・ジャックマンみたいでもあるが、もともと1936年のベルリンオリンピックにフェンシングアメリカ代表として出場しているのだから本格的なスポーツマンなのだな。

元ネタとするとやはり1800年頃にアメリカ先住民のブラックフット族がやったことで、それを資金や機材の問題で南アフリカで撮ることになった(それに加えてジンバブエとボツワナでもロケした)とのこと。

象狩りの場面はストックフィルムを使用しているのだが、本当に象を撃ち殺しているのを見せられるとぎょっとする。
初めてA Manが手に入れる食料というのがヘビで(それまで飲まず食わずでよくあれだけ走れたと思うが)、ヘビを裂いてかぶりつくのは「カプリコン1」にあったなと思った。
(☆☆☆★★★)




11月7日(火)のつぶやき

2017年11月08日 | Weblog