ディケンズの「オリバー・ツイスト」のミュージカル舞台の映画化。
監督がなんと「第三の男」のキャロル・リードで、意外にもという感じだが米アカデミー賞作品賞、監督賞受賞。
ちなみに同じ1968年には「2001年宇宙の旅」がある。
ミュージカルとすると70ミリ大作とあってあまり今みたいに自由自在にカメラを動かすというわけにはいかず、それがかえって腰がすわった感じで流麗さがむしろ増した。
群舞の撮り方、画面のまとめ方などさすがに「第三の男」のシャープさとは違うが優れた構成力を見せる。
裏町や市場や住宅街など大がかりなセットも見もの。
19世紀ロンドンが舞台とあって、くすんだ色調で統一した撮影が秀逸。撮影のオズワルド・モリスはすでに「白鯨」で色を殺す実験をしていたし、のちに「屋根の上のバイオリン弾き」でシャガールの色調をフィルムで出す試みをすることになる。
オリバーには当時9歳のマーク・レスターで、スリの少年役のジャック・ワイルドとはこの後「小さな恋のメロディ」で共演することになる。当然ながらともにいくらか幼い。
ビル・サイクス役がオリバー・リード。キャロル・リードの甥で手の付けられない不良だったので映画界にいるおじに預けられたのがきっかけで俳優になったというけれど、まことに鼻息荒い感じの悪党を威勢よく演じております。
対照的に暴力には頼らないスリで孤児を集めてスリに仕立てて上前をはねるフェイギン役にはロン・ムーディ。作曲や作詞、小説など多才であまり映画には出ていない人だが、顔だちがデヴィッド・リーン監督によるストレートプレイ式の映画化「オリバー・ツイスト」のアレック・ギネスに似ている。一般にああいうイメージなのか。
ちなみに原作ではフェイギンは死刑になるが、そこまで描いておらず、全体のストーリーもハッピーエンド的にまとめているのはやはりミュージカルだからか。